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温かい試合中継

今日8/16(日)、島根県サッカー選手権大会決勝が開催された。
いわゆる天皇杯予選ともいわれる大会。サッカー興味がない人でも、元旦の昼にNHKつけたらサッカーやってるの見たことあると思うけど、あれが天皇杯の決勝。

その島根県大会(天皇杯島根県予選)の決勝に、僕の応援する松江シティFCとE-WING(出雲市)が顔を揃えた。
何日か前から、松江シティの公式アカウントが「当日の試合はTwitterでLIVE配信します」と告知していた。無観客での開催となってしまったこの大会だが、現地に行けないまでも映像を見て声援を送れるのはありがたい。僕は昼間用があって出ていたが試合開始にあわせて帰宅し、15:00キックオフを心待ちにした。

15:00試合開始。やはり映像があるのはありがたい。
松江シティの応援自体は結構前からしているが、僕自身広島在住ということもあり、また松江シティの所属リーグ「JFL」は毎試合中継してくれるわけでもないので(昇格前の中国リーグなんて中継されたことあるんかな)、文字情報だけで試合展開を追いかけることのほうが多かったりする。
炎天下の浜山公園陸上競技場で選手たちが走り回る様子を暑そうだな~なんて思いながら眺めていた。

だがやはり、いわゆるスポーツ中継とは全く違う。あとから分かったのだが、中継カメラはタブレット(iPad?)のカメラ、マイクもタブレットのマイク。選手のズームなんて当然無いし、お世辞にもきれいとは言えない映像。しかも中継担当スタッフ二人の会話が聞こえまくる。笑
これ1試合見れるかな…なんて思っていたところ、そのスタッフがものすごく拙いながらも、ボールを持っている選手の名前を実況し始めた。

「田平…桃井…加藤…」

これはありがたかった。背番号が判別できない解像度の映像なので、誰がシュートを打ったのか、そのポジションでボールを持っているのが誰なのかもわからなかったのだから。笑
どうやら中継内の視聴者コメントで誰かが希望したらしい。
しばらくその「名前だけ実況」をスタッフが続けていたが、次第に様子がおかしくなる。

「ゴメくん…タビさん…じんゆう!」
※ゴメ=垣根拓也(ニックネーム)、タビ=田平謙、じんゆう=那須甚有
https://football.matsue-city.com/team/player/

ニックネームや呼び名で実況し始めたのである。最初は正直「おいおい大丈夫か…笑」と思っていたが、聞いているうちに不思議な魅力に取り憑かれていった。きっとその実況がカジュアルだったからこそ、一緒にスタンドで見ているような雰囲気になれたんだと思う。
しかもそれには留まらず、中継スタッフも視聴者からのアドバイスや意見をリアルタイムで取り入れて、その実況の仕方をアップデートしていく。
前半も30分を回ったあたりからは拙さとかそういうのは全く気にならなくなった。(たまに雑談が入るのはご愛嬌)

更に心を掴まれたのは後半から。前半の実況は主に広報の女性がやっていた。後半からメインで実況をやり始めたのが船川航司朗というスタッフだった。この船川氏、実は(ファンなら殆ど知っていると思うが)昨年まで選手として松江シティでプレーしていた人。

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この実況船川も、最初は落ち着いた声でとても聞きやすく「へぇ~いいじゃん」とおもってはいたが、それこそ淡々と選手名を口に出していくだけだった。
試合のほうは、前半に松江シティが1点を先制したあと得点に動きがなく、格上である松江シティとしては不満の残る内容とともに、焼け付く暑さの中文字通りジリジリとした戦いが繰り広げられていた。

後半20分を回ったあたりからだっただろうか。実況船川の口調に変化が現れた。

「ここはなんとかボールを残す」
「うーんここは合わない」
「なんとか点が欲しい…」
「“惜しい”ではいけない」

本人も慣れたのか気持ちがものすごく出てきて、超大袈裟に言うと普通に実況ありの中継を見ているような感覚だった。余計なことは言わないし、事実を淡々と述べるだけ。でも気持ちが入っているのは聞いていたらとても伝わってくる。そんな実況だった。
もうその雰囲気が楽しくて楽しくて、家で中継映像を見聞きしながらテンションが上っていた。
(E-WINGの平林選手への愛も感じました。笑)

試合は最終盤に2点を連取した松江シティが苦しみながらも3-0で勝利。天皇杯本大会へ駒を進めた。
試合が終わったあと、船川の口から「疲れた~」と思わず声が出ていた。そりゃそうだろう。サッカーをプレーしたり教えたりすることはあっても、自分が実況やるなんて思ってもみなかっただろう(それも急遽)。
でも、二人のスタッフのおかげでとても充実したリモート応援になりました。

世の中で知られている「スポーツ中継」に比べたら、映像のプロが撮っているわけでも、実況のプロが喋っているわけでもなく、いわゆる「スポーツ中継」の体は成していなかったかもしれないし、課金できるかと言ったらそれは微妙。
でも使えるものを使って、出来る範囲で最大限頑張ってくれたし、ファンからの意見を聞いて試合中にアップデートしていくその雰囲気はとても温かく、不思議な一体感のある中継でした。

今日の試合なんかは松江シティのファンでもある程度コア層がメインで見ていたと思うし、そういう状況ではこういうのも大変ありだなと新しい発見でした。
もしかしたらもうやりたくないかもしれないし、業務キャパの問題もあるだろうし、大会レギュレーションとかも絡んでくるだろうからあんまり軽々には言えないけど、またいつか二人の実況が聞ける日が来たら嬉しいなとさえ思いました。

炎天下の中頑張った選手・コーチのみなさん、運営の方、皆様本当にお疲れさまでした。

松江シティFC、次戦はリーグ戦が8/23 vs鈴鹿ポイントゲッターズ @鈴鹿、そして天皇杯本トーナメントは9/16 vs Yonago Genki @バード です。
4カテゴリー上の川崎相手に行けるかもと思わせてくれたが現実は甘くなかった全国放送の5年前、格上長崎を最後の最後まで苦しめた2年前。これも格上讃岐にPKで敗れた悔しい悔しい1年前。
天皇杯の舞台で、過去を超える松江シティの新たな熱い試合が繰り広げられることを楽しみにしています。


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