E34のススメ(3代目BMW5シリーズ)

(2020年6月の記録です 備忘録として)

会社の人に声を掛けられた。
私より20ほど年上の方だ。

「鈴木さん。ちょいとクルマについて教えてよ」
「どうしました?」

「いやさ、そろそろ次のクルマを探そうと思っててね」

聞けば、現在乗られているレガシィB4のABSユニットが故障したが、新品パーツは絶版で手に入らないと。中古部品をかれこれ半年ほど探してるが、出てこないと。

クルマはBE型レガシィB4。
希少な3L水平対向6気筒搭載、BEE型である。

「エンジンはまだまだ元気なんだけどさ。そろそろ買ってから20年近くになるし、しょうがないかなぁと思ってるんだよね」
「6発だと回転数パルス違いますからね。4発用の部品じゃダメかもですね。辛いなぁ、いいクルマなのに。」

「そうそう。でね、昔欲しかったクルマを買おうかと思ったんだ。もう歳だしさ、運転できるのはせいぜいあと10年。ならば好きなクルマ買おうと思ったんだけどさ。コレがびっくりするほど高いんだよね」
「どんなクルマですか?」

「BMWのマルニ(2002)なんだけどさ。実は20年前にも買おうと思って何台か見に行ったのよ。結局スバルの値引きに負けてB4買ったんだけどさ。

その頃の価格感でいたら、もうとんでもなくてね。又はポルシェ(911)も安くなってないかなと思ったらさ、とんでもない話で。この20年ですっかり浦島太郎だよ」

「マルニはもはやクラシックカーですよ。空冷911は雲の上の存在ですよ。素敵ですけどね。」

2002は3シリーズの祖先。半世紀近く前のクルマだ。
そりゃ乗れるもんなら乗りたいが。
若い頃シトロエンGSAに乗られていた通人だけあって、ご希望のクルマのハードルは相当高い。

「マルニの後期型、2Lのtiiってのが欲しくてね。車体は1トンそこそこだから軽くて速いのよね。でも全然高くてさ」
「でしょうね」

「でさ、現実的なとこを考えたら、E30(2代目3シリーズ)かな、と。でもキチンとしたのはやっぱ高いんだよね。」
「確かにマルニの最終進化形はE30ですね。小さくて軽くてメカが高級なクルマ。私も好きです。」

「でさ、ホントはデカいBMWとか嫌なんだけど、でもE34はいいかな、と思い始めてね。」

そうか。E34、3代目5シリーズか。

今乗るのにイケてる気がしてきた。

1988年から1995年まで発売された3代目5シリーズ。

瀕死のBMWを復活させた功労車BMW1500、ノイエクラッセの正統後継車が5シリーズ。

その3代目になるE34は基本コンポーネントを継続しながら現代版へアップデートさせた、いわゆるノイエクラッセ最終進化系である。そういう意味で歴史的価値はある。

ボディは先代E28型5シリーズより大型化され、そのポジションに相応しい体躯と静粛性を実現したが、それと引き換えに100kg以上の重量増となった。
この為、先代に用意されていた直4の518は落とされ、登場時点では全車直6となった。

日本仕様は比較的新しいスモールシックス2.5Lの525iと、古来シルキーシックスの名文句を産んだビックシックス3.5Lの535iの2モデルが導入された。どちらもZF製4速ATとの組み合わせ。535iはそのまま93年まで販売。

91年のマイナーチェンジで、エンジンを一新。スモールシックス系は全て4バルブDOHC化されたと同時に、JATOCO製5速ATとなった。
コレにより、従来アンダーパワーで輸入してなかった2Lモデル、520iを導入。525iはハイパワー化されて170馬力から192馬力に。

そして、V8モデルも導入された。
初代レクサスLS(セルシオ)対抗としてE32型7シリーズに積まれたモノと同じ。
3Lの530iと4Lの540iがあり、共にJATOCO製5速AT。

93年には直6 2Lと2.5Lモデルの吸気バルブにVANOS(可変バルブタイミング)機構が加えられた。最高出力に変化は無いが、低速トルクが増大。

そして96年に後継E39型へバトンタッチした。

中古車を探す上でATが故障しないかどうかは最重要項目とも言える。壊れたら50万だの100万という金額だ。

BMW搭載のZF製の4速ATはよく壊れると言われてる。ざっくり7万キロほどでオーバーホールが必要とも。

対するJATOCO製5速ATは当時日産車で使われていたものと基本的に同じ。比較的壊れないと言われているが、ZF製に比べて変速はヌルい為、敢えてZF製を推す声もある。
(ちなみにE39後期型はZF製5速ATだが、こちらはそこまで壊れないし変速も速い)

ただ、4速ATのギヤ比は高速向けで2速と3速が離れている。
日本では使い難い。

足廻りはBMW伝統のフロントストラット、リアセミトレーリングアームの独立懸架。
フロントは仮想転舵軸方式のダブルジョイント(二本のアームに分割)式。リアはトーコントロール補助アームを加えた進化型セミトレだ。

シャキッとさせるには取付部ブッシュのメンテナンスは必須だろう。
30年前のクルマだから、今までノーメンテと言うのは考えづらいが。

内装はファブリック仕様とレザー仕様がある。
どちらでも良いが、本革でもパワーシートは最終に近いモデルだけだったと記憶する。もちろんオススメは壊れない手動シートだ。

エアコンは初期型525iや520iにはマニュアルエアコンが装備されるが、それ以外はダイアル式オートエアコン。どちらでもいいが、敢えてオートエアコンにこだわる必要も無いだろう。何せ30年落ちだ。
ちゃんと冷風/温風さえ出てくれればいい。

因みにオーディオはこの年代お約束の1DINカセットのみ。

ステアリングホイールは、前期型はエアバッグ無し、後期型はエアバッグあり。
エアバッグ付ステアリングの形状は、通常モデルで2種(最初はE36と同じ4本スポーク、最終はE39と同じ形状)と、Mスポーツ用3本スポークが用意される。

ウッドパネル装備の上級仕様は素晴らしいモノだ。コレだけでも価値はある。

カーセンサーを見てみると、大多数は後期型525i。意外に低走行バリもんが安い。人気が無いからか。

もちろんノーメンテで乗る訳には行かないだろうが。

E34型BMW5シリーズ、クラシックを味わうにはいい選択かも知れない。

〈追記〉
世の中の皆さんが思ってる以上に古いBMW通常モデルの市場価値は極めて低い。価値があるのはホンの一握り。

E34型5シリーズは車齢10年を待たずに廃車するケースも珍しくない。感覚的には2000年あたりから残存数は激減している。

今でも販売してるクルマは極上かつ販売店やオーナーの愛によって支えられてると言っても過言ではない。

こう言うのを探すのはなかなか楽しいものだ。

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