Renato Canova式 練習計画

これまではジャックダニエルズのメソッドを利用していたが、少し目線を変え、レナートカノーバ式のメソッドを取り入れてみようと思う
カノーバのトレーニングでは、レースペースでの走行距離を伸ばしていくことに焦点をあてている。

言葉の定義

資料を読んでいると、様々な用語がでてくる。同じような意味でも違う言葉が使われているため、非常にややこしい。自分の解釈としてまとめてみた。
Anaerobic system:無酸素性作業能力、解糖系
Aerobic system:有酸素性作業能力、脂質酸化能力
Aerobic power:筋繊維の酸素摂取能力(VO2max)
Aerobic endurance(fat power):脂質酸化(消費)能力
Aerobic threshold(LT1):有酸素性閾値(2mmol/L)≒Mペース相当
Anaerobic threshold=Lactate threshold(LT2):嫌気性閾値=乳酸閾値(4mmol/L) 。ダニエルズのTペースに相当。
(70~80%VO2Max,エリートは80~90%VO2Max)としている。
なお、マラソンは2~3mmol/Lのスピード帯で走ると良いとされている。

期分け (ピリオダイゼーション)

これは良く言われていることだが、練習は時期を分けて重点的に能力を開発することが良いとされる。canovaによる期分けは以下の4つ。

1.準備期(transitional period) 4週間

再構築を目指したトレーニング期。マラソンシーズンを終え、次の練習への転換期にあたる。ゆっくりとしたジョグによる筋肉・関節への刺激が中心。

<トレーニング内容>
筋肉の動き改善のためのドリルやヒルスプリント(15%勾配を15秒間)
10〜12"のショートスプリント
60分以内のイージーラン

2.導入期(introductory phase) 6~8週間

筋肉の効率と有酸素持久力(aerobic endurance)≒脂質酸化能力の開発
サーキットやヒルスプリント、各種ドリルを取り入れ筋肉の動作効率を改善する。

<有酸素持久力の開発のための3つの練習>
① 90分以上のスローペースランニング(80~85% MP)
② ミディアムペースランニング 最終的には45分程度になる(90~92%MP)
③ プログレッシブランニング 最終的に60分程度になるビルドアップ走 (85〜100%MP)
*MP=Marathon Pace

3.基礎構築(fundamental phase) 8~10週間

①有酸素性持久力(aerobic endurance)、②有酸素パワー(aerobic power)=酸素取り込み能力、③嫌気性持久力(anaerobic endurance)の向上

① 導入期のミディアムペースランを速度を上げながら時間を延ばす(最大75分まで)。もしくは同じペースで時間を120分まで延ばす。
② 有酸素パワーは、105~112%MPのようにマラソン関連のペースを使用して改善する。
③ 嫌気性持久力(LT2)は速い持続走(fast continuous)、速いビルドアップ走(fast progressive)、登坂走(continuous up hill)で開発。

<有酸素持久力の練習>
90~100%MPで走ることで鍛えられる。以下のような練習が取り上げられている。
・medium fast progressive  20-20-15 at 96/100/105%MP
・medium progressive  30-30-30 at 87/91/96% MP
・medium run   60~90min at 90~92%MP
・steady medium 45~80min at 95~97%MP
・steady long 120~180min at 85~90%MP
・long run with short pickups   60' at 80%MP+10×90sec(90" rec) at 103~105%MP + 30' at 80%MP

有酸素持久力≒脂質酸化能力は90~95%MP or 85~90%LTで走ることで効率よく鍛えることができる。(*ダニエルズのEペースに相当)
これより速いペースだと、エネルギー源として糖質が利用されるため、脂質の寄与が少ない。また、これより遅いペースだとエネルギー需要が低くなる。マラソンパフォーマンス向上にもっとも効果的な能力。

canovaいわく「マラソンペースは95%ハーフマラソンペースになる。もしもそのペースが維持できないのであれば、それは脂質能力が不足している。」
だそうだ。

<有酸素パワーの練習>
・300~500mのインターバル LTより最大10%速く
 15~20×300~500m(110%MP~110%LT) *recoveryはゆっくり
・Hill sprint
 short(勾配15%程度):60mほどのショートスプリント。
 5k~10kのパフォーマンスが弱い選手に有効。酸素摂取量の改善 
 midium(勾配5~10%):300~1000mの長さ。
 筋肉の酸化能力の改善

<Anaerobic power(LT2)の練習>
・fast continuous  20~40' at 104~107%MP or 97~100%LT /10km 103%MP
・fast progressive 3k-3k-3k-3k at100/102/104/106%MP
・long pace alternations  3×5k at 102/103/104% MP rec 3'
・short pace alternations 10×1k at 109%MP rec2'  5×2k at 107%MP rec3'
・continuous up hill  6~10km 3~6% grade  100~103% LT HR

ダニエルズの場合はクルーズインターバルなどがメインだが、カノーバはCVインターバルのようにLTを超えるスピードで乳酸の再処理を促すアプローチを行う。

4. 特異期(specific phase) 6~8週間

マラソンに向けた特異的な練習
これまでのスピードと持久力を融合していく。

① マラソンペースインターバル(変化走)
・7000m×3 (102~103%MP) recovery 1km at 97%MP
・6000m×4 (101~103%MP) recovery 1km at 95~96%MP
・1000m×10 (104%MP) recovery 1km at 98~100%MP
・500m×20 (105%MP) recovery 500m at 96~97% MP
② 18~25km at MP(ハーフマラソンに出場してもよい)
③ 30~35km at 96~98%MP

マラソン前3週間は
・103%MP-89%MPの変化走で22~24km
・短いファルトレク(20×1'-30"   15×1'-1' )
・14~24kmのラン(97.5%MP~98.5%MP)
で仕上げるらしい。


ここまで見てきたように、canovaのトレーニングだと、まずはレースペースの5%ほど離れたスピードでトレーニングを重ね、特異期にはその差を2%ほどにしている。こうすることで、それまでに鍛えた個別の能力を融合させているのだと思う。

Hill workoutsのすすめ

progressive runと同様に速筋繊維の有酸素能力改善につながる。
筋力トレーニングにもなるため有効とされている。
・short(~15%):60mほどのショートスプリント。5k~10kのパフォーマンスが弱い選手に有効。酸素摂取量の改善。 
・midium(5~10%):300~1000mの長さ。
 筋肉の酸化能力(aerobic enzyme)改善
・long(3~6%):6~10kmの長さ。速筋の酸化能力  LTの心拍数の97~105%で行う
これらをトレーニング期によって使い分けて取り入れていきたい。

ファルトレクのすすめ

1'~2'の疾走と30"~1'の中程度ラン。
20×1'-30"   や 15×1'-1' など
乳酸酸化能力と細胞膜の透過性の向上。基礎構築期から特異期まで幅広く活用することができる。強度の高い練習の前後に取り入れることができる。
canovaはこの練習が近年の重要な練習であるとしている。乳酸をもう一度エネルギーに変えることで、ペースが落ちたときに回復することができるという。
そして、その延長にあるのがロングインターバル。
3~5kmを95~101%MPで。もしくは1km~1.6kmでは103%MP以上で行う。
リカバリーは50~70%MPではじめ、徐々に早くなるり、最終的には疾走103%-リカバリー89%で22~24km走る。特異期にはこの練習が距離走の代わりになってくる。

自分の乳酸作業能力を知る

昨年末、とある大学の研究室でVO2maxと乳酸カーブテストを実施していただいた。その時の結果から
2mmol/L:3'45/km
4mmol/L:3'20/km
VO2maxは67.4だった。この値をもとに、今シーズンは練習を進めていきたい。

まとめ

canovaの練習については、いろいろなサイトで取り上げられている。しかし、ピックアップされた情報だけで考えると情報量が少ないと思った。今回自分で資料を読んでみて初めて気づくことは沢山あったし、自分の知識として良いものになったと思う。ファルトレクの重要性、レースペースでの走行距離の拡張。期分けによって鍛える能力の違いとその融合イメージ。このあたりがはっきりとしてきた。
今シーズンの練習計画にしっかりと活用していきたいと思う。

参考


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