目白村だより36(天使マリリン①)


「天使と侍」キンドル版

マリリン・モンローを小説にした。小説とはいっても、この話の狂言廻しは、実在するMさんという、九星気学&四柱推命の占星師である。Mさんと私が、知り合ったのは、1980年代の終わり頃で、友人の紹介であった。 
私は、1990年代には、頻繁にパリに行く様になり、多忙を極めたが、いろいろ彼女のアドバイスで助けられた。
物事には、思考しても、どちらにしていいかわからない事がある。そんな時に彼女は、とても冷静に答えてくれるのだ。いわゆる、霊感占いではない。彼女は、あれこれ本を調べて、研究室か図書館のように統計から調べるので占いという感じはしない。

2005年頃パリの友人Kから、三十年かけて集めたマリリンのポスターコレクションを、引き取ってもらえないか?と云う話があった。私は既に、文化往来の観点から、日仏の映画のポスターを相当数集めていた。しかし、マリリンは、ハリウッド映画のシンボルである。収集する気は、全くなかったが、Mさんに、正月に帰国した時に、なんとなくこのポスターの話をした。 すると彼女は、是非そのポスターを引き取るべきだと、強くいうのである。その時の言葉を、覚えている。
「マリリンさんは、天使です。ポスターと一緒にいられるだけで素晴らしい!」
その時に初めてMさんが、マリリンと東京で、実際に数回会った話を聞いた。マリリンが、1954年に新婚旅行で日本に来た時である。一般には、全く知られぬ大スクープであり驚愕であった。 
 しかもその話が、とんでもなく面白い。Mさんは、昔資生堂美容部の(昼の顔)とまで言われた人で、訪れるVIP客に対応していた。その頃の資生堂には、海外からの賓客(大体は帝国ホテルに泊まった)、大使館関係の婦人、日本の女優…等がいつも訪れた。窓口の彼女は、時にはメイクをしてあげながら、化粧品の成分を説明もする。マリリンは、大量の化粧品を購入し、それを帝国ホテルに、Mさんが届けたのだ。その時に、マリリンは彼女に、2つの事を頼んだ。
日本人のお手伝いさんを探したい…。それから、黒澤明に会いたい…。  

私は、Mさんの勧めもあって、友人Kからポスターを引き取った。想像以上に大きな作品が多い。ほとんどの作品が、(端役で出た作品も)網羅してあり、私は足りない作品を、少し加えるだけで、マリリンのポスターコレクションを完成する事が出来た。  
  私はパリ滞在中で、対応しなかったが、一度「7日間の恋(2011)」という、マリリン映画が、公開された時に、主演女優の来日イベントがあり、一部を代官山のTSUTAYAに貸した。それらが額に入り、展覧しなかった巻いた分も合わせると、倉庫を借りなければならぬ程の容量になっていた。 
 
 ポスター収集後、私の頭の何処かに、マリリンがいつも住んでいた。それが小説の下地になったのだ。
Mさんの実話を下に、書こうと思った具体的な理由が、いくつかある。
Mさんは、嘘をつくような人では絶対にないという確信。
マリリンと黒澤が、もし会っていたらどうなったのだろうという消せない思い。
これまでのマリリンの本は、彼女の心理分析に、フロイト的なアプローチしかしていない不満。
…そして最後の決め手が、黒澤が、マリリンを、いいねと、対談で発言していた事実だった。 
(つづく)

キンドル発売記念。
マリリンのポスター展します。(13/7〜21/7)予約制。

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