【参加者全員対象】ダブルクロス The 3rd Edition 初心者卓の手引き


1. この記事について

 この記事は、これからTRPG『ダブルクロス The 3rd Edition (DX3rd)』でシステム初心者を含む卓を立てようとするGM、およびそれに参加を考えているPL全員に向けて、初心者卓特有の事故を防止するための知見を共有することを目的として記す。

 DX3rd初心者PLの方に向けた内容は「2. 初心者PLの方へ」から、GMや経験者PLの方に向けた内容は「3. GMや経験者PLの方へ」に記す。必要に応じて対象外の内容を飛ばして頂いて構わない。

2. 初心者PLの方へ

 このパートではDX3rdを初めて遊ぶPLに向けた助言を記す。

 結論を先に言うと、DX3rdを初めて遊ぶ際は自分だけでフルスクラッチを作ろうとしないことをお勧めする。
 わざわざ1から自分で組まなくても、ルルブには既に完成されたサンプルキャラがいくつかある。そのまま使ってもいいし、少しカスタマイズしてみるのもいいだろう。
 あるいはそれが気に入らないなら、慣れている人に仕上げてもらうのもいいだろう。もしあなたに気に入った1~3個程のシンドロームやエフェクトがあるなら、それらを組み合わせて「どういう攻撃演出をしたいか(炎をまとった獣になる、無から武器を出現させて飛ばす、etc)」を同じ卓や知り合いの経験者に伝えてみるといい。必ずしもそれ通りになるとは限らないが、少なくとも悪くはないデータに仕上げてくれることだろう。これに納得して頂けるなら、これ以上この記事を読む必要は無い。

 しかし、「いいや、俺は自分だけでキャラを組みたいんだ」という方もいることだろう。TRPGはロールプレイするキャラクターを自由に作ることができるゲームである。キャラのバックグラウンドはもちろんのこと、キャラのデータも自由に選択し、そのキャラの得意なことをゲームシステムにも反映させることができる。それがTRPGの楽しさの1つである。自分でキャラを作るという楽しさが確かにある。
 だからこそ、最初は自分だけでフルスクラッチをしないほうが良い。なぜなら、DX3rdにおいては(F.E.A.R.系はどれもそうなのかもしれないが)「やりたかったことが出来なかった」が本当に発生しやすいからである。
 TRPGは自由だと言いたいが、DX3rdは初期状態でめちゃくちゃ制限が多い。例えば、技能の異なるエフェクトを組み合わせることができない。マイナーでエフェクトやアイテムを使う場合は移動ができない。敵のいるエンゲージから抜け出すには「離脱」というものが必要。などなど……挙げ始めたらキリが無い。また、ゲームバランス上の都合による"実質の制限"も存在する。超短期決戦のゲームであるが故にひと手番のロスが致命的であること。長期戦は侵蝕値がかさむことから火力の担保が不可欠であること。多くの市販シナリオが10m先にエネミーを配置していること。などなど……
 もちろんこれらをうまくなんとかするためのエフェクトなどは存在する。しかし、それらはルルブのいろんな場所にちりばめられている。これらを全部把握するのはルルブの流し読みでは困難である。そして、それを積み忘れたが最後、「組んだときにはやりたかったあんなことやこんなことも、制限のせいで全部できなかった」になりうるのだ。だからこそ、もし明確に「こういうことをしたい」というのがあるのであれば、なおさらデータは経験者に仕上げてもらったほうがいいのである。

 これを踏まえた上で、なお「自分でフルスクラッチを組んでみたい」と考えているのであれば、以下の記事がよく参考になると考えられる。

 また、ビルドに不安がある場合は、キャラシをできるだけ早く提出しよう。提出するときに「ビルドに不安があるので確認して欲しい」と一言言えばなお良い。そうすれば、何か不備があれば経験者が教えてくれるだろうし、パーティー全体のバランスも他の経験者PLが上手く合わせてくれることだろう。

3. GMや経験者PLの方へ

 まず誤解を避けておきたいのだが、この記事は「すべての卓がこうあるべき」と主張するものではない。
 各コミュニティにそれぞれの文化があることはよく知っている。また、初心者が今後そのコミュニティで活動するなら、その文化に馴染むことも大事であろう。
 その上で、もしDX3rd初心者にもこのシステムを楽しんで欲しいと思うのであれば、いくつかの点に注意したほうが良い。なぜなら(前パートでも述べたことだが)DX3rdでは「やりたかったことが出来なかった」が非常に発生しやすいからである。詳細はDX3rd経験豊かな読者なら言わずとも分かると思う。そして、初めてのセッションで「やりたかったことが出来なかった」が発生した場合、またそのシステムで遊びたいと思う可能性は極めて低くなることだろう。これを避けるためのアドバイスを以下に3つ記しておく。

 まず最初に気をつけるべきは、初心者卓ではキャラ作成の準備期間に充分な期間を設けたほうが良いことである。そして、初心者にはできるだけ早くキャラシを提出してもらったほうが良い。
 もしサンプルキャラをそのまま使用してもらう場合なら、これに限らない。GMが対応できるのであれば、何も準備せずに来てもらって構わないだろう。
 しかし、初心者にキャラをカスタマイズなりビルドなりさせる場合であれば、どんな方法であれビルドに不備がある可能性が少なからず存在する。また、経験者PLは初心者PLが提出したキャラシを見てアタッカーが足りない、雑魚処理用の範囲攻撃が必要などのパーティーバランスを考えることができる。これらの修正は初心者がキャラシを提出した後にしか行えない。このため、修正のための期間はできるだけ長く見積っておいたほうが良いだろう。

 次に、GMはサンプルキャラ以上の性能を求めないほうが良い。
 これは当たり前のように見えて、実際は多くの市販シナリオはそれに従っていない。ルルブ1のサンプルキャラ「不確定な切り札」はピュアキュマイラであり、戦闘移動距離が8mしか無い。また、ルルブ2のサンプルキャラ「至高を見る者」は同エンゲージ不可にも関わらず移動エフェクト等の対策が無い。しかし、市販シナリオの多くはボスを10m先に置くし、平気でエネミーをPLたちのエンゲージに突撃させる。
 GMは初心者卓では少なくとも"サンプルキャラ程度の不備"は想定し、そのようなキャラシが提出された場合はシナリオに調整を入れておくのが吉だろう。

 最後に、仮に初心者が経験点効率を無視したどんなビルドを提出しても、GMや経験者PLは対応できるようにしておくほうが良い。
 もっと言うなら、初心者には経験点効率がどうのこうの言わずに可能な限り自由に組んでもらうのが良いと思われる。もちろん<射撃>と<RC>を組み合わせるなどはシステム上不可能なので、どちらかしか使えないことを話しておくべきだろう。しかし、もし初心者がデータ上の強さ以上に演出を優先しているのであれば、その演出を可能な限り優先すべきだろう。このエフェクトは経験点効率が……効果が弱いから……などと口出しするのは無粋である。もちろん他PCに比べて火力が劣り、盛り上がりに欠けるなどの可能性もあるだろう。その場合はGMが特例で追加の経験点を提示するなどの対応も考慮するといい。どうせ何度かやっていれば経験点効率の良いビルドの組み方は分かってしまうのだ。
 何にせよ、最初は初心者PLには自由な方針でキャラを組んでもらい、GMや経験者PLが柔軟にそれに対応できるのが望ましいだろう。

 繰り返すようだが、これは「すべての卓がこうあるべきだ」と主張するものではない。あくまで、初心者PLが参加する卓において、初心者PLが「やりたかったことが出来なかった」と楽しめないような悲しい事故を避けるための助言である。筆者が初心者PLに対してGMを行ったり、初心者PLが参加する卓にPLとして同卓したりした経験を通じて得た知見である。

 この記事によって少しでも悲しい事故が減ることを祈っている。

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