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劇団競泳水着「月にいるみたい」上演台本

脚本 上野友之

登場人物

田名部 彩夏(あやか)    ホテルの長女
田名部 つかさ         ホテルの次女

高橋 柚美(ゆずみ)     彩夏と莉莎子の友人
高橋 橙美(とうみ)     柚美の姉

細川 莉莎子(りさこ)    彩夏と柚美の友人

遠藤 純(じゅん)     宿泊客/看護学生

なゆ        宿泊客/映画サークル 
鈴木 太郎(たろう)     宿泊客/映画サークル 

桜子(さくらこ)        ホテル従業員 
俊一郎(しゅんいちろう)      ホテル従業員/彩夏の後輩
栞奈(かんな)        ホテルアルバイト/大学生/つかさの友人

田名部 守(まもる)     ホテルのオーナー

1 【1夜目 19時半】

   2020年1月。
   北陸のとある町にあるホテル。
   一階中央はロビー。ロビー下手にフロントデスクがある。
   ロビーは吹き抜けで、二階フロアへ上る階段がある。
   上手前に、玄関や食堂へ続く通路。
   上手奥に、各部屋に通じるドア。
   下手奥に、スタッフルームや通用口へ通じるドア。
   三階フロアからは、湖が一面、見渡せる。
   
   二階フロアのドアから、柚美が出てくる。
   そのまま階段でロビーに降りようとして、踊り場に留まり、景色(湖)を眺める。

柚美 ……

   ロビーに、宿泊客の純が入ってきて、踊り場にいる柚美に気がつく。

純 あ、大丈夫ですか
柚美 はい、たぶん……ご心配おかけしました
純 いえ。風邪ですか?
柚美 (お腹をさすりながら)ちょっと疲れてただけです……蟹、食べたかった
純 正直……美味しかったです、ごめんなさい
柚美 (笑って)だよね。見た目がもう、ね
純 食べられると良いですね
柚美 はい
純 ご旅行ですか
柚美 ……はい。まあ
純 どちらから
柚美 東京です
純 あ、私も。あの、遠藤です(お辞儀)
柚美 高橋です(お辞儀)……学生さん?
純 はい。看護の勉強を

   従業員の桜子が入ってくる。

桜子 (純に)お待たせしました、電気、もうつきましたので
純 ありがとうございます
桜子 申し訳ありませんでした。また何かあれば、言って下さいね
純 はい
桜子 (柚美)あ、大丈夫ですか
柚美 はい。先ほどは、お騒がせしました
桜子 いえ。少しは食べられそうですか
柚美 どうかなあ
桜子 良かったら、蟹雑炊とか
純 え、最高
桜子 お夜食で
純 いいんですか
桜子 是非
純 ありがとうございます。(柚美に)あ、すいません
柚美 いえ。食べちゃおうかなあ

   スタッフルームに、従業員の彩夏がやってくる。
   通用口から俊一郎が来たのに気づき、

彩夏 帰ったんじゃなかったの
俊一郎 仕事は終わりましたが、夜は長いですから
彩夏 は?
俊一郎 ……高橋さま。高橋柚美さま
彩夏 何よ
俊一郎 お付き合いは、長いんですか
彩夏 大学からだから、7、8年? 会ったのは久しぶりだけど
俊一郎 声が、素敵ですね
彩夏 ねえ、ついにお客様に手を出すとか、やめてね?
俊一郎 先輩。言葉がおかしいですよ。手を出す、って、まるで一方的な。自立した人間と人間の間に、相互に、生じるものが恋愛じゃないですか
彩夏 生徒会の後輩全員に手出した奴が恋愛とか言うな
俊一郎 全員ではないですし。ほとんど玉砕しましたし。辛かったな
彩夏 いいから帰って寝て
俊一郎 頼まれたので

   俊一郎、コーラのペットボトルを持っている。

彩夏 どゆこと?

   俊一郎、そのままロビーへ。彩夏もついていく。

俊一郎 (柚美に)お待たせしました
柚美 あ、ありがとうございます
彩夏 柚美、大丈夫なの?
柚美 たぶん。ごめんね
彩夏 まだ気持ち悪い?
柚美 だいぶ良くなった

   俊一郎、柚美にコーラを渡す。

彩夏 おい病人。何飲むのよ
柚美 薬になるんだよ?
彩夏 え?
柚美 外国人は、胃腸炎になると、コーラで治すんだって
彩夏 そんなの聞いたことないよ。外国人って、何人よ
桜子 あ、でも聞いたことありますよ
彩夏 え、嘘でしょ?
桜子 バックパッカーの人が言ってました。海外でお腹壊して、薬も買えないような時は、何とかしてコカ・コーラを見つけるんだって。ペプシとかじゃなく、コカ・コーラじゃないと駄目だそうです
柚美 ほらね
彩夏 だって炭酸だよ? 砂糖も超入ってるし。駄目じゃん
柚美 世の中、不思議なことが多いんだよ
彩夏 何だよそれ。(柚美に)熱は?
柚美 は、そんなに無いかな

   彩夏、柚美のおでこに手を当て、

彩夏 あるし
柚美 熱は平気
彩夏 相変わらず熱出しても働いてるの?
柚美 39度までは出社するかな
彩夏 マジやめた方が良いよそれ

   彩夏、喋りながら、冷えピタを取り出し、柚美に貼る。

柚美 ありがと

   彩夏、貼り終え、柚美のおでこを叩く。

柚美 痛い
彩夏 コーラはやめて、梅肉エキス、舐めときなさい
柚美 バイニクって何の肉?
彩夏 梅干しだよ、梅干し
柚美 えー?
彩夏 胃腸には梅干しが一番効くの
俊一郎 それはそうなんです
純 あ、市場でもたくさん売ってました。梅干し
俊一郎 この辺りは、梅も名産なんです。蟹も、河豚も、鰻も、鯖も美味しいですが、梅干しも是非
柚美 そっか、日本海の潮風が良い仕事しまして的な
彩夏 適当なこと言うなよ
俊一郎 子供の時から、梅干しは毎日、食べさせられました
柚美 (俊一郎に)ご出身、こちらなんですか?
俊一郎 はい
彩夏 高校の後輩
俊一郎 先輩は生徒会長で。僕が書記で
桜子 え、そうだったんですか
俊一郎 そうだよ。恐怖政治
桜子 目に浮かびます
彩夏 おい
柚美 小池百合子的な
彩夏 色々やめとけ
俊一郎 実際は素晴らしい生徒会長でした。問題があると、一つ一つ向き合って
柚美 生徒会長ってそういうもの?
彩夏 私、高校までは真面目だったんだよ
柚美 それはずっとそうじゃん
純 お二人(柚美と彩夏)は……
彩夏 あ、私、大学は東京で。その時の……

   彩夏と柚美、お互いを見て、

柚美 ……友達です

彩夏 (体は1日目のまま)お電話ありがとうございます。ホテル湖畔でございます

橙美の声 もしもし……私、高橋と申しますが

彩夏 ……はい

橙美の声 そちらに、高橋柚美、という者は泊っていますでしょうか?

彩夏 ……(柚美を見る)


2 【2夜目 17時】

   そのまま2日目へ転換。
   フロントデスクに、従業員のつかさと栞奈がいる。

つかさ お父さん、昨日も酔っ払ってさ。寝る前、延々と同じこと言ってた。長曾我部元親って知ってる?
栞奈 なんか、武士?
つかさ 高知の戦国大名。元親が生まれる場所が違ったら、天下を獲ってたって。あと、伊達政宗は生まれてくるのが十年遅かった、って
栞奈 そんなこと言ったら、誰だって生まれる時代と場所は選べないし
つかさ 正論言わないであげて
栞奈 なんでそんな話になったの?
つかさ カップルのお客さん
栞奈 映画の?
つかさ うん。どっちかが、高知の人なんだって
栞奈 そうなんだ
つかさ 長曾我部は、本能寺の変の黒幕説もあるんだって
栞奈 マジ? 大物じゃん
つかさ 「麒麟がくる」にも出てくるかもよ
栞奈 あ、やっと始まるんだよね
つかさ そうそう。とにかく飲み過ぎなんだよね。血圧も高いのに
栞奈 うん
つかさ でもやめないだろうなあ。何と言っても家は酒好きの家系だからね
栞奈 ……うん
つかさ ちょっと、笑うとこですけど
栞奈 いやわかりづらいよ

   橙美と莉莎子がやってくる。

栞奈 いらっしゃいませ……

   つかさと栞奈、橙美たちのただならぬ雰囲気に気がつく。

橙美 先ほどお電話しました高橋と申しますが、田名部さんはいらっしゃいますか?
つかさ はい……私も、田名部です
橙美 え?
つかさ 家族で、経営しておりまして
莉莎子 ……彩夏の妹さんですか?
つかさ はい。姉と、お知り合いですか?
莉莎子 はい……お姉さん、いますか。細川莉莎子と、申します
つかさ ……少々お待ち下さい

   つかさ、スタッフルームへ。
   彩夏がいる。

つかさ お姉ちゃん、お客さん
彩夏 うん
つかさ 高橋さまと、細川さま
彩夏 ……はい

   彩夏、ロビーへ。つかさもついていく。

彩夏 ……お待たせしました
莉莎子 ……久しぶり
彩夏 久しぶりだね
橙美 お電話しました高橋です……高橋柚美の、姉です
彩夏 はい。田名部彩夏です
橙美 突然すみません
彩夏 いえ……お二人とも今日は、東京からいらしたんですか
橙美 はい
彩夏 そうですか……遠い所(お辞儀)
橙美 改めて、確認ですが、柚美は昨日、こちらのホテルに来たんですよね?
彩夏 はい。一泊して行かれました
橙美 昨日来て、泊って、今日、出て行った
彩夏 はい。その通りです……柚美を、探しているんですか?
莉莎子 ……何も聞いてない?
彩夏 どういうこと?
莉莎子 ずっと、音信不通なの
彩夏 ずっとって?
橙美 私の知る限り、丸一か月は、誰も連絡がとれていません。住んでいたアパートにも、少なくとも12月15日以降、帰った形跡が無いんです。年末年始をどこでどう過ごしたかも、全くわかりません
彩夏 ……じゃあどうしてわかったんですか?
橙美 何がですか?
彩夏 柚美が、ここに来たこと

   莉莎子、スマホを見せる。

莉莎子 この写真、ここから撮った湖だよね?

   彩夏、写真を見る。つかさも覗く。
   彩夏とつかさ、窓からの景色と見比べて、

彩夏 ……そうだね
莉莎子 柚美のインスタ。今朝、急にこの写真だけアップされたの
橙美 出て行ったのは何時頃ですか?
彩夏 ……かなり早かったです。7時前
莉莎子 インスタは6時半
彩夏 この写真だけでよくわかったね
莉莎子 ……よく話してたから。ここの話
彩夏 私が?
莉莎子 うん、だから……彩夏に、会いに来たんじゃないかって
彩夏 ……来たね
橙美 前から約束していたんですか?
彩夏 いえ、昨日、急に電話がきて
莉莎子 彩夏に直接かかってきたの?
彩夏 ううん。ホテルの電話
橙美 なんて言って来たんですか?
彩夏 仕事で金沢に来て、早く終わった、って。今から一泊できるか、って
橙美 それで?
彩夏 できるよ、って言ったら、蟹食べたい、って。蟹も河豚も出すよって言ったら、喜んでました
橙美 何か……おかしな様子は無かったですか?
彩夏 ……少し、疲れてはいるみたいでしたけど
橙美 疲れてる?
彩夏 夕食の席で、具合が悪くなって、しばらく横になってました。だから結局、蟹も河豚も、食べられなくて
橙美 そうですか……

   栞奈、スタッフルームへ入る。

彩夏 莉莎子は今も東京?
莉莎子 うん
彩夏 じゃあ会ったりしてたの?
莉莎子 ……時々ね。でも転職してからは、ずっと忙しかったみたいで
彩夏 転職? 柚美が?
莉莎子 それも聞いてない?
彩夏 うん。どこに転職したの?
莉莎子 金融系、だって
彩夏 金融……金沢で、なんの仕事だったのかな
橙美 嘘です
彩夏 え?
橙美 会社もずっと無断欠勤です。もう仕事なんてしてません
彩夏 ……はい
莉莎子 ……柚美と、連絡はとってたの?
彩夏 私がこっちに戻ってからは、ツイッター見るくらい
莉莎子 ツイッターも消えてるよ
彩夏 え
莉莎子 インスタ以外、SNSのアカウントも全部消してる
彩夏 ……気づかなかった

   橙美、スマホの着信に気づき、出て行く。

橙美 もしもし……
莉莎子 ……昨日は、どんな話したの?
彩夏 ……昨日はちょっと、バタバタしてて
莉莎子 バタバタって?
彩夏 ……他にも、お客様はいたから

3 【1夜目 20時】

   ロビーを、宿泊客のなゆが、切羽詰まった様子で駆け抜けていく。
   なゆ、そのままフロントデスクまで行き、桜子に声をかける。

なゆ あの……すみません
桜子 はい
なゆ 本当に申し訳ないんですけど……今から、駅までおくって頂くことは出来ますか?
桜子 今から、ですか?
なゆ はい、帰りたいんです
桜子 どちらまで
なゆ 名古屋です
桜子 (時計を見て)じゃあ、敦賀に9時過ぎには着かないと……今からですと、もう……
なゆ 敦賀まで、車なら30分ですよね?
桜子 いえ、40、50分は……

   なゆが押し問答をしている間に、ロビーを宿泊客の太郎もやってくる。

太郎 なゆちゃん、だから無理だよ、今日は
なゆ (無視)もちろん、今日の宿泊費はそのままお支払しますし
太郎 なゆちゃん
なゆ 送迎代も、別でお支払を……
太郎 (止めようとして)なゆちゃん!
なゆ だから太郎君は泊っていいって! 私が帰ればいいんだから
太郎 そういう問題じゃなくて、無理だ、って言ってるんだよ! ホテルの方だって、迷惑だよ、こんな時間に山道飛ばして、事故ったらどうするんだよ
桜子 それは、大丈夫ですけど……
太郎 だいたいおかしいよ? ここまで来て、蟹と河豚だけ食べて、それで一泊もしないで帰るなんて
なゆ 蟹と河豚は食べたじゃん!
太郎 旅の目的はそこじゃないでしょ! 

   騒ぎを聞きつけた彩夏、柚美、純、俊一郎がフロントの様子を伺う。

太郎 まだ道の駅しか見てないよ? 湖の周りも、展望台も、明日行くんでしょ? せっかく案内もしてくれるって
なゆ わかってるけど、でも……
太郎 百歩譲って、諦めて帰るにしても、今日は無理だよ。泊まって、朝イチで帰ろう?
なゆ それじゃ間に合わないかもしれないの!
太郎 そんなに彼氏に逢いたいの?

   一同は一層、聞き耳を立てる。

なゆ だから、違うって言ってるでしょ……アンハサウェイが死んじゃうかもしれないんだよ……
桜子 えっ
太郎 猫の名前です
桜子 ああ……(アンハサウェイ……)
太郎 前もそう言って、大丈夫だったじゃん
なゆ 今度こそ、危ないかも、って
太郎 だけど……飼い主はなゆちゃんではないでしょ?
なゆ ……何それ、私を臨終に立ち会わせて貰えない愛人みたいに言わないでよ
太郎 そうは言ってないよ
なゆ たしかに、アンは私の猫ではないよ? でも、それなのに、私に一番懐いてくれたんだよ?
太郎 わかるよ……なゆちゃんは、動物にも愛される人だからね……でもおかしいよ、何かあるとアンハサウェイ、アンハサウェイって、まるで猫を人質にとったみたいにさ
なゆ そんな言い方しないでよ……
太郎 だいたい、アンハサウェイ、オスなんでしょ? おかしいよ……
なゆ そういう、独特のセンスがある人なの……メスにはディカプリオってつけてるの
太郎 そんなセンス、俺にはセンスとは思えないよ……おかしいよ……

   なゆと太郎、黙ってしまう。

桜子 ……どうしましょう。もう間に合うかどうか……
なゆ ……やっぱりいいです。ごめんなさい

   なゆ、そのまま出て行く。

太郎 ……!
桜子 ……(太郎に追いかけるよう促す)

   太郎、出て行く。
   聞いていた一同、ロビーに集まる。
   
柚美 あの二人は?
純 映画サークルの学生、って言ってました
柚美 二人で映画撮りに来たの?
彩夏 ううん、なんていうの、映画を撮る場所を探す的な……
俊一郎 ロケハンです。観光協会が、ドラマとか映画の誘致もしてるんです。ここは、全国的な知名度はまだ低いですから
柚美 綺麗な湖があるから、映画の舞台になれば、聖地化しそう
俊一郎 それが理想なんですけど、実際来てくれるのは学生という
柚美 そっか。それで、(太郎たちの関係を推測)彼女の、彼氏は、別にいて
桜子 はい
純 でもあの、太郎くんと、泊まりに来て
桜子 はい、でも、部屋は別々なんです
一同 おお(そうくるか)

   そこに、オーナーの守が出てくる。

守 若さが充満してるねえ
彩夏 あ、お父さん。改めて。柚美です
柚美 どうも
守 どうも、いらっしゃい。東京では彩夏が大変お世話になりました(お辞儀)
柚美 こちらこそ。さっきはごめんなさい。せっかくのお料理
守 いえいえ。少し残してあるから、(お腹)良くなったら
柚美 ありがとうございます
守 ゆっくりしていって下さい
柚美 ……はい

   と、なゆが戻ってきて、無言でロビーを突っ切る。

一同 ……

   太郎も追いかけてくる。

太郎 なゆちゃん
なゆ ごめん、ちょっと、自分の時間が欲しい

   なゆ、部屋に行ってしまう。

太郎 ……

   太郎、手持無沙汰でロビーに佇む。

俊一郎 ……鈴木くん
太郎 ……はい
俊一郎 どんな映画か、決まってるの?
太郎 はい……ロードムービーで
守 お(いいね)
太郎 東京から、一人の女が、この湖を目指してやってきて
守 うんうん
太郎 思い詰めて、薬を飲んで……
守 うん……ん?
太郎 湖面に映る月に導かれるように、身を投げるんです……

   間。

守 ……なるほど
俊一郎 いや、それはちょっとまずくないですか
太郎 え
俊一郎 湖のPRですから……もう少し、明るい話にはならないのかな?
太郎 明るい
守 身体が入れ替わった男女が、この湖にやってきて、世界の神秘を知る、とか、ね
太郎 僕が書くわけではないので
桜子 え
太郎 脚本家は別にいるんです
俊一郎 そうか、じゃあ鈴木くんは……監督?
太郎 いえ
守 あれだ、カメラだね、女優さんを美しく撮る、カメラマン
太郎 違います。録音部です

   間。

桜子 録音部って……(手でマイクの竿を持つ形)こういう人?
太郎 そうですね。もっと、こういう感じ(角度)ですけど
守 ……映画のことはよくわからないけど、ロケハンというのは、録音部と、俳優だけで来るものなのかな
太郎 普通は違いますけど、普通ではない映画を創りたいので
守 志は、素晴らしいね
俊一郎 じゃあ脚本家? の人に、話の内容について、提案してみて貰えないかな   
太郎 僕は会ったことないので、彼女に言って下さい
俊一郎 え?
太郎 彼女の……彼氏ですから。脚本家は

   間。

守 ……若さが、渋滞してるねえ

   俊一郎、太郎の肩を叩く。

守 鈴木くんは、生まれも名古屋なの?
太郎 いえ。実家は高知です
守 高知
太郎 はい
守 じゃあ、長曾我部元親についてはどういう思いなの?
太郎 名前くらいしか知りません
守 そうか……
太郎 上(三階)、上がってもいいですか
彩夏 どうぞ

   太郎、出て行く。俊一郎、後を追う。

守 少し……飲みますか
純 いいんですか
守 是非
彩夏 飲み過ぎないでよ
守 飲み過ぎたことなんかないよ。柚美さんは
彩夏 病気なんだから
柚美 ソフトドリンクなら
守 じゃあ梅酒だ
彩夏 おい
守 身体にいいぞお?
彩夏 それはそうだけど

   一同、食堂へ行く。
   彩夏は残る。
   三階フロアに太郎が上ってくる。

太郎 ……

   一人、外を眺める太郎。
   俊一郎もやってくる。

俊一郎 鈴木くん……気持ちはわかる。痛いほどわかるよ。でもここは、思考を転換させてみるのはどうだろう
太郎 どういう意味ですか
俊一郎 現状、彼女……なゆちゃんには、彼氏がいる
太郎 ……もう別れそうって
俊一郎 うんうん、わかる、わかるよ。別れる、別れそう……だけれども、現時点では、まだ彼氏はいる
太郎 ……はい
俊一郎 つまり太郎くんは現状、浮気相手、と。辛い、辛いよね、辛いけれども……本当に辛いだろうか?
太郎 え?

   一階ロビーになゆが出てくる。
   彩夏、なゆに食堂を示す。

俊一郎 今の君を制約するものは何も無い。例えば君が今夜、このホテル中の女性と合意の上で健全な純粋異性交遊を持っても、君には何ら責められる謂れは無い、なぜなら君には何の肩書きも無いのだから……これ即ち、浮気相手が一番美味しいポジションだ、と考えられないだろうか。一言で言えば、やりたい放題
太郎 ……(何言ってるんだこいつ)
俊一郎 物事は、視点によって全く異なる様相を見せるんだね。あ、柚美さんだけはやめてね
太郎 ああいう女性が好きなんですか
俊一郎 ああいう女性も、好きだね。とにかく君はまだ若い。今の内に
太郎 おいくつですか?
俊一郎 僕? は、25ですけど
太郎 僕は28です
俊一郎 えっ
太郎 大学、入り直してるんで
俊一郎 ……失礼しました

4 【2夜目 18時】

   通路で、橙美が部下に電話をしている。

橙美 それくらい先に確認しておいてよ……衣装合わせまでには何とか帰るから……ねえ、言いにくいことを本人に代わって言うのが、私たちの仕事でしょ……?

   ロビーには、彩夏、つかさ、栞奈と、莉莎子がいる。

莉莎子 その、カップル? はどうなったの?
彩夏 まだいるよ
莉莎子 え?
彩夏 今日は予定通り、二人でロケハン中。そういえば、戻ってこないね

   橙美、ロビーに戻る。
   
橙美 ……それで、柚美は何か、言ってませんでしたか?
彩夏 何か
橙美 何でもいいんです。これから……どうするつもりか、とか
彩夏 ……さあ

   間。

つかさ 今の時代……失踪なんて出来るんでしょうか
莉莎子 え?
つかさ こんな、SNS全盛の時代に
橙美 ……逆に、そこを遮断すれば、誰からも見えなくなります。実際、いなくなる人はたくさんいます。指名手配されたのに、ずっと捕まってない人もいるじゃないですか
莉莎子 柚美を犯罪者みたいに言わないで下さい
橙美 ……
彩夏 ……いなくなった原因は、わかってるんですか?
橙美 このままだと、会社から訴えられる可能性があります
彩夏 え
橙美 お金が、無くなったそうです
彩夏 ……柚美が、盗ったんですか
莉莎子 でもなんの証拠も無いんだよ
橙美 でもその直後に柚美がいなくなった、って
莉莎子 全部嘘かもしれないじゃないですか……あんな会社
彩夏 ……どんな会社?
莉莎子 会社名で検索すると、予測で出てくる言葉が、詐欺とかマルチとか被害とか、そういうのばっかり
橙美 ……お金が消えたのは事実だから
莉莎子 柚美は、会社がおかしいって気づいて、それでお金を持ち出したのかもしれないじゃないですか
橙美 なんの為に
莉莎子 被害者に返すとか、どこかに寄付するとか
橙美 あの子は入社して二年以上経つんですよ? どんな会社かは、とっくに気づいてたはずでしょ? それでも辞めずにい続けたんですよ?
莉莎子 辞めたくても、辞めさせて貰えなかったのかも……だから逃げたのかも……それで柚美は思い詰めて……
橙美 ……やめて

   食堂から純が入ってくる。

純 ご馳走様でした……今夜も最高でした……ずっとここにいたい

   純、その場のただならぬ空気に気づく。

純 ……どうか、したんですか?
彩夏 ……あの、昨日いた、柚美っていう、私の……友達
純 はい、柚美さん
彩夏 どんなお話、したか覚えてますか?
純 え……何だろ……私の、同期のこと聴いて貰ったり……食べ物の話とか……あとは、どこに行きたいか、とか
彩夏 え
純 旅行の話です。これから行くなら、どこがいいか、とか

   間。

橙美 ……それ、教えて頂けませんか?
純 (誰?と思いつつ)……あったかくなったら、っていう話ですけど……国内なら、九州、特に熊本の馬刺し、鹿児島、奄美……あと北海道、メロン……意外と、静岡とか穴場かもね、とか……海外なら、東南アジアの……マレーシア、フィリピン、南米のメキシコ、のタコス、ペルー、あとオーストラリアもニュージ―ランドも、ワニの肉? そして地中海、モロッコ……(国を言い続ける)
橙美 (遮って)結局、どこなんですか?
純 え?
橙美 行きたいとこ、多すぎでしょ。バックパッカーじゃないんだから。もう少し絞れませんか
純 すいません……
彩夏 ごめんなさい、ありがとうございました
純 いえ……

   純、部屋に入る。

彩夏 東京に戻っている可能性はないんでしょうか
橙美 ……何もわかりません
つかさ ……まだこの近くにいるとか

   間。

彩夏 ……近くで何してるの
つかさ ……さあ
莉莎子 ……これから、どうしますか?
栞奈 (窓の外を見て)雪

   一同、窓の外を見る。

彩夏 これだと、駅まで行くのも大変ですし……今日はお泊りになりませんか?
莉莎子 ……いいの?
彩夏 うん。もう遅いし
橙美 ……昨日、柚美が泊った部屋は、空いてますか?
彩夏 ……はい
橙美 その部屋を、お借りできますか
彩夏 ……かしこまりました。(栞奈に)201号室
栞奈 はい。どうぞ

   栞奈、鍵を持ち、橙美を二階へ誘導する。
   つかさは彩夏の指示で、莉莎子を一階の客室へ誘導する。

彩夏 莉莎子、後で少しいい?
莉莎子 うん……

   彩夏、フロントに一人きりとなる。

5 【1夜目 夜】  

   食堂から、柚美、純、なゆ、桜子、守が出てくる。

彩夏 柚美、結局飲んだの
柚美 梅酒美味しい
守 飲んで頂いたんだよ
彩夏 大丈夫?
柚美 快復しました
守 飲んで頂いたんです
なゆ あの……お騒がせしてすみませんでした
彩夏 いいえ
なゆ 太郎君は……
彩夏 上じゃないかな
なゆ ありがとうございます

   なゆ、出て行く。

守 (見送り)想いをぶつけ合うことは大切だよ……大切なのは、想いをぶつけ合うことだ……俺の友達にね、酔っ払うと、何回も同じことを言う奴がいたんですよ……そいつは酔っ払うとね、何回も同じことを言う友達だったんだけどね……
彩夏 お父さん。今夜も綺麗なループが完成してるよ。帰るよ
柚美 家、ここじゃないの?
彩夏 隣の建物。連れてくわ。また後で
柚美 うん

   彩夏、守を連れて通用口へ。

彩夏 ……あの子、何しに来たか、わからないの……これから、どうするつもりなのかも
守 ……人が考えてることはわからんよ
彩夏 え
守 時が来たら、あとは本人が好きなようにするさ
彩夏 好きにするって……それ、つかさにも同じこと言えた?
守 ……(酔いが醒めて歩き出す)家族と友達は違うだろ
彩夏 ……うん

   彩夏と守、出て行く。
   桜子、スタッフルームへ。

桜子 ……(二人の話を聴いていた様子)

   純が部屋に行く。

柚美 ……

   三階には太郎がいる。なゆも上がってくる。

なゆ ……さっき、連絡がきて、落ち着いた、って
太郎 そうか……ひとまず良かったね……
なゆ うん、ごめんね……
太郎 俺も、言い過ぎたよ、ごめん
なゆ ……色々曖昧にしたまま、太郎くんの気持ちを利用して、ここまで来たのがいけないんだと思ってる
太郎 ……俺も、強引だったのはわかってるよ
なゆ でも、太郎くんのこと、尊敬する気持ちは本当だよ?
太郎 ありがとう。俺も、初めてなゆちゃんの芝居をヘッドフォン越しに聴いた時、録音部になって良かった、と思ったよ
なゆ うん……「鈴木太郎」っていう名前だって、太郎くん自分では「平凡平凡」て言うけど、私はそう思わないし、それに私は、日本中に何百万人も? 何千万人もいる「鈴木太郎」さんの中で、この、鈴木太郎くんが、一番好きだって言う自信あるよ?
太郎 うん……
なゆ 明日じっくり、ロケハンしよ?
太郎 そうしよう
なゆ おやすみ
太郎 おやすみ

   ロビーには、柚美と二人きりなのを確認するように俊一郎が来ている。

俊一郎 こんばんは
柚美 こんばんは
俊一郎 美味しいですか
柚美 うん
俊一郎 ありがとうございます……柚美さん
柚美 はい
俊一郎 柚美さん、て呼んでいいですか
柚美 (笑って)どうぞ
俊一郎 ここからは、僕たちだけの、秘密の提案なんですけど
柚美 はい
俊一郎 実は小さな船がありまして。実は僕は船舶免許を持っているんです
柚美 うん
俊一郎 だから、今から、二人で船を浮かべて、湖から月を眺めることもできるんです。内緒で、ですけど
柚美 内緒で
俊一郎 内緒で……船、月、湖、そして僕たち二人。それだけです。余計な物は何もありません
柚美 ……夢みたいだね
俊一郎 夢みたいです
柚美 そうやっていつも口説いてるの?
俊一郎 ……いつも、じゃないです。特別な夜にだけ
柚美 彩夏は口説かないの?
俊一郎 ……今でも先輩、後輩ですから。当時から厳しくて
柚美 想像つく
俊一郎 はい
柚美 お誘いは有り難いのですが、寒そうだし、明日も早いし、いつかまた、体調が良い時に
俊一郎 明日早いんですか
柚美 そうなんです
俊一郎 そうでしたか……では、またの機会に
柚美 うん
俊一郎 あの、宜しければLINEを……
柚美 アカウント、間違って消しちゃって
俊一郎 え?
柚美 何回かパスワード間違えたら、ロックされちゃって
俊一郎 そうですか……

   純が入ってくる。

俊一郎 ……それでは、また
柚美 はい。お疲れ様でした

   俊一郎、スタッフルームへ。
   桜子がいる。

俊一郎 俺、今夜はフリーだぞ?
桜子 いつもでしょ。早く帰って寝て下さい
俊一郎 ……寝る前にカリオストロ観るわ
桜子 ご自由に

   俊一郎、出ていく。

純 ……いいですね
柚美 何が?
純 こんな風に、地元まで会いに来れる友達。私にはそんな友達、いないな
柚美 ……
純 本当は、同期の子と来るはずだったんです。旅行
柚美 うん
純 でも直前に、喧嘩って言うか、ちょっと気まずい感じになっちゃって
柚美 うん
純 なんかでも、キャンセルするのももったいなくて、来ちゃいました
柚美 うん
純 すぐ、気まずくなっちゃうんですよね、人と。だから友達いないんですよね
柚美 その同期の子は、友達じゃないの?
純 ……私は、友達だと思ってますけど
柚美 じゃあ友達、いるじゃん
純 ……はい
柚美 今はいいけど、友達の前で「友達いない」って言っちゃ駄目だよ
純 はい……わかりました
柚美 ……私も昔、友達と距離ができちゃって、一ヶ月くらい連絡してなかったの
純 はい
柚美 寂しくて。ある日、信じられないくらい美味しい塩ラーメン食べたの。それで何も言わずに友達に写真だけLINEしたの。それから何となく復活して今に至る
純 写真か
柚美 写真だよ
純 喧嘩の原因は何だったんですか?
柚美 私がというよりは……友達と、もう一人の友達が、ちょっとね
純 ……なるほど
柚美 蟹の写真、送ってあげたら
純 え、余計に気まずくならないかな
柚美 大丈夫だよ

   純、友達に写真をLINEする。

純 わ、即既読つきました
柚美 良かったじゃん

   間。

純 え、そして完全に既読スルーなんですけど
柚美 ……大丈夫だよ
純 大丈夫じゃないですよー

   彩夏が戻ってくる。

彩夏 まだ飲んでるの
柚美 うん
彩夏 ごめんね。慌ただしく
柚美 ううん。たっぷり、若者の恋バナも聞けたし。ね
純 はい。あれが恋バナかは謎ですけど。わ。電話きた
柚美 出なよ
純 え、え、すいません……もしもし……うん、蟹……ごめん、蟹……ううん、蟹……

   純、電話をしながら、部屋へ去る。

彩夏 ……恋ねえ、したいわ
柚美 彼氏、いないの?
彩夏 彼氏という概念自体、喪失してる
柚美 マジか
彩夏 柚美は?
柚美 ちょっとゴチャゴチャしてたけど、落ち着いた
彩夏 何それ、教えてよ
柚美 私の話はいいよ
彩夏 秘密主義
柚美 あんまり綺麗な話じゃないもん
彩夏 私だって、綺麗な恋愛なんてほとんどしたことないよ……知ってるでしょ

   間。

柚美 莉莎子さ
彩夏 ……うん
柚美 別れたってよ
彩夏 ……そうか
柚美 ……この話はやめとく?
彩夏 別に、もういいよ。私にとっては何億光年も昔の話だよ……莉莎子は、元気なの?
柚美 最近は、私も会ってないけど……(彩夏に)謝りたい、って言ってた
彩夏 ……莉莎子に謝られても……悪いのは、あの男じゃんね
柚美 そうだけど
彩夏 しかも、知り合ったのは莉莎子の方が先だったんだからさ。本来、最初から莉莎子と付き合うべきだったのかもよ。そこに私が横入りしちゃってさ
柚美 そんなことないよ……彩夏さ、怒るべき時は、ちゃんと怒った方が良いよ
彩夏 ……誰の為に? 莉莎子の為に?
柚美 違うよ。自分の為に
彩夏 柚美
柚美 うん
彩夏 まさかだけど、この話しに来たわけじゃないよね?
柚美 (笑って)……違うよ

   柚美、立ち上がって、窓の外を見る。酔っている様子。

柚美 一回、この景色を見たかったの。彩夏が見て育った、この美しい景色を
彩夏 何それ
柚美 そりゃ毎日この湖を見て育ったら、心の美しい人間になるよ
彩夏 は? 真っ黒ですけど
柚美 美しいよ。彩夏は美しい人だよ
彩夏 ……柚美もそうでしょ
柚美 私は……美しくなくなっちゃった
彩夏 ……出た、自分ネガキャン。やめなさい
柚美 はい……お父さん、もっと怖い人想像してた。めちゃ優しいじゃん
彩夏 丸くなったの……そうさせたのは私たち
柚美 え?
彩夏 散々心配かけたからさ。二人とも、すぐに東京から帰ってきて。妹は、あんなことになったし
柚美 ……あんなこと?
彩夏 知らない?
柚美 うん
彩夏 じゃあいいや
柚美 うん……彩夏
彩夏 何
柚美 お願いがあるんだけど
彩夏 うん
柚美 二万円、貸してくれない?
彩夏 ……何、その微妙な刻み方
柚美 え?
彩夏 普通、そういう時って、一万円、三万円、五万円、十万円、じゃない?
柚美 ……そんなことないでしょ

   桜子がロビーに入ってくる。

桜子 彩夏さん。換気扇、やっぱり見て貰った方が良いかもです
彩夏 わかった。ありがと……(柚美に)見てくる
柚美 うん

   彩夏、出て行く。

桜子 ……お邪魔でしたか?
柚美 いえ。桜子さんもここ、長いんですか?
桜子 私も最初は、お客として泊まりに来たんです
柚美 そうなんだ。どうして、ここで働こうと思ったんですか
桜子 どうしてかなあ……(湖を見て)暖かくなると、カヤックも気持ちいいんですよ
柚美 楽しそう
桜子 楽しいです……あとは、自分が、嫌いじゃないと思ったのかな
柚美 え?
桜子 私、学校が苦手でほとんど行けなかったし、仕事も全然続かなくて。だけどここに何日か泊まった時に、あれ、私、ここにいる自分は嫌いじゃないな、と思ったんですよね
柚美 いい所ですもんね
桜子 はい……それなのに、何年かに一度、いるそうです
柚美 何が?
桜子 湖に、飛び込んじゃう人

   間。

柚美 じゃあ……そういう映画創っても、嘘じゃないんだ
桜子 そうですね。観たくはないけど
柚美 うん
桜子 柚美さんは?
柚美 はい?
桜子 どうしてここに、来たんですか?


6 【2夜目 深夜】

   三階で話す彩夏と莉莎子。

莉莎子 お金……貸したの?
彩夏 うん
莉莎子 もしかして……気づいてたの? (柚美が)おかしい、って
彩夏 ……
莉莎子 でも、止めなかったの?
彩夏 ……わからないじゃん、人の気持ちは
莉莎子 は?
彩夏 柚美はもう、誰とも会いたくないのかもしれないじゃん
莉莎子 でもここに、彩夏に会いに、来たじゃん……!

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