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とんぼ返りの雪国

目的地最寄りの佐々木駅は、新潟駅から白新線で40分。雪で真っ白なホームに降りマスクをはずして深呼吸をした。花粉のないキーンと冷たい空気が気持ちよかった。早朝出のとんぼ返り出張だ。

用事を済ませて佐々木駅へ戻るタクシーの中。着く少し手前から1時間に1本の2両編成の車両が走ってきたのが見えた。
タクシーを飛び下りて小さな駅舎に駆け込むと、朝覚えてくれていた駅員が、「大丈夫ですよ、これを持って行ってください」と乗車証明と書いてある紙切れをくれた。

切符を買わず改札を抜け、ホームに停車中の電車に駆け寄ると、行きの電車にはあったドア横のボタンがない。一瞬焦ったが、凹んだ取っ手部分を横に引いたら、すっとドアが開いた。乗り込むとすぐに出発した。

席の半分が埋まっていて、頭を深く落として寝ている女子高生の向かいのボックス席に腰を下ろすことになった。曇った車窓から眺める銀世界に束の間の雪国気分だった。
向かいの子が静かに顔を挙げた。クレヨン描きのようなメイクと下唇に銀玉のピアス。眠そうに上目使いでこちらを一瞥し、また頭を垂れた。
新潟駅でチョコレート味の柿の種を買って新幹線に乗った。上野駅に18時に着いた。

※2015年3月


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