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存在

ちょっぴり照れてしまう話ですが、昨日は私が小学校の時、好きだった男の子の誕生日でした。

毎年7月2日になると「元気かな?」と思い出します。勉強も運動も一生懸命する、素敵な男の子でした。私以外の女の子も、彼を好きだと言う子は沢山いました。

しかし、私が彼を好きになったのは、他の女の子と少し違うところからでした。

私は、小学校4年生のちょうど年度始めの春に転校を経験しました。その新しい学校の同じクラスにいた男の子が彼、T君でした。緊張して入った教室の、自分に用意された机のすぐ側にT君が居ました。

初日、何やらみんなが私の足元を見て、コソコソ言っています。

何かなと思ったら、履いていた上履きのことでした。当時、上履きは白くて、色のラインが入っていましたが、そのラインの色が私は青色でした。以前の学校は全員青色のラインでしたが、転校先の学校は男子は青色、女子は赤色だったのです。それを知らなかった親は、そのまま以前の上履きを持たせてくれていました。

「なんで青なの?」
「女子なのに青を履いているなんて。」
「見て。あの子、青履いているよ。」

色んな声が聞こえてきます。心はドキドキです。悪いことをしているわけではないのに、責められているような気持ちにもなり、胸が痛みました。

すると、それらの声とは全く違った声が聞こえてきました。

「〇〇〇ゆき」

T君が、上履きに書かれた私の名前を読んでいたのです。「早く友達ができたらいいね。」と言いながら、色んな物に丁寧に名前を書いてくれていた母の字です。

私はとっても嬉しかった。
いろんな意味で嬉しかった。

追い詰められた空気と私の心の中に、
T君が声に出して読んでくれた私の名前によって、一瞬で光が差し込んだようでした。周りの声や自分の不安を超えて、自分の存在そのものを、受け入れてもらえたような気持ちだったのだと思います。

結局、T君とは4年生だった1年間だけが同じクラスでした。でも、その1年間で一緒に遊んだり勉強したり、同じ班になって活動したりして、とても充実しました。お陰でクラスにも馴染めました。私が失敗をして、誰かが私に何か言った時も、上手くスルーをしてくれて、私の失敗そのものを、周りに広げないようにしてくれるさりげない優しさで守ってもくれました。たった1年間でしたが、転校という大きなハードルを乗り越える、強い支えとなった、心に残る存在でした。

きっと昨日は、大切な人たちに、お誕生日をお祝いしてもらったことでしょう!

Tくん、お誕生日、おめでとう!
あの時は、本当にありがとう!

転校という経験は、とても辛かったですが、経験の賜物として、その後の転校生の気持ちはやはり痛いほど分かるようになりました。大人になって転勤や転職等で、途中から職場へ入って来られた方への配慮の大切さもしみじみ思います。環境が変わるということは、人間にとって本当に大きなもの。でもその時、誰かが側に居てくれた、逆境とも言えるその場所で、その存在があたたかさとなって背中を押してくれ、一歩ずつ確かな歩みとなっていくのです。

私もあの時の、
Tくんのようでありたい。
そう思いました。

そして、感謝なことに、神様は、いつも共にいると言ってくださっています。

「私はあなたとともにいて、あなたがどこへ行っても、あなたを守り、あなたをこの地に連れ帰る。」(創世記28:15)




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