読み返した本がきっかけで・・・

沢木耕太郎が旅をテーマに10人と対談している「貧乏だけど贅沢」(文春文庫)の中で、高倉健が、仕事でリスボンの西のカスカイスという町へ行った時、作家壇一雄が住んだ漁村に足を延ばしたエピソードを挙げて、今一番行きたいのはポルトガルだと話していた。

10年前にポルトガルへ一人で出かけた時、リスボンからの鉄道の終着駅がカスカイスで、そこからバスに乗り換えてロカ岬へ行ったことを想い返した。40歳だった。

ユーラシア大陸の最西端のロカ岬では、その地に立った証明書を現地の郵便局が発行していて、裏面には「ここに地終わり、海始まる」という高名な詩人のフレーズが世界中の言語に翻訳され併記されていて、僕も購入した。

沢木が書いた、バックパッカーのバイブルと言われた紀行「深夜特急」は、アジアから陸路旅を続け、最終章で大陸の果ての岬にたどりつき旅を終える。僕は20代の頃影響を受けた本の舞台に立ちたくて、ロカ岬に行った。いや行ったはずだった。

懐かしさにインターネットで検索していたら、なんと、「深夜特急」で沢木が旅を終えた岬は、ポルトガルではあるのだが、サグレスというロカ岬からは360キロ南の地点だった。

本に影響された日本の若者が今も訪れるというサグレス岬の、いかにも大陸の果てらしい荒涼な感じの写真をパソコンで見ながら、俺もまあいい加減だなあと苦笑い。

いつか行き直さなきゃ。

※2015年2月

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