【サスペンス】『知らない人んち(仮)』第一話(シナリオコンテスト)

【追記】
シナリオ本文の最後に、コンテストの結果、後日談を書き足しました。

こちらは、テレ東のシナリオコンテストに投稿したシナリオとなります。
コンテストの概要は以下を参照のこと。

公式から発表された0話の続きを募集。
→集まったアイデアを公式がまとめ、オンエアー。
→その話の続きを再び視聴者から募集。

…この繰り返しで、視聴者からのアイデアを都度募集し最後まで走り切ろう、というかなり変わった形のコンテストです。


応募作について
▼ジャンル
0話の雰囲気を引き継いだサスペンスとなります。

▼登場人物
きいろ…20代女性。YouTuber。「夕飯をおごるから家泊まっていいですか?」という企画をはじめ、男女三人が住むシェアハウスに向かう事に。
アク……男性。シェアハウスの住人。
キャン…女性。シェアハウスの住人。
ジェミ…女性。シェアハウスの住人。

〇第一話サブタイトル「知らない人んち」

〇和室
 きいろ、子供が書いたと思われる五人の家族が描かれた絵を見ている。

きいろ「でも面白いもの、撮れるかも…」

 瞬間、扉をノックする音。
 振り返るきいろ。
 再び、ノックの音。
 きいろ、視線を絵に戻す。

きいろ「やば…!」

 と、絵を適当な所に隠そうとする。
 再び、せかすようにノックの音。

きいろ「ちょ、ちょっと待ってください。今開けます、今!」

 となんとか絵を隠し終える。
 視線を扉にむける。
 が、ノックの音が鳴らない。
 恐る恐る扉に近づき、開ける。
 しかし、外には誰もいない。
 廊下に出るも、やはり誰もおらず、

きいろ「あのー…」

 と言った次の瞬間、きいろの背後を人影が横切る。
 その姿はワンピースの寝間着のようなものを着ており、背中はまるまり、生気の感じられない--まるで幽霊のような姿。

きいろ「誰かいます…?」

 人影、歩いてカメラから消えるが、その歩きものそのそとしており、現実感が感じられない。
 ふと、きいろ、後ろを振り返る。
 しかしそこにもう人影はない。
 いぶかしがるきいろ。
 そこに突然、

女の声「どうしたの?」

 と声がかかる。
 驚いてそちらを見るきいろ。
 そこにいたのはキャン。

きいろ「いや、今ノックされたんですけど…誰もいなくて…」
キャン「聞き間違いじゃなくて?」
きいろ「キャンさんですか、もしかしてさっきの……?」
キャン「私?違うよ。私はただ、お茶でも飲まないかなって?」
きいろ「……」

〇リビング
 台所に立つキャン、コーヒーを入れている。

キャン「きいろちゃんってYouTubeでどんな事やってるの?」

 きいろ、椅子に座っている。
 その対面にはジェミの姿。何もせず座っている。

きいろ「……えっと、たくさんご飯食べたり…とか」
キャン「何食べるの?」
きいろ「ステーキとか…ハンバーグとか…」
キャン「それって……儲かる?だってさ、すごい稼げるんでしょ、YouTubeって」
きいろ「いやー……そんなことないですよ、私なんか全然……」
キャン「何億とか稼げるんでしょ?」
きいろ「いや、食べていければいい方で……」
キャン「そんだけあればなー……(深いため息)」

 と、キャンの言葉を遮るようにジェミが、

ジェミ「あなた……バイトをクビになったのよね?」
きいろ「え?あ、はい」
ジェミ「何のバイトしてたの?」
きいろ「えっと…コンビニです…」
ジェミ「近くの?」
きいろ「はい…すぐそこの…(と言ってしまったという表情)」
ジェミ「どこ?」
きいろ「あ、えっと……どこですかね……?(ごまかそうと苦笑い)」
ジェミ「コンビニってクビになる事あるの?」
きいろ「ありますよ、もう全然」
ジェミ「何したの?」
きいろ「それは……」
キャン「きいろちゃんYouTubeに変なのあげたんじゃないの?ほら、あるじゃん。冷蔵庫の中に入ったり、おでんに手をつっこんだり……」
きいろ「し、してませんよ、そんな事」
ジェミ「店長と何かあった、とか?」

 と、唐突に電話が鳴る。

きいろ「……え?」
ジェミ「なんかあったんでしょ?」
きいろ「何かって、何……ですか?」
ジェミ「体売った、とか」
きいろ「あの、電話……」
ジェミ「したの?」
きいろ「……いや、そういう事は……してません」
キャン「……いつからいつまで働いてたの?」

 と、コーヒーをもっていつの間にか傍に立っているキャン。
 驚くきいろ。
 電話の音が鳴り続けるが一向に二人は出る様子がない。

きいろ「あの……取らなくていいんですか?」
キャン「コンビニって……どこの何店?」
きいろ「いや、えっと……」

 電話、留守番電話に切り替わる。

留守電の声「はい、えーすみません」

 と、その声は男性のしわがれた声。
 アクのものとも明らかに違う声に驚くきいろ。

留守電の声「えー飯島です。えー只今留守にしております。御用の方は……」

 という所まで流れた所でジェミ、電話を切る。

ジェミ「あなたってさ……」

 と、さえぎるように再び電話が鳴る。
 ジェミ、間髪入れずにすぐに電話を切って、  

ジェミ「ほんとの名前……何ていうの?」
きいろ「……」

 と、沈黙をやぶるようにアクが、

アク「ただいま」

 と登場。

キャン「おかえりー。おお、一杯買ったね!」

 と、キャン、アクの持ったビニール袋に驚く。
 しかし、アクは適当に袋を置くと、冷静に

アク「二人とも、ちょっと」
キャン「ん、何?」
アク「ジェミは……」

 とジェミに耳打ちし、

ジェミ「わかった……」

 と出ていくジェミ。
 その姿を見送ると、キャンとともに部屋から出ていくアク。
 放置された袋には、牛乳や肉など冷やさなくてはいけないものが沢山入っている。

きいろ「……」

 と、三人の出て行った扉を見つめるきいろ。
 静かに立ち上がり、物音も立てず同じ扉から出ていく。

〇二階 廊下
 アク、キャンの二人が階段から上がってきて、男子部屋に入っていく。
 それからしばらくして後を追うようにきいろが現れる。
 そのまま男子部屋の様子を伺おうと近づく。
 が、その隣の暗室から物音が聞こえてくる。
 驚いたきいろ、そちらに視線を向ける。

きいろ「今、何か……」

 男子部屋の三人に気づかれないよう、抜き足差し足で暗室に近づき、扉に耳を当てる。
 と、暗室の中から

声「た……す……けて……」

 というかすかな声が聞こえてくる。

きいろ「……!!」

 と扉を見つめる。
 しばらくそれを見つめていたが、ふと

きいろ「警察…!」

 と言い、一階へ。あくまでも抜き足差し足で降りていく。

〇一階 玄関
 外に出ようと扉をあけようとするきいろ。
 しかし、開かない。
 焦って何度も挑戦するが、開かない。

きいろ「警察……とにかく出ないと……そうだ!(何かひらめいた様子)」


〇和室
 部屋に入ってきたきいろ。
 机を一瞥し、カバンをあさる。

きいろ「ない……スマホ、ない……!どこ?」

〇二階 男子部屋
 アク、キャンの二人が話をしている。

キャン「うーん……じゃあ、どうする?」
アク「とにかく……絶対に外には出してはいけない……」

 としゃべる二人の背後にPCのモニター。
 そこに映っているのはきいろの履歴書。
 その名前の欄に書かれていたのは「飯島黄葉」の文字。
 瞬間、さきほどの留守番電話の声が

留守電の声「えー飯島です。只今留守にしています……」

 とフラッシュバックされる。

〇画面に第一話サブタイトル「知らない人んち」の文字
 と、そのタイトルの文末に「?」が表示される。「知らない人んち?」

(終わり)
 
※こちら、第4話のオチを想定した上で書きました。


【以下追記】
▼コンテストの結果について
さて、結果ですが……残念ながら、採用には至りませんでした。
もちろん残念ではありますが、このシナリオを書いた目的は「シナリオ楽しんで書く事はまだ出来るのか、確認する」というもので、そこについてはバッチリ達成できたので、問題ありません。

…あ、ただ。
そのコンテストの選考の内容をテレ東さんが記事にまとめてくれたのですが、その中で、すこーしですが、自分の名前に触れてもらっています…!やった。


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