カイゼン

トヨタの挑戦

20年位前から、トヨタのカイゼン文化は有名になり、多くの企業が真似をしたと言われている。ここで、その強さを再度確認してみます。

実際に詳しく本を考察したことはないが、製造業出身の私の理解を元に、書いてみたい。多くの日本企業が直面している問題は、この会社を模範にしていくことで、いいお手本になる部分があるかと存じます。

1.カイゼンは、ビジネススキルではない。

カイゼンと言う言葉を使う人は多いし、末端の社員から上層部への投書箱を用意し、現場の意見を会社全体で考えている会社は現在もある。でも、そのようなツールを用意することではないと思うのです。

2.カイゼンは、企業と言うチーム全体で仲間意識を持ち、お互いを高めあう文化形成の手法である。

経営者の判断が間違っていた場合、ブーメランの様に現場の全ての部門の調査結果とともに、経営者に戻ってくるところであり、それを経営者が間違いを認める。そのすべての過程が、可視化されているところなのです。

3.サンプル事例

例えば、市場で故障した車があったとして、本社の修理工場に車が搬入されたとする。トヨタの社員は、お疲れ様の気持ちで、自分たちが生み出した車を迎える。

そこから、問題の起こった原因分析が始まり、例えば、電気基盤に問題があったことがわかったとする。

そこからがスタートです。

電気基盤に故障があったのか、接触不良なのかの切り分けを行い、基盤に部品を装着する時の、はんだ付け工程に問題があったことが分かったとする。

そこで、通常の会社だと、部品を装着している部門に部品を送っておしまいになってしまう、もしくは、会社としての報告書には、部品の装着工程に問題があったと言って終わってしまうのではないだろうか。

トヨタでは、部品の装着をしている部門で、自動装着機(チップマウンター)と基盤の分析を行い、何故、接触不良が起こったのかを調べます。そうすると、通常の装着位置よりも、0.1ミリ横にずれていた事を見つける。
何故、ズレが発生したか、他の部品では一切同じ問題は起こっていない、基盤の配線と装着位置は、1ミリの部品は多く、0.1ミリズレるのは大問題だ。チップマウンターの設定履歴をしらべ、設定を変えた記録は残っていないかを調べ、さらに、基盤の不良がなかったかを調べる。そこで、基盤には番号が振られており、いつ製造をしたものかを調べる事ができる。その製造日を元に基盤がいつものものと違いがなかったかを調べる。
0.1ミリのズレを正常な基盤と比較して、問題の基盤には、配線の位置にズレがあることを発見する。

チップマウンターが、そこを読み取って装着することはできなかったか。。を考察し、記録した上で、不良は基盤にあったことを記録して、資材部に部品を回す。
ここで、何故、基盤に問題があったかの質問に1つ答えが出た。
「基盤に不良があった。」

資材部では、不良の発生した部品が、入荷時の品質検査で、合格してしまった理由を調べる。
既に、いつ製造されたものかが分かっており、いつ受入検査がされたかが分かっている、受け入れ検査は、全ての部品に対して行うものではなく、サンプリングして、検査しているため、品質にばらつきがあった場合、不良部品を見落としてしまう可能性がある。
その日の部品を見つける為のキチンとした検査がされたかを確認して、検査は正常にされており、サンプリングした部品は良品であったことを確認する。あとは、品質にばらつきが発生していたことを理解する。

資材部では、その部品がどこの業者から納入されたものかを調べ、業者に連絡し、業者に調査依頼をかける。又、その業者は実績のある業者だったかどうか、業者から納入される全ての部品の品質で高いレベルが維持されていたかを確認する。

仕入れ業者から調査結果報告が戻ってきており、その部品の不良は、偶発的に発生したものであり、他の基盤には同様の問題が発生していないことを確認したこと、その根拠について報告を受ける。

資材部は、業者の調査をした結果を確認して、それ以前の部品業者ではない、信頼レートの低い業者からの納入であったことを確認する。

ここで、基盤の品質検査で見落としてしまった理由が明確になる。サンプリングでは見つけられなかった偶発的な部品不良であったこと。又、部品業者がそれまでの実績のある業者ではなかったこと。を記録し、購買部に、その業者を選択したのかの理由について確認するように、連絡を入れる。

購買部では、当該部品の発注履歴を確認して、何故、業者を変更したのかを調べる為に発注担当者を調べ、担当者に問い合わせを入れる。
確認後、担当者はそれまでの実績のある業者を何故、選択しなかったのかを確認する。その記録を確認すると、会社全体の方針として、当該車種のコストダウンを、通常よりも早いスピードで実施するように、会社トップからの指示があり、既存の業者にも問い合わせたが、すぐに価格を下げる事ができなかった。
それ以外の、業者でも、評価が悪くない業者が安い業者があったが、実際に購入実績がなかった。
そこに危険があった。何故、そのような事をしたのか。
担当者は若く、会社の方針に合わせてコストダウン目標を実施することを優先してしまい、

「あせった」

ここで終わらないのがトヨタのすごい所、何故担当者が焦ったのか、をもう一度確認し、通常のコストダウンにかける時間よりも短期間でコストダウンの指示が経営者層から指示があった。そのことをそえて、経営者に問題が発生した理由は、担当者が実績のない業者を選択したことと、十分に品質を確認する手間を惜しんだ。又その理由は、通常コストダウンにかけるよりも早いスピードでのコストダウンの指示が経営者層から指示され、その期限を守る必要があった。との記録を残して、経営者に、その問題報告を行う。

そこで経営者は、問題の一番の原因は、コストダウンに必要な期間を無視して、短期間に作業を完結させるように、現場の作業を無視して指示した事が問題だと回答した。

4.サンプルから見えること。

ここでの考察は、会社は、犯人捜しを全くしていない。品質を上げる為の学びを見つけ出すことを、楽しんでいるかのように、粛々と作業をしているのだ。

又、各部門で記録された品質問題は、製造部門、資材受け入れ部門、購買部門、経営者会議で、その1週間に起こった品質問題の一覧を一つづつ吟味して、全部の部門が、この問題を自分事として解決できなかったかを、検討して、再発防止策を検討するのだ。

一回の不良品が、戻ってくる事で、トヨタ全体の関係者がワンチームとなって、一歩づつ前に進む仕組が、仕組、文化ともなって、全体の品質を引き上げているのである。

新車が出てくる時には、最新の注意を払う必要があるが、それまでの新車を出した際の学びを元に、品質検査を全数にするとか、基盤毎の動作確認工程を入れるとか、2倍の工数をかけて品質を担保する仕組みが動いており、いいものが必ず出荷できると社員が自信を持っているのだ。

何故、その問題が起こったか、このようなサンプル事例を元に考えてみて、問題が発生した際は、犯人捜しの様なプロセスが、通常の企業では起こってしまう事が多いし、自分は悪くないと言い訳する社員も沢山出てきてしまう。でもトヨタは、個別の担当者一人一人に、非難をすることは少ない、それよりも全体で一歩前に進むケーススタディーを実行する機会ととらえているのだ。

5.トヨタの強さに学べる要素

何故と問う事は、人を傷つけるケースもあるが、企業が、サービスや、製品を提供している場合において、個別の人を非難したり、非難された人が、人のせいにしたりしていては、最悪な事態として、どんどん品質が下がり、お客様の離反を招いてしまう。

日本は、経営トップの権力で、現場が振り回され、駒のように動いている会社もあるが、トヨタは品質問題において、現場の社員も会社の社長も対等に責任を担い、そこからの反省を学びとして、成長につなげている。

今回は、忘れているかもしれない、トヨタのグローバルでの強さの戦略と、その土台となっているカイゼンカルチャーがあるので、その現場社員の動き、チームワークとリーダーシップについて、再度確認させていただいた。

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