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ヨーロピアン 2023感想

 去年の11月から現在までの間にオーストラリア、韓国、ロサンゼルス、パリで計6大会に出場した。こんなペースで出場したのは初めてだ。普段あまり練習していないノーギは付け焼き刃で準備不足否めなかった。それにドウギもノーギの練習に時間を割いた結果いつもと比べると戦略がなぁなぁになり「まぁなんとかなるっしょ。」みたいなラフなノリで出場した。試合の間隔が開くほど緊張感が増す。逆に試合の間隔が詰まれば詰まるほど緊張感が薄まる。前者、後者勝つためにはどちらが良いのかというと別にどっちが良いとも思わない。緊張感が高いからと言って勝率が上がる感覚はなく緊張感が薄まっているからと言って勝率が下がる感覚もない。ただ緊張感が薄まり過ぎると新鮮味がなく面白さに欠ける。だから間隔は短くても2ヶ月に1大会くらいのペースが理想なように感じる。だから今回は流石にペースが早過ぎた。今回のヨーロピアンは過去最高に緊張していなかった。自然と、というよりは意図して緊張から逃げていた。普段はある程度大会参加者が出揃うと強豪選手の試合動画は一通り目を通してある程度対策を練る。しかし今回は対戦相手一人一人としっかり向き合うのが苦痛で誰の映像も観ることが出来なかった。今回は勝ちに拘るという意識は二の次にしていかに大会を楽しんでやり過ごすか、に意識があった。よって普段の練習においてもそういう意識が強まった。平日の12時半はいつも選手が集まって7分6本くらいのスパーリングをする。そしてそれがはじまる前に約1時間、技の研究や反復練習(ドリル)をしている。しかしヨーロピアン 前の練習ではドリルをするのが嫌になってしまい殆どしなくなっていた。その代わりにスパーリングの前に好きな選手の試合や技術動画をサクっと見て「今日はこういう動きを意識してやろう。」みたいなザックリした目的意識で取り組んだ。細かいところまで詰めて考えることを今まで重要視してきた。しかし今回はそれをするのが苦しかった。好きでやっていた詰めて考える作業が気づけば勝つためにやるべき義務になっていた。だから久々にラフな目的意識で練習すると気軽で楽しかった。成長速度MAXを叩き出すことに拘るならラフな目的意識で取り組むのは良くないことだろう。昔の自分が今回の取り組みを観たら柔術家として軽蔑するかもしれない。最近丸くなったと言われることが多い。自分でそれを意識したことはなかったけど振り返ると昔の自分は今の自分と比べて柔術に厳しかった。自分の物差しだけで他人を計り最善を尽くせていないと思った選手を軽蔑していた。今はそれぞれの最善がありそれぞれが頑張ってると思っている。そういう考えになってから自然と殆どの人に対して敬意を持てるようになった。
 今回技に対する向上心が希薄になった代わりにフィジカルやムーブメントに対しての意識は高まった。今まで技術に対する拘りが強かった分その辺がないがしろにされがちだった。週に2回専門家に勧めらたトレーニングメニューをこなした。本格的にそれをするようになって半年程度だがそれなりに効果を実感している。それとレスリングも取り組むようになった。大きく変化していかないとすぐに化石となってしまう。まだまだ第一線でゲームを楽しみたい。だから苦手なことに取り組んでいかないといけないと思った。尊敬するプロ格闘ゲーマーの梅原選手が言っていた「ベテランは経験で身体的な衰えをカバーするみたいな固定観念に縛られて進化を怠ってしまう」みたいなことをよく覚えている。
 今回のヨーロピアンは3位という結果で幕を閉じた。やはり練習は嘘をつかない。日々の練習の成果がしっかり試合に現れた。今回緊張感が希薄だと言ったがトップ選手との試合では自然と緊張感が生まれた。一つのミスが命取りになるからだ。去年の世界大会を終えてから戦う階級を一階級上げた。半年間継続しているフィジカルトレーニングによって筋力は向上しているもののまだ今の階級のトップ選手と比べると体が弱いと感じた。今大会の二試合とも体力的に苦しい試合だった。試合中何度も諦めかけた。試合は相手との勝負だけど弱い自分との勝負でもある。途中で試合を投げるような自分は嫌だから疲れ過ぎて吐きそうな中最後まで諦めずに戦った。勝敗はどうあれそうやってやり切れたなら後悔は残らない。
 より良い選手になるために取り組むべき課題が山のようにある。現在29歳。この競技を始めて約13年が経った。いつまで第一線で戦えるのかわかないが残り時間が短くなっていることは間違いない。趣味の一つとしてはじめた柔術。「柔術に全てを賭けてきた」みたいなカッコいい発言が出来るような日々を送ってきた訳ではない。世界一を目指してるけど何が何でも一番になりたい訳ではない。世界一を目指すのは目指すこと自体が楽しいからに過ぎない。真の価値は結果ではなく過程にこそあると思っている。世の中結果に拘りすぎて不幸になってる人が多い気がする。肩肘張らず楽しみながら取り組んでもこれくらいにはなれるよってことを身を持って見せていきたい。勝ち負けの結果に関わらず挑戦すること自体が娯楽だし価値があるということを伝えたい。あとそもそも試合なんてしなくても日々楽しいならそれで良い。

サポート多いと外食しがち。ご馳走さまです!