体験を共有するためのデモンストレーション

趣味でも研究でも、何かモノを作ったときには、様々な方法でできたモノを披露することができる。例えば、TwitterなどのSNSやウェブの記事、ブログ、動画をアップロードしたり、コンテストに応募するのも良い、研究であれば論文の形で表現することもできる。そして、おそらく最も効果的な方法として、デモンストレーションがある。

私はものづくりや研究活動を通して、比較的デモ展示を行う機会が多い。また、デモ展示を行うことそのものも好きなタイプらしい。最近、何のためにデモ展示をするのか?といった話をする機会があり、少し私の考えを述べる。

何のためにデモ展示をやるのか?という質問には、いくつかの答え方があると思うが、今回は私個人の観点から答える。結論からいえば、「デモ展示はやってて楽しいし、楽しさを他者と共有するためにやる」である。

これに対して、「とはいえ準備とか大変だし、デモ展示そのものも疲れる」というリアクションは当然あるだろうし、実際にその通りである。それでも、やっぱり楽しいと感じるし、それを共有したいのである。私にとって、デモ展示の楽しさとは、作品を通じて体験した人に喜んでもらえることであり、その意味では楽しさの共有とほぼ同じことかもしれない。

おそらく、私は自分の作品じゃないモノのデモ展示をしても楽しいと感じるタイプだろう。個人的には、まず、他の人や先輩の作品でも良いので、デモ展示による楽しさの共有という体験をしてから、自分の作品なり研究に取り組むのも良いのではないかと思う。そして、自分の作品のデモンストレーションで楽しさを共有できるのが理想的である。

初めて自分の作品でデモンストレーションをするときは、色々な準備が必要なことを知って大変だと感じるだろうし、実際にはうまく動かなくて悔しい思いをするかもしれない。それでも準備に向けた作業を誰かチームメンバーや同期と一緒に進めることができれば、それはきっとある種の熱量を持った思い出の一つになると思う。そういったことを含めて楽しいと感じられるのではないだろうか。私もIVRCというVR作品のコンテストやロボコンを通じてそんなひとときを経験できたと感じている。

では、楽しさを他者と共有するとはどういうことか。これは、作品の種類にも依存することではあるが、デモンストレーションによる体験の共有が、言葉や映像の説明とは全く異なる説得力を持っているため、楽しさを直接伝えられる可能性が高いというところにある。

例えば、触覚を伴う作品や体験は言葉や映像ではほとんど伝えることができないし想像が難しい。しかし、その場で触ることで一瞬で感じ取ることができる。他にもハードウェアを伴うデバイスは、物質そのものがそこに存在する意味は大いにあると思う。もちろん、そのデバイスを使用するシチュエーションや文脈によってはデモ展示が難しいこともあるが、目の前にあることで情報量は大きく異なる。

長くなったが、まとめると、デモンストレーションは、その一連の行為そのものが楽しいし、実際に目の前で披露することで、言葉や映像だけではなかなか共有できないことを伝えることができるからやるのだと思う。

そして最後に、そんな目の前で繰り広げられたデモンストレーションで得られた強烈な体験が、将来に大きく影響することがある。私もおそらくその一人だし、そうした経験を経た人を何人か知っている。

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