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Cheftivalの事業検証とその苦しみの軌跡

トミオです。実に3ヶ月半ぶりのエントリーです。

無事MBAを取得して7月末に日本に戻ってきまして、1ヶ月半ほどあれこれ活動したり、悩んだりして今に至ります。(ちなみに、会社をシェフティバルと呼び、サービスはCheftivalとアルファベット表記することにしました)

「食の体験のマーケットプレイス」を作ると前の記事で発信し、実験をしたり、モデルをあれこれ弄ったり、投資家や友人に相談したりを繰り返してきましたが、そのままではかなり苦しいことがわかりました。

体で学んだ「困った」を以下共有します。

労力と収益性のバランスが合わない

いくつか実験をやってみたところ、いわゆる「ポップアップレストラン」をやることの大変さが身にしみてわかりました。

たとえば、前の記事でも紹介した、6月開催の伊藤良樹さんが腕をふるってくれたフレンチのディナー。目の前でシェフが料理を解説しながら作ってくれたり、高いレストランの料理を当てるクイズを出してくれたり、その場で質問に答えてくれたりするイベントでした。

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イベント自体は大いに盛り上がり、参加者のアンケート結果はほぼ全員が「非常に満足」またリピート希望が9割と大盛況。ただ、集客は100%でキャンセルなし、客単価も1万円近いにもかかわらずシェフの手元にほとんどお金が残らず。。

当然だけど、飲食のイベントって原材料(原価)・会場費(家賃・光熱費等)・人件費が必ずかかるんですよね。数字は消しているけど、今回のイベントで発生した費目はこんな感じ。

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特に人件費が曲者で、今回は企画と運営でシェフ以外に3人が合計20〜30時間、ほぼボランティアで動いてくれたのだけど、彼らにまともに人件費を払ったら大赤字になってしまう。

日本の安くて美味い飲食」が、従業員の低賃金と長時間労働に支えられてきたことを痛感した瞬間でした。

7月に開催した「シェフと行く田舎体験」のイベントはさらに大変でした。「僕らがはじめてイベントをやるAirbnb物件」での調理だったため、調理器具や皿などが全然確認できず…やむをえず、かなりの量のものを買ったりレンタルしたり。さらに、東京から岐阜に向かう際の交通費や後泊のホテル代もかかります。

僕から見るとそんな感じだけど、シェフにかかる負担も凄まじく。「慣れない調理環境、現地で手に入る食材もわからない、メニューも全部ゼロから考えないといけない。しかも移動に時間を取られるので時間の制約もある」。シェフのぐっさんが仕事を受けてくれたときに「大変ですよ。本当に大変だと思いますよ」と言っていた理由がよくわかりました。

ぐっさんが最高の仕事をしてくれ、また協力的な参加者の皆さんのおかげで非常に高い評価を頂けた、楽しいイベントになったものの、やはり、客単価20,000円&キャンセルなし&スタッフにまともな給料も払えない状態だったにもかかわらず、ざっくり10万円、赤字が出ました。

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特定の条件では利益を出せるがスケールさせるのが難しい

2回の「参加者からの満足度的には大成功、しかし収益面では失敗」というイベントを開催してみて、特定の条件下でのイベントであれば、利益も出すことができるであろうというのは見えてきました。具体的には、以下のような条件下です。

客単価の高い、グルメ向けやインバウンド向け
シェフやスタッフの移動や宿泊のコストを抑えられる
・ある程度土地勘があり、事前に下見等ができる

このモデル、必ずしも東京近郊でないといけないというのではなく、たとえば「地方の民泊物件とパートナーシップを組み、現地のシェフに出張調理してもらう」という方法でも実現可能ではあります。

が、そのくらいまで前提条件を絞り込んでしまうと、狙える市場がめちゃめちゃ小さくなります。「民泊物件向けにシェフを派遣するサービス」で取れる具体的な市場規模を試算してみたところ、あまりに小さすぎることがわかり愕然としました。

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この事業に投資してくださいと言うのは、さすがに無理やな…

実は、アメリカでは先んじて失敗例が

そんな感じで、体を張っていろいろなことを学んできました。実は、「さすがアメリカ」と言うべき感じで、海の向こうに既に失敗例がありました。

「有名レストランの2番手、3番手を連れてきて一夜限りのレストランを開催する」DinnerLabというビジネス。この事業は10億円以上を集め、全米30都市に展開した上で資金を使い果たして2016年に清算しています。CEOが清算後のインタビューで「飲食ビジネスはあまりにも変数が多すぎる。それらを全部調整する大変さを痛感した」みたいなこと言ってたのはこういうことだったのかと、遅ればせながら僕も学んだ次第です。

あと、まさに食の体験のマーケットプレイス」という名前で事業展開していたFeastlyというサービスも。ここもそれほど大きく羽ばたかず、最終的にChefsFeedという会社に吸収されています。

それからもう一つ、大きな問題が…

イベントを自分で開催する中で、気づいたことがありました。

うちで開催するイベントの参加者、9割男性じゃない?

人口の半分は女性のはずなのに、なぜかCheftivalが開催するイベントには男性しか来ていない。どういうことなのか。

一つ、仮説がありました。女性は、自腹で高い食事代を出そうとしないのではないか。何人かの友人知人に話を聞いてみたところ、だいたいその通りであることがわかりました。

・そもそも知らない男性がいる場に行くのが面倒臭い。行くならむしろお金が欲しい。
・自腹で食事をする場合、4,000円を超えてくると既に高いと感じる。

女性が食事にそれなりの単価を払うのは、女子会などの「参加者が誰だかわかっていて、皆女性である場合」のみなようです。

「それなら、男性が女性に食事を奢ることを前提にマッチングサービスを提供したらどうだろうか」と、競合になるであろう「食事相手を探すデーティングサービス、Dine」に登録してみたところ、登録2日でツイッターのフォロワーにみつかりました。速やかに退会しました。

憔悴

そんなわけで、頑張って動いた結果、想定していたビジネスモデルは

・企画するのも運営するのもめちゃめちゃ大変
・大変な割に、それに見合った利益が出しづらい
・利益を出すには高単価にせざるを得ず、取れるマーケットが小さい

と欠陥だらけであることがわかりました。

エンジェル投資を行なっている知人やビジネススクールの教授に相談にいって「よりによって飲食のマーケットで起業しようって、頭大丈夫?」といったことを幾分マイルドに言われたりもしました。

前回の記事でも書いたように「大人が友達を作れる場所」を目指して自分でサービスを立ち上げることを志したはずが、ものすごくニッチなマーケットを相手に、勝ち目の薄い戦いを仕掛ける羽目に陥ろうとしている。

たとえば同じ飲食でも人材紹介に振るとか、長らく携わったBtoBのソフトウェアビジネス方面であれば、もっと効率的にビジネスを立ち上げられるかもしれない…いっそそっち方面にピボットしようか…

だんだんと自信がなくなり、家からあまり外に出なくなり、ツイッターはじめSNSでの発信も減りました。そして、そんなことしている間にも手元の資金がどんどん溶けていきます。。さすがに家族を飢えさせるわけにはいかないので母からいくらか借りたものの、それもいつまでも続ける訳にはいきません。

サラリーマンに戻ったら、当面家族が不自由しないくらいの給料は稼げるだろう…そもそもこんなに能力の低い、見込みの甘い自分が起業を志したのが間違いだったのではないか…

折れかけた心でそんなことを思いながら過ごす日々。ちなみに、この頃の心の状態を表してるツイートがこちら。

気づけば3,000字くらい書いてました。次回、『初心に立ち返る(仮題)』に続きます。

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