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心が躍りたがっている。

昨晩の深夜の1時に、シンガポール、チャンギ国際空港に着いた。ここで翌日のオーストラリアの乗り継ぎ便を待つ。

飛行機ではずっと寝ていたので、到着してから1時間ほどは、動画編集をして時間を過ごした。ほどなくして眠くなってきたので、隅っこの方の適当な場所で寝た。

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空港の野宿は、快適だった。水もトイレも食料もある。もちろん、寒くないし、何より床のジュウタンが柔らかい。

汚いかもしれないけれど、この先、快適に寝られるか分からないことを考えると、床で寝ることもあまり気にならなかった。むしろ、イスで寝るよりも、足を伸ばせて快適だった。

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明け方、「パスポートとボーダパスを見せろ」の声で目を覚ました。目の前にPOLICEの服を着た男が立っていた。きっと違法な野宿を取り締まるための循環だろう。

横になったまま、パスポートとチケットを渡すと、違法でないと確認するなり、男は次の野宿者のもとへ去って行った。

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無事に乗り継ぎ、オーストラリア・パースについた。空気が温かい。時刻は夜の9時。さてこれからどうするか。実は、今夜も空港で朝を迎えようと思っていたので宿の予約はしていない。

けれど、ずっと空港にいたこともあって早く外に出たかったので、この旅のスタート地点となる、西を目指して歩くことにした。

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20kgのカバンを持って歩くのは疲れる。空港内の草っぱらで一休みすることにした。「ここで寝ようか」とも一瞬思ったけれど、取り締まりが怖かったのと、ここまで来たのだから、もう少し頑張って街まで行こうと思った。

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それから50分ほど歩いた。一向に街に辿り着く気配がない。

迷った。

ここまでは、無理やり車道の隅を歩いていたけれど、次第に歩ける場所がなくなっていった。地図を見ても、どこに行けばいいのか分からない。そもそも、空港から徒歩で脱出できる道はあったのだろうか。それも分からない。完全に詰んだ。

仕方なく、通りすがりの車に、親指を立ててヒッチハイクをした。すると、2台目に通った車が止ってくれた。

「こんなところで何をしている。警察に罰金取られるぞ。」

男はそう言うと、空港まで乗せてやるから乗れと言った。結局、空港まで戻ることになった。数時間歩いた分を、車で戻った。もう別にいいや。

この日は結局、空港で野宿をすることにした。

心を躍らせたい

どこに続くか分からない道を歩き続けていたら、不安に駆られた心が叫び出すのが分かった。

「家でゆっくりできたらいいのに。部屋でのんびり過ごしたい。」

オーストラリアに来て、1日目にして、この弱腰である。ただ、賢く旅がしたいと、交通費、宿費を削ることを考えてきたけれど、この貧乏性が行き過ぎたかもしれない。

身体にも心にも負荷がかかって、限界だった。

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私には「楽をしちゃいけない。苦しまなければいけない。」みたいな美徳がある。強い人間になるには、苦しみに耐えないといけない、と思ってきたし、苦しみの末に見つける喜びは確かに大きなものだった。

ただ、その負荷が心身の限界を超えたとき、心が躍らなくなる。苦しみに耐えなきゃいけない、と思えば思うほど、この旅が過酷な試練となって、心が躍れなくなってしまう。

それでも尚、その先の喜びを信じられるものが、強い人間なのだろうか。ただ、そう考えれば考えるほど、また自分の首が締まっていく。

楽をしてもいいのだろうか。

15ドルも出せば、屋根の下で寝られる。1食5ドルも払えば、まともな飯が食える。つまり、お金を払えば楽ができる.....が、必ずしもそれは楽しいというわけではない。

楽と楽しいは全然違う。私は楽しい旅をしたい。

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とりあえず、旅のはじまりに向けて、西に向かう。西海岸の夕日を目指す。先日も書いたように、そこから東海岸に向けて、オーストラリアを横断する。

西の夕日がスタートで、東の朝日がゴール。私は朝日が好きだ。だから、朝日が終わりにあることを思うと、希望がわく。

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ここにきて、まだ心が追い付いていない。

リミットは1か月。時間はまだある。心が追い付くまで、一休みしてから、スタートしようと思う。

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旅はつづく。

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