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アウトオブコントロール

晴れた朝は気持ちいい。
雲一つない青空は泣きたくなる。
シンプルに整理できることも、筋の通らないこともごちゃ混ぜだ。
時折、ずっと前のある場面、ある瞬間の感情を思い出す。
どうしてあんなに笑っていたのか。
なぜあのメロディーに涙したのか。
作り笑顔に隠した軽蔑。

ある朝、交差点で手押し信号のボタンを押してぼんやりしていた。
桜の花びらが落ちている横断歩道に、空ペットボトルが落ちていた。
誰かが捨てた500MLのやつ。
行き交うクルマの風圧で、あっちにこっちに忙しく転がり始めた。

カランコロン、カランコロン。
車にひかれそうでひかれないペットボトルに目が離せなくなった。

カランコロン、カランコロン。
ガーッ。
大型車が過ぎる瞬間大きく跳ねたペットボトル。巻き起こった風で花びらが舞う。
まるで、力の及ばない者に弄ばれている、あるいはそう思い込んでいる俺の情けないハート。それとも巨悪に立ち向かう正義か。

青信号を忘れて見つめていた。
俺の頭の中で膨らむ切なさと、体の中が熱くなる感覚。
信号はまた青から赤へ変わった。
見上げるとどこまでの青い空が広がっていた。

と、ギュっという音と共に、目前を左折していった車の後輪がペットボトルを潰して去った。

※2015年4月

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