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しっかり押さえる! 重要事項説明のお話ーその3

1 はじめに

皆さん、こんにちは。
弁護士の利根川です。

今日も、前回に引き続き、不動産の重要事項説明のお話です。
今回は、不動産売買・仲介で最もトラブルになりやすい、取引物件の物理的な契約不適合(瑕疵)についての説明義務について、ポイントを解説したいと思います。

具体的な例としては、建物でいえば、雨漏りや躯体の傾斜、腐食や白蟻被害、強度不足などがありますし、土地でいえば土壌汚染や廃棄物の埋設などがありますね。

これらの物理的な瑕疵について、不動産仲介業者はどのような説明義務を負うのでしょうか?

2 物理的な契約不適合(瑕疵)についての仲介業者の説明義務

過去の裁判例を検討すると、仲介業者は、無条件で瑕疵に関する調査・説明義務を負うとはされていません。

ただし、仲介業者が、瑕疵の存在を知っている場合、又は、瑕疵の存在を容易に知り得る場合には、調査・説明義務を負担すると理解されています。

具体的には、次の3つの場合に分類することが出来ると思います。

① まず、宅建業者は、建築士や不動産鑑定士とは異なり、一般的には、物件の検査能力や鑑定能力を備えているわけではないので、物件の状態の専門家的な調査までは不要とされています。

⇒そのため、原則としては、取引物件の外観を目視により調査して、その範囲で買主に説明すれば説明義務は果たされることになります。
⇒ここで、注意したいのは、目視により欠陥が疑われる場合、重要事項説明書に記載するのはもちろんですが、併せて、欠陥箇所の写真を添付するのが望ましいでしょう

② また、買主から、特に、雨漏りや傾斜、土壌汚染など、物件の欠陥の有無について問い合わせがなされた場合には、宅建業者としての注意義務を以て売主に照会し、調査を行う義務が生じます。

⇒この場合、買主や売主とのやり取りについては、事後的にトラブルになった際に、「言った」「言わない」の問題にならないよう、売主・買主とのやり取りを、議事録やメールなどで残しておくのが良いでしょう。

③ また、売主に問い合わせをした場合でも、売主の説明が事実に反していると明らかに疑われるような場合や、瑕疵が存在するのではないかとの疑いを抱かせるような事実を発見したような場合には、売主に対して、再度、事実を確認し、買主に対して正確な情報を提供する義務を負うことになります。

3 まとめ

このように、物理的な契約不適合(瑕疵)に関する仲介業者の説明義務としては、外観の目視による調査に基づく説明が原則となりますが、買主から問い合わせがなされた場合や、売主の説明が事実に反すると客観的に疑われるような場合には、それ以上の調査・説明を尽くす必要がある場合があります。

このような場合、事後的に、仲介業者が、実際にどのような状態を確認したのか、また、売主・買主とどのようなやり取りをしたのかということが重要な証拠になる場合が多くあります。
そのため、欠陥が疑われるような場合には、物件を確認した状態を写真などで記録し、また、売主・買主とのやり取りを議事録やメールで証拠に残すということがリスクヘッジとして重要になります。

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