スバル 新型レヴォーグ考察

スバルレヴォーグがモデルチェンジするらしい。
最近のクルマに疎い当方は、実はレヴォーグをよく知らないのだが、近所のスバルで先行展示するらしいので、ちょいと見てきた記録を残す。

1.レヴォーグとは

初代レヴォーグ(VM型)は、ハイパフォーマンスカーVA型WRXのワゴン版である。
WRXは元々インプレッサ派生の高性能版なので、インプレッサスポーツワゴン後継がレヴォーグという事になる。

Dセグメントのレガシィは北米市場向けに大型化した為、より小型の新規モデルレヴォーグを出した、との事だが、インプレッサスポーツワゴンWRX後継としてみればコンセプトにさほど新鮮味のあるモデルでもない。なもんで個人的には大して興味無かった。

駆動系はWRX S4と共通の2L FA20型直噴ターボエンジンにCVT変速機、前後不等トルク配分遊星歯車センターデフに電子制御LSDを備えた4WDのVTD搭載モデルと、1.6L FB16型直噴ターボエンジンにCVT変速機、電子制御クラッチのみによるアクティブトルクスプリット4WD搭載の2種となる。
要は2Lは以前からの前後トルク45対55のセンターデフ付きスポーツ4WD、1.6Lは低パワーモデルと共通のセンターデフ無し60対40の4WDの模様。

今時はブレーキでトルク制御かけられるので、駆動配分だけでどうこうというわけでもなく、見た目も変わらない為売れ筋のほとんどは1.6Lモデルとなる。

このサイズのワゴンは欧州市場向けだろうと思うが、欧州市場ではなかなか苦戦してる模様。日本では昔レガシィのターボモデルを買ってた方々の受け皿になっているのか。見た目もWRXだし。
個人的にはやや中途半端に感じるが、そこがうまくハマったのだろう。

そんなレヴォーグも2013年登場から早7年。
モデルチェンジの時期を迎えた。

2.新型レヴォーグの概要

調べてみると今回のトピックは意外に多い。

ドライブトレーン

まずは新開発の水平対向4気筒、CB18型1.8L直噴ターボエンジンから。
昨今の燃費規制に対応すべく希薄燃焼、所謂リーンバーンを追求し、なんと理想空燃比の半分の燃料であるλ=2での燃焼を実現し、熱効率を40%に乗せたらしい。
マツダのようなSPCCIなど飛び道具を使わずに。ホントかよ。

実用域でこの希薄燃焼領域が使い物になるとは到底思えないが、現在のプラットフォームでは水平対向エンジンと心中する以外に方法は無い、スバル不退転の意地だろう。

そして、この特性を活かすべく、CVT変速機のレシオカバレッジ(最低速から最高速ギヤ比の幅)を6.3から8.1へ大幅に広げた。
ざっくり言えば、従来は6速AT相当だったものを8速AT以上相当へ広げてる。コレは副変速機を持たないCVTとしては世界最高クラスだ。

CVTは大小2つのプーリーにベルト(スバルはチェーン)を掛け、プーリーのサイズを連続可変する事で減速比を変える仕組み。
小さいプーリーはベルトの最小曲げ半径以下には小さくできず、大きいプーリーはスペースの制限と重量増(プーリーは鉄の塊)により、どんどん大きくする事はできない。

つまり、CVTは減速比の幅、レシオカバレッジは自ずと決まってしまう。

なので、最近の軽自動車(ジャトコ)やトヨタ車(アイシン)などでは2段の副変速機を持たせてレシオカバレッジを広げる方法を取っていたりする。

スバル(自社製)はコレをチェーンのピッチなどを変える事で、最小プーリー径を小さくした模様。伝達効率の落ちる副変速機は使ってない。

そんな事よりもっと驚いたのは、ボアピッチ(シリンダー間距離)を変えてきた事だ。
スバル水平対向エンジンはEJ20以降FA/FBに至るまでこの31年間ずっと113mmだった。コレをCB18は98.6mmまで縮めた。

生産設備の対応も去る事ながら、クランクシャフトのウェブ厚は極薄となり、クランクシャフト剛性が心配になる。また、ボアアップによる排気量アップは不可能だろう。排気量1.8Lを上限とする設計だ。

しかし、おかげで元々全長の短い水平対向4気筒エンジンを更に40mmも短くした。

トランスミッション位置はSGP共通だろうから、縦置きのエンジンが短くなる事で鼻先の重量は軽く、低重心(スバルはエンジン前上りなので、短くなると低重心)となる。

また、今回ロングストローク化によるエンジン幅が拡大してしまう事を解決する為に、左右ブロック高さを不等にした。

つまり、回転方向へ少し回してオフセットさせ、右バンクを上げて左バンクを下げることで左右ブロックを引っ込めた。コレによりエンジン幅を詰めた。スゲー。この発想は無かった。

本来水平対向は左右ピストンが逆に動くことで振動を打ち消す為、高さが違うと振動が増えそうなのだが、果たして大丈夫なのだろうか。

付け加えると、CB18エンジンはレギュラーガソリン仕様(先代はハイオク仕様)で、最高出力を177馬力に留めながら、30kgmのトルクを出力する低速トルク型となっている。先代1.6Lよりも小さいギャレット製小径ターボを採用して、最高出力よりもレスポンス重視としている。

ボディ

ボディはSGPプラットフォーム。昨年北米でモデルチェンジしたアウトバックで先行採用されたインナーボディ一体方式を採用した模様。
今まで、前後セクションを外板含めて構築後にくっ付けていた構成を、前後一体の一気通貫で組み立てたインナーボディに、後から外板を貼り付けるカタチにしたらしい。コレでボディ剛性が格段に上がってるとの事。

アイサイト

そう言えばアイサイトもアップデートされたらしい。
アイサイトそのものはサプライヤーを変えて複眼カメラの視野角を広げ、更にコーナーにミリ波レーダーを追加。
緊急ブレーキ時にステアリング制御まで行われる。
このアイサイトによる安全装備や従来通りACC(アダプティブクルーズコントロール)は全車標準装備。

コレに加えて、アイサイトX搭載車は準天頂衛星システム「みちびき」による高精度GPSを搭載して低速ハンズオフ(手放し)も実現しているとの事。やっちゃえスバルだ。

足廻り

細かい所では、足廻りでストラット形式フロントサスアームの構造を変えている。アーム長をタイヤ側へ伸ばし、タイヤの操舵軸とタイヤ中心の距離、いわゆるキングピンオフセットを小さくし、ステアリングフィールや接地性を向上させている。

具体的には前輪のフロントハブ下側ボールジョイント取付方法を変えて、アームのホイール側取り付け部をより外へ出し(よりホイール内部に入れ)ているらしい。
コレに伴いブレーキローターもよりホイール内部へ移動させている。

ここの構造は初代レガシィ以降ほとんど変わってなかったハズ。フルモデルチェンジでも手を付けない箇所。大改変だ。

コレだとホイールがキャリパーに近過ぎて対向ピストンキャリパーは付けられないだろう。
しかし、見た目重視の大型キャリパーなんかより、キングピンオフセット適正化の方が遥かに正しい。

そんなスバルの想いとは裏腹にチューニングショップはホイールを外に出してツライチにしてキングピンオフセットを増大させ、大型対向ピストンキャリパーをぶっこむのだろうが。

加えて、電動パワステ機構も高級版のダブルピニオン式とした。
ステアリング入力とモーター入力を分けたシステムで、モーター直動式としては機構的には最上のものとなる。


STI Sportグレードにはスバル初のZFザックス製減衰力電子制御ショックアブソーバーが装備される。
ショック本体のGセンサーと車体側Gセンサーにより減衰力は500分の1秒周期で自動制御されるらしい。
もちろんスバルお得意のドライブモードで減衰力切り替えも可能となっている。

ブレーキ

そうそう、ブレーキは電動ブレーキブースター方式をスバル車として初採用。実はコレ、事実上ブレーキバイワイヤだ。
ブレーキペダルの踏力とストロークを検知して、電気的にブースターへ伝える。
電気系統が故障した際の為に、一応ブレーキペダルとブレーキマスターは機構的に接続されているが、普段は電気信号でのみ稼働するカタチだ。

回生ブレーキとメカニカルブレーキをミックスで制御するハイブリッドや電気自動車では採用例が多いが、非電動車での採用は珍しい。

という事で、新型レヴォーグはスバル車のコア部分について大幅にアップデートされているのだ。

価格はアイサイト搭載でざっくり先代レヴォーグの1.6L並み。
アイサイトX搭載車だけ35万円高。
この内容からお得感はかなりあるようだ。

3.静止検分

展示車初お披露目かつコロナ対策の為、簡易手袋装着で当方5分しか観る時間が無く、かなり大雑把な検分である事をご了承いただきたい。

展示車は最上グレードのSTI Sport EX。アイサイトX搭載車だ。

外装色はSTI Sport専用のWRブルーパール。
内装もSTI Sport専用のボルドー(赤)とブラックのツートーン本革仕様。

運転席に乗り込む。
シートは10ウェイパワーシート。
座面の前端上下、後端上下、シート前後、リクライニング、ヘッドレスト上下の五要素二方向電動。

メータークラスター角度に合わせると、かなり低い位置が設計デフォルトに感じる。私の体型(身長171センチ)でシート後端高さは最下位置まで下げた。
とは言え、シート高を上げてもメーター視認性が落ちることはなく、スイートスポットは広い。フル液晶メーターだが、上から見下ろしても問題は無い。この辺りはスバルらしい。

ステアリングは先代同様テレスコ/チルトあり。ドラポジはすんなり決まる。

ここで右ハンドルの運転環境をチェック。
スバルAT車はどれもペダルオフセット(左偏移)が存在しており、いつも気になっている箇所ではある。

ステアリングホイールはシートセンターから左に15mmほどオフセット。これはスバル右ハンドル車共通仕様。

ブレーキペダルはステアリングセンターから明確に右側に位置し、アクセルペダルも右に寄せている。
シートセンターからみてもブレーキペダルは少し右に位置している。なかなか良いではないか。

先代レヴォーグのブレーキペダルはステアリングセンターからは僅かに右なのだが、ステアリング位置が左にオフセットしている分、ブレーキペダルはシートセンターからは少し左に位置しており、右脚から遠いのだ。
コレはSGPプラットフォームを採用する現行フォレスターもインプレッサも同様。

つまり、新型レヴォーグのペダル配置は右ハンドルスバルAT車の中で最良の出来のように見える。

シートは本革。
恐らくセンター部分のみ本革でサイドや背面は合成皮革。

センター部分は穴空きのパンチングレザーで柔らか目。レザーシートの割にしっとりと身体に吸い付く感触はなかなか良い。
シートバックも背中全面に接し、肩甲骨周りもキチンとサポートされる。
見た目以上にサイドサポートは良好で、リクライニング角度さえ間違えなければ、全身キッチリサポートされる。

コレはかなり上出来のシートだ。

インパネは三段構成、最上面は硬い成型プラスチック、その下にステッチ入り合成皮革の柔らかいパッドが貼られており、最下層は成型プラスチック。
ドア内張も、手に触れる部分は柔らかい素材かつマットな仕上げで上質。
最近のマツダのような構成だ。

センターには縦長大型ディスプレイが配置され、ココからシフト周りまで光沢黒エナメル仕上げ。ディスプレイのフチが目立たないようにしている。エアコン温度調整ボタンなどはタッチパネルではなく独立したボタンを配置。

エアコン吹き出し口はその左右脇に縦長で配置。運転席や助手席脇の吹き出し口の高さやサイズも適切。

最近のボルボと同様のこのカタチ、私は現時点でベストな配置だと思う。

後席も見てみる。
シートバック角度(トルソ角)は意外に寝かせ気味。座面のサイズはキチンと長めで後退角も適切、ヒール段差(床からの座面高さ)も適切な為、膝裏が浮くこともない。
広さも充分。
サイドサポートは流石に弱いが、一応平板ではないのでOK。キチンと人を座らせて設計した模様。

後席についてはプレミアムDセグメント(3シリーズ、Cクラス)あたりには、シート質感含めて勝る出来。レヴォーグが格下Cセグメントで安価である事を考えると上出来だと思う。

残念なのは後方視界。
リアドアの後ろの窓が小さくなり、ここの視界が先代レヴォーグより悪化している。
先代はピラーが視界に入らないよう、うまい角度だったのだが、今回は特に運転席から見た右後ろはこの窓が無いのも同然で、まるで極太Cピラーがあるかのように視界を遮る。

外装デザインは先代キャリーオーバー。
やり過ぎな位ソックリだ。

今回展示会場に向かう時、遠目に見て三台の新型レヴォーグが展示されてると思ったら、二台は先代レヴォーグだった。
マニア以外新旧区別付かないだろう。

新鮮味は皆無。コレでいいのだろうか。
せっかくエンジン長を短くしたのだから、ハナを短くしてデザインで見せればいいものを。

元々先代レヴォーグもさして新鮮味のないデザインだった。それを踏襲するという事は今後6年、合計13年ほどこの冴えないデザインを引っ張るわけだ。この辺りの不器用なセンスがスバルらしいと言えばそれまでだが。

4.総括

残念ながら新型レヴォーグは発売前で試乗はしてない。

前述した様に外装デザイン以外は新旧で全く別物のクルマである。
そして、構成部品は長年キャリーオーバーしていたモノの根本改変を実施している。

初代レガシィ登場から30年以上経過した。
その古垢を取り去り白紙から設計見直し、つまり初代レガシィ以来の大改変を実施した。
ソレが新型レヴォーグだ。

今後のスバル車はコレらが採用されていくのだろう。

また、CB18エンジンについては最後の新設計水平対向エンジンとしてやれることを全てやった感がある。

ありものの部品で作った感のある(だからダメだと言うつもりはないが)先代レヴォーグとは正反対だ。

一体スバルに何があったのだろうか。

静止検分した感じではドラポジ、シートも良い出来だと思う。

久々に長距離試乗したくなるクルマであった。

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