セミナー

メディアコンテンツのトランスフォーム

先日、メディアコンテンツのトランスフォームについてセミナーを受けてきました。
セミナー会場は日比谷図書文化館内にある日比谷コンベンションホールで、セミナーについては、㈱AbemaTV、㈱RADIKO、㈱MERY 、㈱朝日新聞社といったメディア業界を代表する企業の方が登壇されました。
各企業のメディアコンテンツに関する考えや変革、今後の施策等については以下になります。

㈱AbemaTV

テーマ:「AbemaTV 日本を代表するメディアへの挑戦~アベマ流オリジナルコンテンツの作り方~」
登壇者:㈱サイバーエージェント執行役員  ㈱AbemaTV 制作局長 谷口 達彦 氏

●AbemaTVの概要
・日本初のグローバルメディアであり、このアベマTVを世界に誇れる新メディアにすることがミッションである。成り立ちとしては、スマホを覗く頻度が高くなっていたので新たなコンテンツとしてインターネットメディアを作る必要があったためテレビ朝日と協力して3年前に開設された。
・テレビを見なくなったユーザー、特に10代~30代をターゲットとしているため、この年代に沿って番組作りをしている。
・AbemaTV視聴者のユーザー属性を見てみると35歳以下で55%を占めているが、その内訳としては10代・30代多いので20代も見てもらうようにコンテンツを拡大中である。
・この夏から出てくるテレビのリモコンにABEMATVボタンがリモコンに搭載されていることが決定し、ライブ配信で視聴者から投げ銭してもらえるギフティング機能も開始した。
・現在、25チャンネルを運営している。この25チャンネルは見きれるチャンネル数このくらいなのではという感覚値で設定している。

●若者をターゲットとした番組作り
・AbemaTVのオリジナルコンテンツを高めていくことが課題となっており、扱っているオリジナルコンテンツは恋愛リアリティー番組が57%を占めている。
恋愛リアリティー番組としては、女子中高生の恋愛リアリティーショーである「オオカミくんには騙されない」(「オオカミ」シリーズ)が人気を博しており、10代の若者によくみられている。
この経験から、リアリティエッセンスに一工夫加えた「新しいリアリティーショー」が若者に対して支持されるのではと考え、亀田興毅に勝ったら1000万の賞金がでる「~に勝ったら1000万シリーズ」や堀江貴文の東大受験に密着した「ドラゴン堀江」などのリアリティーショーを制作。特に「~に勝ったら1000万シリーズ」は再生回数最大180万回を達成した。

●今後について
・若者に人気のあるアーティストや熱狂的ファンがいるタレントを活用した「人軸バラエティ」にも力を入れており、元SMAPの香取慎吾‎・草彅剛‎・稲垣吾郎を72時間通して生配信した「72時間ホンネテレビ」が Twitter世界トレンド1位となり、ギャラクシー賞を受賞した。
・番組制作で大事にしていることとして、何が話題になるかを考えてコンテンツ作成をしているため、今後もTwitterで話題になるようなコンテンツ作りをしていく。

㈱RADIKO

テーマ:「これまでのラジコ、これからのラジコ」
登壇者:㈱RADIKO 代表取締役社長 青木 貴博 氏

●ラジオ業界を取り巻く環境
・ラジオ聴取者は1990年で9.2%だったが、2018年では5.1%に。ラジオ広告費は1991年で2406億円だったが、2018年では1278億円となっており、約30年でラジオを聴く人や広告費がほぼ半減している。
このようになってしまった原因としては以下の4点が考えられる。
①ラジオの難聴取問題(ラジオが入るエリア問題)によるラジオ聴取者の減少
②生活者の情報入手経路増加によるメディア接触時間の分散化
③ラジオの聴取デバイスの減少と聴取方法の変化
④若年層のラジオ離れ、ラジオ知らず(ラジオを聴いて育っていない)

●ラジコ誕生とその目的
・ラジコが誕生した目的・経緯としては以下の4点がある。
①諸外国との通信や離島などの難聴取エリア解消
②パソコン、スマートフォンなどを通じてラジオリスナーを拡大すること
③ラジオを聴いて育っていない現代若年層へアプローチ
④ラジオ業界が大同団結し、ひとつのプラットフォームとしてラジオをPRしていく

●ラジオ聴取の現状
・ラジオを聴いている媒体の内訳は、スマートフォンで聞いている人が74.4%、パソコンが21.5%、その他が4.1%となっている。
・ラジオは朝7:30~8:30の時間帯が最も聴かれており、そのほとんどがスマートフォンで聴かれている。これは車での通勤時間と重なっているためと推測される。

●これからのラジコが行う施策
・ラジオを聴くデバイスとして車があるため、車内でスマートフォンアプリが使えるSDL(スマートデバイスリンク)に対応し、車の中でラジコ聞けるように画策をしている。
・車だけでなく、音の出るデバイスすべてにラジコを対応させていきたい。
・広告主に合わせて配信できる音声広告「ラジコオーディオアド」の実証実験を開始。ラジオメディアはそもそも広告スキップされにくい特徴があるため、リスナーに自然な形で広告配信ができる。
・ラジオを好きな時に聴けるようにタイムフリーを活用してノンリスナーにラジオを一度視聴してもらい、ラジオリスナーになってもらうよう啓蒙活動を行う。
・レコメンド機能を取り入れ、ラジコを聴いている人へのおすすめ番組や関連番組を出す。
・ラジコプレミアムを海外に出していきたい。
・新たな放送システムの方向性として、すべてのラジオのマスターデータとしてラジコに音源を集約させていくのもいいのではと考えている。
・「ラジオはラジコを通じて進化を続け、新たな世界へ向かう」を信条にこれからも様々な施策に挑戦していく。

㈱MERY

テーマ:「共感を軸に創る。MERYの挑戦」
登壇者:㈱MERY BRAND STUDIO 部長 青木 秀樹 氏

●MERYの概要
・MERYはおしゃれ好きな女性向けキュレーションアプリであり、ファッション雑誌も発刊している。
・MERYは主に10代~20代前半の女性をターゲットとしている。
・DeNA、電通、小学館から出資を受けている。

●出版社が苦戦している理由
・今出版社が苦戦している理由は、出版社(パブリッシャー)の3要素である「ブランド(編集長やモデルなどの情報発信者)」 「コンテンツ(トレンド情報等)」 「デリバリー(紙媒体の届け方)」に限界がきている。分かりやすく言うと、「名物編集長が専属モデルを起用してトレンド・お手本情報を雑誌で届ける」というモデルの限界がきている。
これは、スマートフォンの普及によってSNSなどから様々な情報を収集できる上、昔に比べて考え方が多様化し、トレンドやお手本情報に対する価値観が大きく変化したことも要因としてある。
これまではマスから発信されたものがお手本になってトレンドになっていたが、これからはデジタルで共感を集めたものがだんだん大きくなってトレンドになっていく。(Twitter等で拡散されて知るなど)

●MERYの仕組み
・手の届かない憧れの芸能人等の情報発信より身近な人からの情報発信で共感を集めたものがトレンドになっていく世の中である。そこでMERYは、女性の公認ライターを雇い、その公認ライター(平均年齢21歳くらいの学生・フリーター)約80人が見つけたかわいい・好きのコンテンツを記事としてアプリや雑誌で発信し、若い女の子からの共感を集めて女の子の心を捉える仕組みづくり行っている。

●公認ライター記事から見える次のトレンドの兆し

現在、「インスタ映え」や「タピオカ」が若い女の子たちのトレンドだが、「インスタ映えしなくても自然体でいいのでは」という風潮が共感を徐々に集めているため「チルい」(=くつろぐこと、まったりすること。Chill outが語源)写真の撮り方が今後トレンドになる可能性がある。

●MERYが実践する今後のパブリッシャーの形
・上記のMERYの仕組みによって、編集長やモデルなどの「人」に依存しないブランド創りを行い、共感を軸とした等身大コンテンツをデジタル時代に最適な形で届けていく。

㈱朝日新聞社

テーマ:「コンテンツ&コミュニティー VMポトフが目指す新聞社の未来」
登壇者:㈱朝日新聞社 総合プロデュース室長 宮崎 伸夫 氏

●VMプラットフォームポトフの概要と開発までの背景
・「バーティカルメディア(VM)」とはユーザーにとって興味のある特定のジャンルや領域を深く掘り下げるWEBサイトのことであり、朝日新聞社が運営するプラットフォーム「ポトフ」でそれらをユーザーに提供している。
・そのWEBサイトでは、大学スポーツやペット飼育など様々なコンテンツを発信している。
・これまでのメディア環境は、限られたコンテンツメーカーからの情報を新聞・雑誌・テレビ・ラジオの媒体で生活者に発信していたが、現在はコンテンツ提供者が多様化し、発信媒体もWEBやSNS・ブログ等のデジタルメディアが増えるなどメディア環境が変化したため、その環境に合わせてVMが開発された。

●VMプラットフォームポトフの仕組み
・質が高い、深堀りのコンテンツ(記事・イベント)を求めて、趣味嗜好や価値観などの「共通点」を持ったユーザー(読者)がポトフには集う。そこで、ポトフではそのコンテンツに関するイベントを開催したり、SNSで情報発信するなどしてユーザー同士の交流を深める取り組みを行う。
・ポトフではスポンサードコンテンツも提供している。
例えば、VMで発信している大学スポーツのコンテンツで、駅伝強豪大学の東海大学陸上競技部が森永製菓の「inゼリー」を用いてコンディション調整を行っていることを投稿し、「inゼリー」のプロモーションを行った。
・このように、これからのメディアの役割は「伝える」から(人や企業を)「つなげる」へと変革していく。

●VMプラットフォームポトフと朝日新聞社としての今後のビジョン
・VMで発信しているコンテンツを通して得たコネクション(大学スポーツのコンテンツならその大学や大学スポーツ競技団体など)を用いて、新聞社だからこそできるソリューション提供を行う。
・VMで発信しているコンテンツを通して、コンテンツ訪問ユーザーやそのコンテンツにメールマガジン登録してくれているユーザーの基本属性・行動履歴データを蓄積してデータ・プラットフォームを構築する。そして、そのデータを社内外組織と連携しながら「アクティブシニア」「女性」「男性」「若者」などの重要ターゲットユーザーごとに様々な視点からデータ分析してコンテンツ&コミュニティーづくりを行う。例えば、そのデータをもとに「若者」の属性の中でそのユーザーを更に「インフルエンサー」「定期メール受信者」「イベント参加者」「サイト訪問ユーザー」などに分けて、「インフルエンサー」にはSNS等で情報発信をしてもらってコミュニティーを拡大してもらう、「定期メール受信者」にはコンテンツをより良くするために深堀りした意見をヒアリング・リサーチするなどしてデータを有効活用する。
・上記のデータ・プラットフォームやそれを活用したコンテンツ&コミュニティーづくり通して、生活者の「知る」から「興味を持つ」、「行動する(購入・利用・共有)するまでを一気通貫でサポートするサービス型メディアMAAS(Media as a Service)を目指す。そして、朝日新聞社を様々なコミュニティーが連なる有力コミュニティーの集合体へと変革させ、経営理念である「ともに考え、ともにつくる~みなさまの豊かな暮らしに役立つ総合メディア企業へ~」を具現化させる。

セミナーを通しての所感

今回のセミナーでは、新聞・テレビ・ラジオ・雑誌の各分野で活躍されている企業の方々が登壇されていました。どの分野も常に進化し続ける情報システム・ITに順応し、取り扱うサービスとのリンクを常に実践していることが見受けられました。
トムスは静岡新聞・静岡放送という地方のメディア業界のグループに属しています。そのため、情報システム・ITに対してアンテナを高く持ち、今回セミナーで学んだことを含め、自社グループにおけるテレビの視聴率やラジオの聴取率等を高めていく施策に活用していければと思います。

                        (トムス 伊東貴弘)




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