CYBATHLON 日本大会

サイバスロン車いすシリーズ日本2019が5月5日川崎で開催された。これは、障がいをもつ人がハイテクな義手や義足、車いすなどを用いて競技を行うサイバスロン(CYBATHLON)の車いす競技部門の大会である。
サイバスロンは2016年にスイスで第1回が開催され、2回目は2020年に予定されている。全6種類の競技があり、今年は世界各地で各競技部門大会が開催されているようだ。

本大会の車いす部門では、日常生活で想定されるような6つの課題が用意されている。例えば、テーブルの足にぶつけないように車いすを入れたり、階段の昇り降り、ドアの開閉と通過などである。競技時間8分間でこれらのうちクリアした課題の合計点数で競うというものになっている。今回は、4ヶ国から全8チームが出場した。日本から5チーム、スイス、ロシア、香港からそれぞれ1チームである。各チーム予選を2回行い、その後、3位決定戦および決勝を行う。

さて、実際の競技内容であるが、これは見かけよりも相当に難しいことがわかる。出場チーム中課題を全てクリアできたのは、3チームであった。もちろん、競技課題全てをクリアしなければいけないというルールではないため、課題を絞って挑戦する戦略をとるチームもあった。特に階段の昇り降りは車輪移動にとってとても難しく、レスキューロボットなど無人のロボットでも様々な方法が試みられるような課題である。

競技ルールや課題の詳細は公式サイトにあるが、高専ロボコンを経験した身としては、最初のテーブル、スラローム、でこぼこ道ですら、色々な工夫をしなければクリアできないのではないかと感じてしまう。特に操縦者が車いすに乗っているというのは、視界もかなり制限され、移動中の振動も相当なものだと考えられる。また、これだけのハードな課題をこなす複雑な機械というのは、トラブルの可能性も高い。実際に予選の2試合の間で機材不調が発生するチームもあった。

最終結果は、3位は日本の慶應義塾大学理工学部 “Fortississimo"、2位はロシアのカッターヴィル LLC “Caterwil”、1位はスイスのラッパースビル応用科学大学 “HSR Enhanced”であった。この3チームは全ての課題をクリアしたチームである。特に決勝戦は、スピードレースとしても見ごたえのある展開となっており、サイバスロンが持つ競技としての面白さの片鱗をうかがえたといえる。2020年のスイスでの本大会やその先の可能性に期待できる内容だったのではないかと思う。

この活動は純粋に得点や順位を競うのみではなく、競技を通じて現状の技術の現状や課題を広く知ってももらう点が重要である。参加チームは最終順位に関わらず皆素晴らしかったと思う。一方でコンテスト形式をとることによって、各チームが試合に向けて独自にアイデアを練り上げ、それを最終的に競技を通じて披露し交流することができる。

大会当日はこどもの日であり、家族づれも多く見られた。小さな子達の目にこの大会がどのように映ったのかはわからない。ただ、私が高専ロボコンに魅せられて今の道を歩み始めたように、今日の体験が彼ら彼女らにとって未来の人とテクノロジーの新しい関係性を考えるきっかけになるかもしれないと感じた。なんといってもどの参加チームの車いすもかっこよかったのだ。

※当日の雰囲気はtogetterに詳しいです。
※ツイートは稲見先生のを引用しています。
※私自身は色々と写真撮るの忘れました。

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