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怠慢な自分を赦そう。

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パースからさらに西に進んで、フリーマントルという街に来た。でっかいビルが立ち並ぶパースとは違って、ほどよく小さな街。街のいたるところには、一休みできる公園や、ベンチがたくさんある。

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腹が減ったので、何かを食べることにした。ただ、オーストラリアは周知のとおり、物価が世界でもトップレベルに高い。今後に備えて少しでも節約したいので、外食は控えて、スーパーで食料を買うことにした。

近くのベンチに座っている老夫婦に、スーパーの場所を聞くと、「この先にColesっていうスーパーがあるわ。そこがベストね!」と教えてくれた。

優しい笑みをするおばあちゃんだった。

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スーパーに着くなり、食料を買う。パン、オレンジ、黄桃 、サラダパスタ、2Lの水、アイスクリーム。

物価が高いとは言え、スーパーではさほどそれを感じなかった。昨晩空港のコンビニで買った水は、1.5Lで5ドル近くしたけれど、ここでは同じ量の水が、1ドル以下で買える。水で5ドルは絶望だったけれど、これなら少し希望が見えた。

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フルーツも安価なものが豊富にそろっていた。栄養面も困ることはなさそうだ。近くにいた2人の女学生が迷わず黄桃を手にするのを見て、私も思わずそれに手をのばした。

買い物を終えて、先ほどの老夫婦がいた公園のベンチで食べた。24時間ぶりの食糧だった。フォークをもらい忘れたので、パスタは蓋をうまく使って、手で食べた。

自由ゆえの不自由

いつも旅をしていると思う。なんて旅は自由なんだろう。そしてその自由さが、なんと不自由なんだろう、と。

私は観光地を巡りたいという種の人間ではない。現地のグルメに興味があるわけでもない。いつも興味があるのは、人の心だ。ここの人と出会っても、綺麗な夕日を見ても、その先にある心を見る。

心がときめく瞬間、心が繋がる瞬間、心が躍る瞬間を切望している。

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この日は、ずーっと公園の芝の上でボーッとしていた。木陰で昼寝をしたり、本を読んだり、目の前を通り過ぎる人を観察して過ごした。

老若男女問わず、たくさんの人が芝の上で寝転がっている。カップル、家族で話をしたり、私と同じように一人で昼寝をしている人もいる。

ほどなくして、この街で長袖長ズボンなのは、自分だけだと気づいた。オーストラリアでは、2月は夏にあたる。今日の気温は37度だ。

一週間前には、-10度の世界で生きていたことが不思議に思えてくる。そして、こうも暑いと「寒い方がまだましだ」と思う自分がいる。あれほど、温かい所に行きたいと思っていたのに。

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話を戻そう。東に向けて横断したい、という大目的はあれど、街で何かをしたい、という小さな目的が何もない。ゆえに、とても暇になる。

自分から何かを求めて動かないと、何も手に入ってこない。ダラダラしていたら、日本と同じように時間が過ぎていく。せっかくお金を払って異国の地に来たのだから、「何か」したい。

ただ、昨日も書いたように、私の心は、苦痛の限界を迎えて、「何か」を求める以前に、休みたいと言っている。今は涼しいところで、ただ冷たい飲み物を飲んで、寝転がっていたい。

分かっている。ただの怠慢だ。が、不思議なことに、旅をしていると、怠慢な旅人を多く見かける。

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怠慢な自分を赦そう

今日は、宿に泊まることにした。1泊22ドルのドミトリー。

高い。東京でも1500円もあれば、一晩寝られる。

貧乏性の私は、「もし野宿をしたら、22ドルが浮くのに...」と考えてしまう。22ドルも浮けば、2日生き延びることができる。

そんなことを思いながら、宿に向かう。

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卓球、ビリヤード、ゲーム、映画、酒。ここは、自遊空間かと思うほど、娯楽が揃っている。

私がいつも、格安ドミトリーに泊まると、怠慢な旅人に出会うのは、こんな背景があるのかもしれない。

大人数ではしゃいでいるのを背に、私は一人、撮った映像を編集して、noteを書いた。日本でも、どんちゃん騒ぎはあまり好きではない。静かな場所で本を読んで珈琲を飲んでいたほうが、自分の性に合う。ここでもそれは変わらない。

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大きな荷物を下ろせた安心感もあって、近場のビーチの夕日を見に行くことにした。

「この辺で綺麗な夕日を見られるビーチ知ってる?」と受付のお姉さんに聞いてみると、「それならバザーズビーチね」と地図で教えてくれた。ついでに、ドローンも飛ばせるか聞いてみると「もちろん、大丈夫よ!」と自信満々に教えてくれる。

オーストラリアは、ドローン先進国と言われているだけあって、規制はかなり緩いらしい、と通りかかった公園でドローンを飛ばしていたカップルを思い出す。

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この後は、バザーズビーチに繰り出して、ドローンを飛ばした。映像は、Youtubeにあげるので、是非見てほしい。

ここは、メジャーなビーチではないけれど、夕日はとても綺麗だった。

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日が沈むのを見たとき、心がうっとりしているのが分かった。異国に来て高ぶっていた不安感も吹き飛んでいた。

横断の旅がいよいよ始まる。始まりだ。

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