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「蔵王さん」

今の家に住み始めて14年。住むまではこの場所は何も知らない土地だった。家と会社の往復の毎日の僕にとっては、はっきり言っあまり地縁のない土地だと言える。
反対に、この地で成長している子どもたち。当然ながら僕よりもこの土地については熟知している。

毎年、8月末に子どもたちは「蔵王さん」に行くと夜店に出かけていた。しかしこの土地には有名な寺社仏閣があるわけではなく、何かの祭りの夜店ではない。勝手に近くのお宮さんの夜店なのかと思っていたのだが、子どもたちに聞くと違うそうだ。

「蔵王さん」とは何?ずっと疑問に思っていた。

御多分にもれず、「蔵王さん」もコロナ禍で3年間中止になっていた。そして今年は4年ぶりに「蔵王さん」があるという。次女は友だちと「蔵王さん」に行くので門限を遅くしてほしいと言ってきた。

門限を遅くするのを了承しながら、これは「蔵王さん」が何なのか確かめるチャンスではないのか、と思った。

そこで、会社帰り、一つ手前の駅で下車し、「蔵王さん」に寄り道してみた。予想以上に夜店がいっぱい出ていた。
面白いのは普通の住宅街の中に夜店が出ていること。一般の住宅の前に、「お好み焼き」やら「射的」などの夜店が出ていた。そして、「蔵王さん」に来ている人たちは家族連れや中高生が大半。地元密着の「蔵王さん」なのだ。
缶チューハイを飲みながらプラプラと「蔵王さん」を見て回った。
途中、次女に出会い、「独りで来てるの?寂しい~」とキツいことを言われてしまった。

そして分かったこと。
「蔵王さん」とは「蔵王堂」という寺院のことだった。
「蔵王さん」は「蔵王堂」の八朔祭の夜店だったのだ。


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