酉の市002

十一月は酉の市

 十一月は酉の市(とりのいち)。そう言われても、いまいちピンと来ない方のが多いと思います。
 関東の行事、特に東京の行事なのですが、その東京でも誰もが知るお祭りという訳ではありません。

酉の市について

 では、酉の市って何?と言う事なのですが、簡単に言うと。
 毎年十一月の酉の日に、特定の神社仏閣で、熊手を売る市が立つ、そんな行事です。

 酉の日、これは十二支ですね。日にも十二支があります。今年は11日(金)が一の酉、23日(水)が二の酉です。十二支なので十二日に一度、多いときは三の酉まであります。
 場所によりますが、基本的に0:00~23:59までが酉の市の開催時間となります。

 特定の神社仏閣、あくまで「基本的に」ですが、酉の市は鷲神社、大鳥神社、大酉神社など日本武尊、あるいは鷲大明神を祀る神社、通称酉の寺と呼ばれる妙見菩薩を祀る仏閣で開かれます。
 ウチの近くでは八幡神社だけどやってるよ、なんて言う方は、境内を隈なく散策してみて下さい。十中八九「鷲神社」「大鳥神社」「大酉神社」などの神社が合祀されていたり、末社として祀られていたり、あるいは末社に複数の神社と合祀されていたりします。
 新宿の花園稲荷神社なども、御本殿を良く見ると「大鳥神社」という額が掛かっています。

 そして、熊手を売る市が立つ。これがメインイベントですが、福を掻き込む熊手が縁起物として販売されます。価格帯は500円ほどから青天井!と言うのは冗談ですが、上を見れば十万二十万百万と、キリが無いのが熊手です。

鷲神社・長國寺へ

 さて、そんな酉の市なのですが、例年行っている場所があります。
 浅草…から歩いて行くので、ついつい浅草と言っていまうのですが、台東区千束(せんぞく)にある鷲神社(おおとりじんじゃ)と長國寺(ちょうこくじ)に行って来ました。
 双方のURLを良くご覧ください。鷲神社は「http://www.otorisama.or.jp/」、長國寺は「http://otorisama.jp/」どちらもお酉様アピールがハンパないです。

 鷲神社と長國寺は通り一本隔てたお隣さん同士。普段はどちらも閑散としているのですが、酉の市の日だけは熊手を商う市が、所狭しと軒を連ねています。

 鷲神社の入口左右には神職の方が一段高い所に構え、祓串を延々と左右にバッサバッサと振っていらっしゃいます。参拝の人は、ここを通ると自動的にお祓いをされると言う、非常に便利なシステムとなっております。
 参拝への道の左右には熊手、熊手、熊手…。

 熊手を眺めている間に列が進み、参拝。
 参拝を終えた後で、社務所で授与している熊手を頂きました。初穂料は1,000円、色々と付くと3,500円までと種類がいくつかあり、美男美女が授けて下さいます(笑)。

 そこからテクテクあるいて長國寺へ行き、こちらでも参拝。
 熊手を売る市の雰囲気は変わらないのに、御線香の香りが漂い、読経の声が聴こえる、やはりお寺さんなのだなぁ、と。こちらでも寺務所で熊手の授与をしています。
 また、種々の物を授与する場所の横に、一人の御坊様がお座りになっている場所があるのですが、そこは「善星皆来 悪星退散 諸願成就 一切無障碍」の言葉と共に、御仏籤(おみくじ)を引いて下さる場所です。

熊手の市

 それにしても、人で賑やかなこと。

 熊手を売る市を歩いていると、良く手打ちの音が聴こえて来ます。
 「家内安全、商売繁盛!ヨォーッ!」と掛け声を掛けてから、三々七拍子で締めます。

 そういえば、参拝を待つ列で「あれ、やってもらったこと無いのよ」という声が聴こえたなぁ。。。
 実は、買ったら手打ちをして貰える訳ではないのです。

 商談。「この熊手はお幾ら?」「こちら5,000円です」「あら~、ちょっと負けてくれない?」「へぇ、じゃあ4,000円でいかがでしょう」「まぁ!買います!」。
 この商談が成立してこその手打ちなのです。
 でも、本当は、それでで終りじゃないんです。
 「はい、じゃ4,000円ね。あと、これ、少ないけれど温かい物でも食べて下さいな。」と負けてもらった分の1,000円をご祝儀として渡します。

 江戸の粋ってヤツです。
 負けた方は、本来の額を満額手に入れたので良し、勝った方は、満額払っているのですが、負けてもらった上にオマケを付けてあげた、気風の良い気分になれる、これが不思議なシステムなのですが、そういう物なのです。

買って来た熊手

 僕は、毎年そこまでの物を購入しないので、駆け引きはしません。
 例年「増田屋 よ古山」との札が掛かっているお店で熊手を購入します。

 この熊手、本来ならば年々大きくして行くものなのです。
 しかし、今年は色々と新しいコトを始めたため、心機一転新しくしたいなーと。できれば桝形がイイなーと。

 お店のお兄さんに事情を話してご相談した所、小さな熊手とそれより少し大きめの熊手を紹介してくれました。大きい方にも心が揺れ動いたのですが…

「いや、やっぱり欲をかいちゃいけませんよね。小さい方で…この子とか」
「こちらで。あ、これ家内安全ですね。」
「ありゃ本当だ。家内安全じゃなくて…こっちの、開運招福にしましょ。」
「はい!こちらで!あ、これでしたら両手挙げてますから、お金も人も呼んでくれますね!」
「あ、本当だー!って…いや、欲をかいちゃいけないとか言いながら、隠し切れない欲が出ちゃうのねー。」

 とお互いに笑い合って買って来たのが、「うちの子、本当に良く働いてくれるんで!」とお兄さんのお墨付きを頂いて来た、こちらの子。

 横幅5㎝、高さ9㎝の小ぶりな子です。
 これから一年、宜しくお願いします。

「それではまた来年、良い御年を!」

 酉の市で熊手を買った後は、こんな感じでお別れです。

オマケ

 最後までお読み頂きありがとうございます。
 最後に、鷲神社・長國寺のオマケ情報です。

 今日は午前中に行ったのと、雨で人が少なかったこともあり、鷲神社から参拝をしました。

 しかし、鷲神社、午前中に行ってもそれなりに行列ができており、夜ともなると参拝までに一時間、二時間待ちの某テーマパークのアトラクション並に待たされることになります。
 ところがですね、長國寺は人がほぼ並ばないのです。

 長國寺の入口前にも鷲神社への参拝をするための行列が出来ているのですが「ちょっと済みません」と行列を突っ切ってお寺に入ると、人が一気に減ります。
 そこから真っ直ぐ進んで、妙見さんのお参りを済ませ、右手に歩いて行けば、すぐ鷲神社です。境内の行き来は自由に出来ますので、熊手の市を見るには丁度良いです。
 行列には並ばないので、鷲神社への参拝はちゃんと出来ませんが、並ぶのはちょっと…と言う方にオススメです。

更なるオマケ

 買って来た熊手って…桝形?これ熊手?と思った方もいらっしゃるやも知れません。
 実は、熊手の形をした、小さい熊手と言うのもあるのです。
 あるのですが、僕は基本的には桝形を買うようにしています。今回は桝形ではなくて竹ですが、要は安定性の良い熊手です。

 今から何年も前の話です。
 その当時は、いわゆる熊手の形をした熊手を部屋に飾っていたのですが、その年の大晦日、王子の狐行列に行き、狐面を買って来て、熊手の隣に置いたんですね。
 そうしたら、熊手が狐面を巻き込んで倒れたんです。直しても倒れる、直しても倒れる、同じ方向に倒れるならと、反対に置いても倒れる。
 いったんおさまったので、お風呂に入って部屋に戻った途端に、巻き込んで倒れる!

 どーしても隣に居て欲しくないらしく、遠くに離したら倒れなくなりました。
 しかし、なんて安定性の悪い物なのかと思いまして、その次の年から桝形を買う様になったのです(笑)。

行った日:2016年11月11日

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