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投資家をファンに変える「株主ケア」(デービッド・スノーディ著)を読んで

 「株主ケア」を読んで、印象に残った内容を記事にしました。
 気になった方は是非本を手に取って読んでみてください。


 高ROE企業は低ROE企業に比べ、ボラティリティが非常に高い

 本の中では具体的にROE8%の企業を底にして、それより高くても低くても徐々にボラティリティが上昇するようなデータを示されていました。
 ボラティリティとは日々の株価の変化のことであり、ボラティリティが高い=株価変動が激しいことを意味します。
 そもそもROEとは自己資本でどれだけの利益を生んでいるかという指標であり、

ROE=1株あたりの純利益/1株あたりの純資産=PBR/PER

で表すことができます。
 一般的にROE8%以上であれば上手く保有資産を活用できていると言われており、それよりも低いとそもそも魅力が薄い。高いと効率的に稼げているが故に年を重ねるごとに業績のブレが大きいため売買がどうしても多くなってしまうのだと思います。
 高ROE=優良企業というのは確かに間違いないですが、長期的に保有するのであればほどほどが精神衛生上優しいということですね。

 株主TAMはボラティリティの低下に伴い増加する

 TAMとはマーケティング用語でTotal Available Marketの略、日本語では「獲得可能な最大市場規模」という意味です。
 この本では一般的なマーケティングと同様、株式市場でもTAMが存在し区別するために株主TAMという表現がされています。
 株主TAMには国内外の個人投資家、機関投資家が該当するわけですが。機関投資家の場合、ボラティリティに応じてウエイトを調整するみたいです。ボラティリティの高いポジションはウエイトを下げるといった調整の仕方です。
 個人投資家でも同じことが言えると思います。私自身も成長株のようなボラティリティの高い銘柄はそもそも長期で保有しようと思わないですし、購入するとしても最低単元しか購入しない等、リスクを下げる買い方をします。

 自己資本比率とボラティリティ

 自己資本比率とは、貸借対照表(B/S)の貸方にある純資産が総資本に対してどれくらいの比率かを表す指標です。高ければ負債が少なく、低ければ負債が多いことになります。
 この本の中では、自己資本比率10%未満〜90%以上まで10%刻みに企業を分類したときの各ボラティリティを表にしてくれています。
 ここから分かることは、自己資本比率が30%〜85%のグループではボラティリティが非常に安定している。自己資本比率90%以上のグループは10%未満に対してボラティリティが高いことが分かります。
 一般的に自己資本比率が高いほど財務良好、経営リスクは低いとされているので著者も理解し難いとしており、私も同感です。
 著者は倒産するリスクよりも、企業が自由に使える多くの資金を経営者が「何かとんでもないことをしてしまう」リスクが上回るのではと推測していました。
 個人的には自己資本比率が高い=借金ができないという考えもあるのでは、と。
 程よく借り入れをして緊張感のある経営の方が市場からは好まれるのかもしれません。

 配当・自社株買い・株主優待・株式分割・コミュニケーション

 この5つを低ボラティリティのツールとして挙げています。
 この中でも、株主優待と自社株買いについて斬新な内容が書かれていました。
 株主優待は「不公平」という考えのもと、国内外の機関投資家から嫌われている株主還元策ですが、優待がもたらす①ボラティリティの低下バリュエーション(株価)の上昇は全ての投資家にシェアされ、「公平」に恩恵を受けることができる、とあります。
 また、配当金は税引き後費用なのに対し、株主優待の費用は税額控除できるので節税になるような内容もありました。
 自社株買いはボラティリティやバリュエーションに与える影響が限定的とのデータが示されていました。
 理論的には自社株買いをして償却することでEPSが上がり、1株の価値が上がるのですが、この本では買い方が良くないとされています。
 自社株買いをすることで、より資本コストやボラティリティへの影響を拡大するためには、決算カレンダーに沿って実行するのでは無く、株価が相対的、絶対的に低いときにのみ自社株買いを発動するというもの。
 底を狙うのは非常に難しいですが、せっかく自社株買いをするならホルダーが苦しいタイミングでして欲しいと思います。

 さいごに

 私が株式投資を始めた2019年は高配当株よりもグロース株が好まれ、配当を出す資金があれば投資に回せ。みたいな話がyoutubeやtwitterでよく見た記憶があります。
 今では高配当、バリュー株が人気ですが、当時のことを振り返ると投資方針に迷いが生じることもありました。
 しかし、この本を読み、配当金等バリュエーション以外の株主還元の方法は株主の幅を広げ、ボラの低下にも影響があるなどメリットが多いことに気付くことができました。
 非常に参考になる良い本に出会えたと思います。

ともぞー


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