目白村だより27(フランスの想い出⑨)


面白い恋人を、洒落と思えるか?

私は、来年に向けて(フレンチアイコン)のムック本の制作とそのオブジェのフランスでの展覧会を準備中だが、もちろん、フランシス・レイはそのアイコン中でも特異な存在として登場する。
フランシスが、いかに日本で大衆性があるか、それは彼のライセンス商品を見ると一目瞭然である。音楽家で、日本がそのライセンスを、獲得したくなるほど、知名度の高い人はそれほどいない。フランス人では、ポール・モーリアとリチャード・クレイダーマン、それに、少し規模が小さいのだが、フランシスの三人くらいだ。
クレイダーマンや、ポール・モーリアには、男性と女性、両方の服飾ブランドがあるが、フランシス名で商品化されたほとんどは女性物である。驚きなのは(キモノ)。「フランシス・レイの世界をキモノで、表現しました…」が、セールスキャッチである。
キモノにライセンスを請われた人は、ミュージシャンでは、2人だけ。クレイダーマン、そして、フランシスである。クレイダーマンは、王子様ルックで売った人だから、女性のキモノのブランドになるのは、納得出来るが、フランシスの場合は、その音楽の質から選ばれたわけだ。 それは、フランス的なセンチメンタリズムに尽きる。フランシスの出自は、イタリア移民と言われるが、アルジェリア系のジプシーだと思う。とにかくその音楽には、いろんな民族的背景とフランスのカオス、人生観が染みこんでいる。日本人の心を掴んだその複雑で、センチメンタルなメロディは、単なる甘さだけではない。キモノと結びつけた、やまと着物(あまり売れてたとは思えない)は、面白いところに、目をつけたと思う。如何せん、フランシス・キモノは、バブルが咲かせた徒花、着物ばなれの風潮は、ストップ出来なかった。
もう一つとんでもない影響が、北海道名物のお菓子(白い恋人)。この年間2億枚(!)以上売り上げるチョコレート菓子が、フランシスの映画曲からイメージされた事実は、有名である。
この人気にあやかり(面白い恋人)というパロディ菓子を、吉本興業が売り出した。パッケージまでそっくりな賞品は、提訴され、ゴタゴタしたが、どうやら、販売地域を限定する事で、カタがついたらしい。ヨーロッパなら、直ぐ発売中止になるところだろう。

フランシス・レイ特集LIVEを、やっと了えた現在、今更ながら映画音楽主題歌の意味を、考えさせられている。映画の主題歌が、ヒットしない時代。フランシスの映画主題歌は、曲として、燦然と輝いている。
伍ながら考えて見れば、長い間、歌手として、ルグランばかり気にして歌い、若輩者に曲まで書いてくれた大フランシスを、真っ正面から見てこなかった。今回改めて4曲の詞を書いて見て、今更ながら彼の偉大さ、メロディの持つ独特の魅力に、感動している。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?