Twinmotionを漫画背景に活用してみる
はじめまして。西岡知三と申します。
「二択歩行」というスキマやマンガZEROなどのWeb漫画サイトで現在連載中のサスペンスホラー漫画で作画担当をしております。
Twinmotionについて
さて、表題にもなっている「Twinmotion」ですが、建築・造園・都市計画などのビジュアル化に使用される専門ソフトです。
UnrealEngineによる美麗なリアルタイムレンダリングが可能で、
他のツールで作成した3Dオブジェクトの読み込み・豊富なアセットとマテリアル・実際の地図データを読み込んで建築物の生成(箱型の簡易なもの)・天候や時刻の変化なども対応し、カメラ操作もFPSゲームのように簡単で狙った絵を非常に短時間で作ることができます。
作成例。
本来30万近くする高額ソフトなのですが、EpicGamesの買収により2019年11月まで無料で配布(それ以降も既にダウンロードしている人は使用可能)されており、それなりのマシンスペック(1660Ti以上?)があれば誰でも利用できる状態です。大変気前の良いことに商用利用も許可されています。
これを漫画の背景を描く際に応用できないかと思い、現在掲載されている最新話(二択歩行23話)で導入してみました。結果としてはかなり満足の行く物になりました。
下図は4コマ目以外、全てTwinmotionでレンダリングした絵にアシスタントの方に加筆してもらったものです。作業速度は0から描く場合の半分以下になっていました。(無論、屋内のモデルを作る時間が先ずかかるのですが、最終的には短縮した時間のほうがずっと多かったと思います)
手順
どのような方法でTwinmotionを導入したかを説明してゆきます。
1.舞台になる建物のモデリング
SketchUp(商用使用する場合は有料)やBlenderなどで建物のモデリングします。モデリングの手順については今回は割愛しますが、Twinmotionで材質設定を行うので壁や柱などの各部位ごとにレイヤーを分けておく必要があります。
2.Twinmotionで読み込み
Twinmotion起動時に左下にでっかく書いてあるインポートというボタンから読み込みたいモデルを追加します。対応形式はobj,fbx,skp,c4dなど。
初期設定では英語ですが、左下の3本線アイコンからPreferenceを選びAppearanceタブのLanguageから日本語を選ぶと捗ります。
読み込んだモデルが見当たらない場合はカメラ操作して見回してみましょう。
操作はWASDで方向移動、QEで上昇下降、右クリックしながらマウス操作で視点移動です。慣性までかかっており操作感はまるでゲームさながら。
ちなみに一度インポートしたモデルを置き換えてインポートすることも可能で、Twinmotion上で貼り付けたデカールやマテリアルなどの設定は保持されるようです。この機能がとても便利。
3.マテリアルの設定
マテリアル(材質)の設定です。難しいことは何もなく、左のパレットからイメージに近い材質を探して設定したい箇所にドラッグ&ドロップするだけ。
下段パレットからスポイトを選んで、既に設定した箇所のマテリアルを調整することもできます。
4.天候設定
大まかなライティングがされていないと絵のイメージがわかないので、天候設定を行います。下段パレットの葉っぱアイコン→天候の順にクリック。
スライダーを動かすだけで雨や雪、強風など自在に変更できます。
5.ライティング
雨を降らせて当然暗いので左パレットからライトを選んで配置していきます。色や強度を調整しつつ雰囲気を出していきます。
影をONにすることでこのように投影させることもできます。
こんな形に落ち着きました。明るい場所は会話するキャラクターが集まる場所です。
6.デカールの貼り込み
左ペインから調度品・備品>デカールの順に選んで壁や天井に汚しをつけたり通気口を足したりしていきます。これもドラッグ&ドロップです。
7.レンダリング前のマッチング作業
作った3Dシーンを漫画の背景として使うためには、
下絵に合わせてカメラを調整し、素材として静止画に出力する必要があります。
残念なことにTwinmotionには下絵を読み込んだりオーバーレイする機能がないため、代替手段として漫画制作ソフトであるClipstudioを最前面化して半透明にし(transpwndsという無料ソフトを使用)、その状態でTwinmotionを操作して調整を行いました。
下図はClipstudioの作業ウィンドウをTwinmotionの前面に置いている状態。
このようにClipstudioを半透明&最前面化し、下絵にカメラアングルや画角を合わせてゆきます。
留意すべき点として、カメラのアングルを動かす右クリックはTwinmotionで表示されてる画像内をクリックする必要があるので、Clipstudioのウィンドウは少し小さくしなければなりません。
レンダリングする前に下段のyoutube的なアイコンから静止画を作成を選ぶことで、出力する画像のアングル、オブジェクトの表示非表示、カメラの設定などを名前をつけて複数登録しておくことができます。
ここで背景が必要なコマのマッチング作業をそれぞれ行ってゆき、一括で出力できるようにします。
ちなみにカメラの設定は出力サイズ(縦横比)、カラー、視野角、遠近法補正(なんと3点透視か2点透視かが選べる!)などの細かい設定ができます。
8.レンダリング
下段の左下に出力ボタンがあり、その中の静止画をクリック。
そして先程の手順で作成した設定の中から出力したいものを選び、エクスポートを選ぶことで素材画像をレンダリングできます。
9.Clipstudioに読み込み~仕上げ
あとはレンダリングした画像をClipstudioの各コマに読み込み、
グラデーションと2値化画像を被せ、
アシスタントさんに細かい描き込みや、邪魔なものを薄くしたりして仕上げてもらいました。
以上で全行程の完了です。
最後に
私の描き方が漫画の割にグレースケールが多くてやや特殊な仕上げをしているので今回のような描き方が効率よかっただけということもありますが、Twinmotion自体がとても扱いやすく色々な事ができるソフトなため、モノクロ漫画やイラストにも応用できると思います。
マシンスペックにもし余裕があるなら、是非導入して遊んでみてください。
今後も作画に役立てそうな何か面白いソフトや技術があれば紹介してゆきたいと思います。
そしてもし興味があれば、「二択歩行」読んでみてください!
5月末までなら全話無料で読むことができます。
今回記事にした23話も読めますので、他ページではどのように使っているか見てみたい方なども是非・・・!