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Z世代に伝えたい「素直にバカになれ」という教え

「令和の時代に何いってんだ」と思われるかもしれない話をさせていただきます。

組織のなかで、人間関係がうまくいかないことがある方は、今回のnoteが少し役に立つかもしれません。

また、社会人として学び、成長することにも影響する可能性があります。

今回は、この経験がなければ平社員からステップアップすることが絶対にできなかった、板前一年目、入社後3ヶ月時点の体験について書かせていただきます。

1600文字程度の短い文章です。

最後までお読みいただけますと幸いです。

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「なんでお前は素直にバカになれないんだ」

喫煙スペースの隙間で私のスネをちょこちょこと蹴りながらマネージャーがそう言いました。

私はピンとこず、えっと……とモゴモゴしていています。

「お前はさっきのテストに不合格だった」

何のことだかさっぱり、です。

「わかんないの?」

わかりませんとはいえない(※否定後を使うなとマネージャーから厳命されていた)ので、必死に考えます。

マネージャーの熱量がすごいので、直近の出来事である可能性が高いです。

もしかして、アイデンティティの意味、間違っていましたか……?

「アイデンティティって何のことだか知ってる?」とマネージャーが従業員5人に聞いていました。

その5人全員が、わからないと答えます。

そして6人目が私。

カタカナ用語集の最初にある「アイデンティティ」を答えられないはずがないのですが、意味が間違っていたのでしょうか……?

「お前は何もわかってないな。なんで先輩方が誰もわからないことを、お前みたいな新卒が正解するんだよ」

ハッとしました。

「だからお前は可愛がられないんだよ」

当時の私は、新卒社員のなかで、誰よりもモチベーションの高さをアピールし、最速で魚に触ること(※板前は寿司の要であるネタに触らせてもらうまでが大変)を目指していました。

早くお店に行き、自分の仕事を最速で終わらせる方法を模索して実行し、時間をつくる。

誰よりも早く、確実に終わらせる。

取り組みにより明らかに本部が期待を示してくださっていて、従業員との関係も悪くはないので私としてはそれなりに可愛がってもらえていると思っていました。

「お前さ、やる気があるのはいいけど、俺のなかではまだまだ全然だな。可愛くないもん」

可愛いって何。

率直にそう思いました。

可愛さのどこが大切なのか、当時の私はさっぱりわからなかったのです。

「ダテ(※仮名、幹部候補採用の先輩であり直属の上司)はお前くらいの頃、なんでも『わかりませーん! すいませんすぐ終わらせるので教えてください!』って言いながら走り回ってたよ」

ほとんど間違いがなく想像することができると思いました(私にだけとても厳しいですが)。

「だからあいつは出世した。やる気とか仕事ぶりだけならお前も負けてはいないけど、お前には決定的に可愛さが足りない」

可愛さ……。

「素直にバカになれよ! 知ってることでも知らないふりをしろ、そうすれば相手が教えてくれるだろ、どんな仕事も正解は一つじゃない」

ハッとしました。

「お前みたいな新卒が、学ぶチャンスを自分から捨ててどうすんだ。全員に可愛がられれば、それだけ学ぶチャンスが増えるだろ」

ぐうの音もでません。

「だからお前は、素直にバカになれ」

マネージャーに、「今この瞬間から変われ。お前ならできる」といわれ、私はその後、知っているという答えを封印しました。

すべては学ぶチャンスを失わないために。

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成長するためのきっかけを与えてくださる上司がいたことは、私にとって大きな幸運でした。

また、「あの子変わったね」と思い、さまざまなことを教えてくださる方々に恵まれたことも。

入社一年後、私は店舗異動になります。

「栄転です。おめでとうございます。これからも素直なバカでいてください。学びべきことはなくならないんだから」

この言葉は、異動前の最終日に、マネージャーからいただいた言葉です。

いまは業界・職種のまったく異なる仕事をしていますが、いまでもよく思い出します。

心身を鍛え、社会人としてやっていける人間になるために、私は社会人最初の修行をするために板前になりました。

あれから10年ほどが経ちましたが、いまも変わらず、その言葉が私を支えています。

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