見出し画像

「IN HER THIRTIES 2021」と創作の不思議④

先日の続き。

④人生常に後ろを見がち後悔し続けマンだったこと

性別を抜きにして考えると、自分も39歳、まもなく40歳、「THIRTIES」の当事者。

改めて自分の30代の十年間を振り返るとため息ばかりだったのですが、元々プロフィールに「特技は一喜一憂と後悔」と書いてあるほど、日々過去を振り返ってはくよくよしている。

昔のノートを読み返してみて笑ったのが、20代前半の時点で自分年表を作り、10代から一年毎の出来事を書いては「あれが駄目だった、ここが駄目だった」と後悔してて、「もう少し自分に優しくしなよ……」と思ってしまったくらい。

普通は、後悔することは良くないこととされているし、そんな時間があったら今できることをやれ、暇だから余計なことを考えるんだ、というのもその通りだと思いますが、
こと創作においては、そういう性格もいきてくるのかな、と言うか、そもそも「○代の十年間を振り返る」というインハーの企画自体、後ろ向きな人間でないと思いつかない可能性もあり。

自分がどういう人生を過ごしどういう後悔をしてきたか、という具体とは別に、くよくよした性格であること自体が、少なくともこの作品ではプラスに働いてきたのかな、とも思うのです。

さて今回、作家として何か「語った」としたら、それはクライマックス、
ある人物との一夜の回想(&夢)と、ある人物との再会への葛藤を、
過去・現在・未来を交錯させながらひと繋ぎに語ったシークエンスに尽きます。

「IN HER TWENTIES」の台詞に
《人生で本当に大切な人の数は決まってる》
というのがあって、十年前に何気なく書いた台詞だったのですが、以降この言葉が不思議なほどに頭から離れず、人生の節目節目で思い出し、ある意味では縛られてさえきました。

そして上野が愚かなだけかもしれないけれど、誰かが「大切な人」だと気づくのは、その人が居なくなってしまった後だったりするわけで、自分にも、もう会えない人と、もう会わないと決めた人が、一人ずついます。

人生、出会う人には出会ってしまうし、会えない人とは会えない。

そういうシンプルなことを言い足したくなったのがあの場面で、結論めいたメッセージも《一つ一つの出会いを大切にしよう》という、どストレート過ぎる台詞。
自分を前に出す劇団競泳水着の作品では、ここまでセンチメンタル全開には出来ないけれど(気持ち悪くなりそう)、「彼女」たちの身体を借りて思い切り解き放ったセンチメンタルが、今回は真っ直ぐに受け取って貰えたのかな、とも思います。

更にラスト、39歳が30歳に最後にかける
《私、貴女も、今の私も、好きだから》
という台詞も、自分だったらとても過去の自分には言えない言葉だけど、「彼女」には自分の過去も現在も肯定して欲しかった気がします。

と、他にも書きたいことがあったはずが、まさかの大晦日になってしまったので終わりにしますが、とにかく今回の「IN HER THIRTIES 2021」で、30代最後に思わぬご褒美を頂き、更に来年、40代になって最初にやる作品が「IN HER FORTIES」@福岡。
自分の思惑を超えてインハーシリーズからは色々な物を授かっているわけで。

前回、「20代後半〜30代前半の自分が好きではなく、当時のことをあまり思い出したくなかった」と書いて、その気持ちは今もあまり変わらないのですが、少なくともインハーを思いつき上演した、というその実績に対してだけは、当時の自分に御礼を言っても良いのかも、という気持ちになりました。

そして自分のぐずぐずの集積が巡り巡って、俳優の身体とスタッフワークを通じて観客にも(たぶん)届いたこと、改めて創作とか表現の不思議さを感じてます。

とにもかくにも榊さん、そして関係各位、本当にありがとうございました。
会える人はこれからも会いましょう。

お疲れ様でした!良いお年を。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?