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夢の世界を歩く


訪れた世界のイメージ写真。雰囲気もグラフィック(視界)もこんな感じだった。

 ある日の朝、僕はとびきり美しい明晰夢の世界に飛び込もうとしていた。WILD(一度意識を現実世界に戻して明晰夢の世界に移行するやり方)を実行する準備は整いはじめていて、一度リビングに出た後、すぐに布団に戻る。目を瞑るとジェット機が加速を始めるように身体が揺れていないのに揺れ始める。ここからが腕の見せ所だ。
 通常バイブレーションを感じ始めたら、それをイメージで可能な限り増幅させ、アストラル界に投影した身体を左方向か右方向にローリングさせる必要がある。ここで、十分な振動に達していないとき、また現実世界の意識に気を取られてしまっているとき、明晰夢の世界には行けない。チャンスは基本的に一回のみの真剣勝負だ。
 いよいよ身体を振り下ろす時がきた。バイブレーションは十分で意識も現実世界にそこまで縛られていない。ローリングする方向は右方向に決めた。右方向は床ではあるが、隣になんの障害物もないからだ(隣に壁などがあると、壁を人間は通過できないという想念が具現化するから成功しにくい)。
 思いっきり身体が飛び上がるほどに一気にアストラル体を右に回転させる。すると僕はさっきまでいた現実世界の寝室に立っている。もしかしたら、失敗したかな… リアリティチェックのために、左手の指の数を数えると6本ある!失敗などしていなかった。今、僕は明晰夢の世界に到着したのだ。
 すぐに両手を擦り合わせ摩擦を発生させる。せっかくの明晰夢に興奮してすぐに目が覚めてしまったら… 実に勿体ない。寝室の窓を通り抜け、外の世界を歩きに行く。向かい風がほんのりと体にこする。この日はかなり寒く、夢作家の潜在意識が現実世界の12月の天気を再現しようとしてくれたことは評価したい。視界は良好で現実世界と見分けがつかない描写になっている。街並みは少し活気のない御成門駅あたりだろうか。向かい側に東京タワーが郷愁に溢れながらそびえ立っているのが見えた。―つづく。

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