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穴馬ギャンブラーともよ 第7話「世界最強馬より怖い敵 #天皇賞秋 予想」

展望

 ロンジンのレーティングを参照とするなら、2023年現在の世界最強馬はイクイノックスになります。先日のチャンピオンステークスやQE2世Sの結果を踏まえても、現世界2位のAce impactには及ばないと思いますし、2位タイのMostahdafはこのレースを回避しましたから。

 残っているビッグレースは、天皇賞秋を除けばブリーダーズCとジャパンCになります。BCはウシュバテソーロやAuguste Rodin、Mostahdaf次第ではありますが、既にリバティアイランドとタイトルホルダーが参戦を予定しており、ドウデュースやイクイノックスも参戦するJCの方が、高レーティングを叩き出しやすいとは思います。

 早速本題ですが、天皇賞秋はイクイノックスを倒すレースではありません。そもそも倒すレベルに到達している馬が1〜2頭しか居ませんから。イクイノックスを含む全ての馬が相手をしなくてはいけない馬が1頭だけ居ます。

そうですね、逃げ馬です。

 大方ジャックドールが逃げると思います。ジャックドール自身、逃げて大阪杯を勝っているように10F路線では非常に強力な逃げ馬です。流石にノースブリッジが逃げるとなると、奇策以外の何物でも無い訳ですが、そこは競馬という関係上に気するだけ無駄なので、前者に関して分析します。

ジャックドールは10F単位で1F辺り11.7秒、内5F間を11.4秒で走破する事ができます。抜群のスピード能力と持続性能があり、いきなりのマイルGⅠでも結果を残しています。スタートが速いというのは0→1の加速が問われる瞬発力があるという事なので、転化すればスローペースの上がり勝負でも、昨年の天皇賞秋のようにそこそこの脚は使えます。

 安田記念前に下記ポストのツリーにて、理想値を1:31.5と設定しましたが、実際は1:31.7(上がり3F34.0)でした。ジャックドールは分かりやすく数字通りに走ってくれるので、個別のラップタイムを分析すれば誰でもここまで読む事ができます。皆さんもぜひ


 先週の富士Sの馬場と同程度とするなら、ジャックドールが単騎逃げした際の走破タイムは、恐らく1:56.6〜1:57.0ぐらいになるかなと思われます。

1:56.6で走破した際のラップは
12.4-11.0-12.0-12.0-11.4-11.5-11.4-11.1-11.4-12.4(58.8-57.8)3F34.9

1:57.0で走破した際のラップは12.4-11.0-12.0-12.0-11.5-11.7-11.5-11.1-11.4-12.4(58.9-58.1)3F34.9

 こういう感じになると思われます。実際にはもう少し前傾でも走れるとは思いますが、ジャックドールという馬は、10F戦なら3〜4F区間の2Fで息を入れる必要があります。そして最も大事なのは太字の部分。

800〜1800m区間に当たる部分です。ジャックドールが速いのがこの区間で、56.8〜57.2秒で走破できると思っています。同区間を分析すると、2023年大阪杯は57.4秒2022年金鯱賞と白富士Sは57.3秒で走破しています。

 お察しの通り、ジャックドールは、ゴール200m手前で勝負を決めるタイプの逃げを打つ馬です。現代日本競馬では、普通に重賞クラスのスパートに感じる速度を追走する経験が乏しいです。2000mのレースで前傾ラップになるのは重賞や条件戦も含めて少数派ですし、ヨーイドンばかりのレースになっているのが散見されます。

 結果、ジャックドール自身は少しではありますが後傾ラップを刻んでいるのにもかかわらず、誰も差せないという図式が完成する訳です。ジャックドールのスピードで追走すると、今まで繰り出していた末脚も繰り出せなくなります。

 ジャックドールを差すには主に3つの要素が必要です。余力、追走力、末脚の強さです。余力は菊花賞の時に述べましたが、他馬より速く走る事ができる距離です。この余力を確保(セーブ)するのが追走力です。余力を使って出せる速さが末脚の強さです。

 追走力に関しては、ジャックドールが1000m地点を58.9秒で通過する場合、何馬身まで許されるか、というのが鍵です。1:56.5で走破するなら、前半1000mは60.7〜8秒ぐらいがギリギリでしょう。前半を61秒で入れば、後半1000mを55.5秒で走る訳ですから。そこら辺の千直より速いです。

 イーブンペースで走るなら58〜59秒台の入りは必須です。そもそも1分56秒台で走破するなら、60秒台で入って56秒台で上がる末脚や、58秒のイーブンペースを刻む追走力が無いと戦える土俵にありません。

 追走力に関しては簡単な目安があります。施行される距離より短い距離の好走です。ジャックドールが初マイルでいきなり安田記念に出走し好走しましたが、要は2000mならマイルや1800mでの好走があれば良いです。単純な話ペースが2000mより速いので。厳密に言えば追走にも色々種類はある訳ですが、まああると呼べる馬も4頭ぐらいしか居ないですし、これに関しては後述します。

長くなったのでまとめると、
①ジャックドールより速く走れる距離が長いか
②ジャックドールに付いて行って問題無いか
③与えられたリード分を埋める末脚を持つか

これが差す上で必要なものになります。これを踏まえた上で、今回は穴馬含め4頭のみに厳選します。ハッキリ言うと、ジャックドールが理想値1:56.6で走破した場合、これを差せるのはその4頭しか居ないと読んでいるからです。

ではいきます。



イクイノックス

名実共に現役最強馬です。説明不要でしょう。

 今更語る必要もありませんが、イクイノックスの強みはその圧倒的な余力にあります。今年のドバイSCなんてその典型例です。逃げて後続を突き放すということは、2400m区間全てにおいて自身が一番速く走っているという事であり、2着は今年の凱旋門賞でも2着のWestover、同4着は現10F界で世界最強の可能性があるMostahdafと、世界のトップホースを子供扱いしています。

 追走力に関しても、ドバイSCの逃げや流れた宝塚記念の後方一気からも明らかなように、2000mというカテゴリなら申し分ありません。ジャックドールと狙いの穴馬の次に追走力が高く、どういう流れでも全く問題無いと思います。前半から消耗しても有り余る余力がある訳なので、この馬に勝つには究極スローペースしかありません

 トップスピードも、1600m主体の馬を差し置いて最上級です。そして最も強いのが、最高速度が続くという点にあります。イクイノックスは前半60秒フラットで走破しても、後半1000mを56秒台で当たり前に走破できます。1000mという区間においてはプログノーシスに譲りますが、あらゆる要素の全てが3本の指に必ず入ります。

どこを切り取れば負ける要素があるのか分からないレベルの名馬であり、正直逆らう気は一切ありません。他馬もかなり良い数字を出しているのにもかかわらず、その他馬を期待値で買うという発想に至らせるほど、力が圧倒的です。心置きなくリバティアイランドとの対決に向かって欲しい所です。

評価:100点(SSS)



ドウデュース

イクイノックスを唯一力で負かしたのはドウデュースだけだと思っています。イクイノックスは走法上、凱旋門賞馬Ace Impactと似ている部分は多いですが、ドウデュースは2年前のカルティエ賞最優秀3歳牡馬St Mark's Basilicaに似ている部分が多いです。下記に2021年の愛チャンピオンSを載せておきますが、どうでしょうか。似ていると思うのは私だけでしょうか?

 ドウデュースの強みは超高回転のピッチによるトップスピードとそれを維持する持続力にあります。トップスピードだけならイクイノックスよりも上です。(まあイクイノックスは持続力が段違いなので区間的な速度は長くすると負けますが)

 追走力に関しても、マイルでセリフォスに完勝している訳なので評価をあまり下げる必要も無いですが、3歳秋と4歳春を都合棒に振っている訳なので、追走経験自体はイクイノックスに劣ります。要は強くなる機会損失があるという事ですね。それでも、ダービーからほぼ遠足みたいな欧州遠征を経て、斤量1キロを増やされた京都記念で、他馬を圧倒するパフォーマンスを見せています。

 単純な話、成長しているという訳なのですが、線で繋がるというのも凄い話。イクイノックスは「天才」と評されることが多く、まあ所以としてレース内容の多様さと2歳11月から直行でクラシックの結果を出した点にありますが、8ヶ月半ぶりのマトモなレースで結果を出すドウデュース自身も十分天才ですね。

ナルトとサスケみたいな感じですよね。どちらがナルトか…

 末脚レベルは持続勝負になるとイクイノックスに劣りますが、それでも東京2000mでシンプルな脚比べなら同程度と見て良いのではないでしょうか。それほど昨年のダービーはこの2頭が抜けていましたし、唯一イクイノックスと同じ目線で見解を出すことができる馬と見ています。

 枠的にイクイノックスの後ろを取れるか前を取れるかですが、ぶっちゃけお互いがお互いの後ろも前も狙っているという印象ですね。通常であれば、1頭強い馬が居て、その後ろが強いポジションになりやすいのですが、2頭居て2頭とも信頼されている中では、他馬はもう空気なのではないかなと。

 気分的に天覧競馬で武豊とダービー馬の勝利はこれ以上なく画になるので、応援する気持ちはこちらの方が圧倒的に上で。まあルメールは実質日本人みたいなものなのですが…。出している数字と追走経験分評価は下げていますが、今回は対抗で。

評価:90点(S+)



プログノーシス

 遅れてやってきた超新星。これ勝ったらGⅠが1勝でもディープインパクト産駒の最高傑作論争に入りそうな気がしますね。

 トップスピード自体はこのメンバーだと4番手ぐらいですが、注目すべき強みはラスト5Fの高速巡航力です。現役馬だと比肩するのはシュネルマイスターのみで、2勝クラスと中日新聞杯で1000m55秒台を計時しています。大阪杯の翌週の京橋Sではおおよそ56.6秒で差し切っており、阪神芝2000mでここまで後半1000mを速く走れる馬は、それこそ父ディープインパクトぐらいです。唯一プログノーシスだけが、イクイノックスを後ろから差せる可能性があると思います。

 札幌記念やQE2世Cを好走した点で、高速左回りへの適性外が囁かれていますが、そもそも後半長い距離を速く走れるならコーナーは緩やか、直線は長い方が良いのが当然なので、全く気にする要素ではありません。瞬発力があるように見えるのは、あくまで他が弱過ぎるというだけなので、スローペースだと少し難しいレースになりそうです。

 追走力に関しては難点でしたが、ジャックドールが控えるレベルには流れた札幌記念を捲って勝ったように、今年に入ってから明確に力をつけています。その札幌記念の数字が抜群で、2000m級競走に限定するなら、このメンバーでも圧倒的に良いです。ジャスタウェイやアーモンドアイのレベルです。

 掛かる面がありますが、先ほどのジャックドールの理想値のようなレース、とりわけレコードが出るようなレースになると、そこまで心配は要らないと思います。動ける枠に入ったのも良いですね。

川田将雅騎手は緩急の少ないラップを刻むので、徐々に速度を上げてというレースも問題無いと思いますし、レースをゴールから組み立てられるので、前走のように、持ち味を抜群に生かした騎乗ができるのではないかと思います。間違い無く日本が世界に誇るトップジョッキーですし、天覧競馬に華を添えるか、という観点で文句はありません。

 上位3頭に対して、他馬は明確に(見えている限りの)数字が足りないですね。それだけハイレベル、というのはありますが。

評価:95点(SS+)



狙いの穴馬

ガイアフォースです。

 高速巡航タイプで、安田記念で1:31.6、1勝クラスで1:56.8で走破しています。8〜10F間の「速さ」に対応でき、要は時計勝負が圧倒的に強いです。トップクラスのマイルの速度に対応できる辺り、基本的なスピードの次元が高く、スピードレンジだけなら、このメンバーでも単独トップの可能性があります。

 追走力も高く、流石に後傾が良さそうではありますので、イクイノックスより若干上か下辺りです。ただこの辺りは、マイルを戦えるスピードレンジがあればカバー可能な範囲になるので、位置さえ取れればそこまで気にする要因では無さそうです。

 末脚に関しては流石に真ん中ぐらいになりますが、それでも時計に関してはこの馬が1枚抜けていると思います。ジャックドールの理想値が1:56.6な以上、レコードを更新するレベルで時計に対応できないと厳しいので、前走で差していることからも、ジャックドールぐらいは差せるのではないかなと。

 現状ジャックドールの上位互換的な立ち位置で見ていますが、スピード面でジャックドールより上回っている印象が強いので、人気以上に走ってくれる事に期待します。流石に勝つまでは読みにくいですが、高速馬場は大好物だと思いますし、毛色的にアエロリットみたいな流れで競馬ができれば理想的ですね。

評価:85点(A++)



その他の馬

ジャックドール

 追走力という観点から有力ではありますが、末脚のレベルは昨年より上が集まってしまった点と、前傾では走れないという点で、今回は評価を下げました。理想的なラップで逃げれば、圏内に絡む可能性もそれなりにはあると思いますが、「ジャックドールを差せる馬」の数が増えたのが一番の難点でしょう。スローなら見せ場無く終わる可能性まで。

評価:80点(A+)

ダノンベルーガ

 3F速度がトップレベルに高いタイプで、スローペースなら差せそうではありますが、内容的に3歳から強くなっている印象に乏しく、ドバイターフでは、モレイラが乗っても道中の進みが悪かったように、理解不能なレースが続きます。3歳春からを成長曲線として見た時に、上位3頭に肉薄する可能性は考えられますが、序盤から出していかないレースではないと走れていないように、このメンバーで動けないレースが想定される点でマイナス評価です。もし仮に順当に強くなっているのであれば…という印象。

評価:80点(A+)

ジャスティンパレス

 追走力が足りないので凡走しても度外視です。スピードレンジも足りません。フィエールマンと比較すると、後半5Fの走破速度が必要になりそうな上、流れた宝塚記念の勝負所で進みが悪かったので完全に軽視します。有馬記念で見直し。

評価:65点(B)

ヒシイグアス

 差す力も前傾で走る力もありますが、元々の特性的なものなのか、速度が足りません。2200mのレコードも持久戦でしたし、ジャックドールが後傾ラップを刻んだ時点でゲームオーバー。この馬も有馬記念で見直したいです。

評価:75点(A)

その他のその他の馬

 数字が足りません。自己条件なら全然見直せるので、その時に。



予想と買い目

◎イクイノックス(想定レコード)
○ドウデュース(想定レコード)
▲プログノーシス(想定1:56.2〜1:56.4)
☆狙いの穴馬(想定1:56.1〜1:56.6)

予想軸
能力50:TB10:展開40

 ジャックドールが逃げる展開と考えますが、スローペースなら3Fの走破レンジの高いダノンベルーガが浮上します。ペース的にはノースブリッジが行く素振りを見せ、ジャックドールが被せた地点で一旦落ち着き、残り1200〜1000m区間で離しに行くと考えられます。

 このペースアップに対しノースブリッジが動かなかった場合でもダノンベルーガの浮上は考えられます。付いて行って、馬群がペースアップした場合、この4頭で決まる可能性が非常に高いと考えています。前傾ラップになれば、上3頭以外要らないパターンまであるかも。

 ノースブリッジが最内を取ったのは他馬にとっても好材料で、わざわざこの馬の後ろに付けなくても、外のイクイノックスが進路を確保してくれるので、道中でペースが落ち着いた際、全く動けないような状態にはなりにくいと推察します。とはいえ、追走力が問われる展開で外を回すのも厳しいので、イクイノックス、位置を取った場合ドウデュースの後ろがベストポジションになると思います。

 ジャックドールが理想値で走るなら、早めに仕掛けた馬は不利な傾向にあるため、モレイラの特性上ダノンベルーガはここでもマイナス評価する形になります。評価が乱高下。

 レコードになるならラストの1Fの持久力が問われる形になるので、その点でも、予想で挙げた4頭は有利だと思いますね。

三連単でのトリガミは避けたいので

買い目は
◎○▲→◎○▲→◎○▲ 三連単ボックス6点
☆-◎○▲-◎○▲ 三連複軸1頭流し3点

の計9点に絞ります。
☆からの三連単で夢も見たいですが、流石にド安めで死亡したくはないので…

勝てば世界最強に名乗りを上げられる1戦、リアルタイム観戦はできませんが、非常に楽しみです。

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