谷渕一仁

ポートフォリオみたいなやつ

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東京の吐瀉物

足音。 嗚咽が聞こえ、東京の喧騒が止む。 恋人が吐いた。 電柱の影とかでなく、飲屋街道のど真ん中で。 吐いた。 さっき居酒屋で食べた料理たちが、健気に再登場した。 もちろん熱烈なアンコールをした覚えはない。 僕はすぐさま彼女の背中をさする。 男「大丈夫?」 が、僕の視線は吐瀉物にしか向いていない。 彼女の口から出た料理たち。一つ一つを観察して、 ああ、さっきの店のだし巻き卵、値段が安い割に出汁がしっかりきいてておいしかったなあ。なんて思う。 あれ?ダメだ。何考えてるんだ

    東京の吐瀉物