クリスマスのスイカ
今年の8月、メキシコシティにある Museo de Arte Popular(民芸品博物館)の展示物の前で私は首を傾げていました。
粘土で作られた、長テーブルを囲む男たち。テーブルの上には、皿に置かれたなにかヌルッとした生き物と櫛形に切られたスイカ。トゲのついた冠を頭に戴く男たちは、それぞれ両手に持ったスイカにかぶりつこうとしている。
んー。
とりあえず人数を数えてみましょう。
イエス・キリストと12人の弟子。やはりこれは『最後の晩餐』なのか? みんなイバラの冠をかぶっているように見えるが? 全員イエス・キリストなのか? これは『最後の晩餐』なのでしょうか。
最後の晩餐だった。
では、テーブルの上に乗っているヌルッとした生き物は魚ですね。そしてテーブルの手前に配置されている12番が「裏切り者」ユダ。
イエス・キリストは、うーん、みんなの後ろに寝っ転がっている13番かな? スイカにありつけていないのは施す側だからか。涅槃仏みたいになっている理由はまったく分からないけれど。
8番も仲間はずれ的に立たされてちゃってるけれど、イエス・キリストの足元に寄り添っていると解釈するならば、これはヨハネかなぁ。製作中に、人形を並べてみたら一人入り切らなくなっちゃって立たせただけにも見えるが。
最大の謎は「スイカ」。
なんでスイカなの……?
これだけは、うんうん唸って首を捻りにひねっても分からない。
解説パネルもないし、近くに学芸員さんもいないし、『スイカを囲む「最後の晩餐」』の謎が解けないまま民芸品博物館をあとにしたのでした。
時は過ぎ、
クリスマスシーズンがやってきた。
煌びやかな電飾と、金銀、赤や緑に彩られる華やかな街。それを見ているうちに、私は気づいてしまったのです。
赤と緑。
赤&緑。
スイカ。
スイカ……?
クリスマスの赤と緑、スイカの色じゃん。もしかして。
スペイン語でググります。
「navidad sandia(クリスマス スイカ)」
もしかして、メキシコではクリスマスにスイカを食べる習慣があるのかも? それならば『最後の晩餐』でスイカを囲んでいるのも不思議ではない。日本で作られた『最後の晩餐』がKFCを囲むようなもんや。そんなん見たことないけど。
思わぬ発見に舞い上がりそうになりながらも対照実験を忘れない私。
英語でググります。
「christmas watermelon」
アメリカのレシピサイトにも大量に載ってる! さっきのも、スペイン語の検索結果だからってメキシコのレシピじゃないかもしれないし、これは仮説が甘すぎた!
そもそも『最後の晩餐』ってクリスマスの話じゃないし!
その後メキシコとスイカに関していろいろ検索してみたところ、
スイカの色がメキシコ国旗に似ているから愛されている。
安価で貧困家庭でも手に入れやすく、可食部が多いため大勢が集まる場でよく振る舞われる。
メキシコのお祭り「死者の日」でも伝統的に食べられている。
メキシコを代表する画家フリーダ・カーロが、スイカを「豊穣と不死」の象徴として描いた。
などが出てきましたが、インターネットからは『最後のスイカ』を読み解く手がかりとなる情報を見つけることはできませんでした。安価で手に入れやすい、「死者の日」で馴染みがある、あたりがなんとなく有力そうか??
くはぁ、気になる! 今度、図書館でメキシコ関連の文献をあたって続きを調べてみようと思います。
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マリナさんのたわいない話
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