見出し画像

山梨/スーパーカブ/OGRE YOU ASSHOLE

山梨と長野に行ってきた。車で。実質ほぼ旅行みたいな感じだった。まず車で片道4時間ぶっ通しで運転してどっか行くってのがよくよく考えると初めてだ。運転する量考えると結構憂鬱だったけど実際は高速道路沿いにどんどん移り変わる景色を眺めて色々想像するのがとても楽しかった。首都高も八王子の方とか初めて走ったけどある程度都会なのに奥の方にそびえ立つ明らかにデカすぎる山々や富士山がちょっとずつ見えてくるのと鉄塔の数が尋常じゃなくて東京とその外側の境界って感じがわかって楽しい。山梨に突入すると今度は山岳地帯に囲まれるのだが、山がデカすぎて千葉の3倍とかあるので(体感)、空の方が面積狭くなるのが衝撃だったしとにかく圧倒的で震えた。デカすぎる自然ってそれだけで怖いので、古の人たちが畏怖の念を抱いたり想像を膨らませたのも納得した。あとトンネルだらけの山抜けてから笛吹〜甲府といった山梨の都会ゾーン入ってから、平地にとにかく果てが見えないくらい家が続いている広々とした景色も荘厳だった。山ゾーン長かったのもあってかなりカタルシスがありハンドルを握る力が強くなった。千葉も山が多いけど、中学生の自分の足でも山頂にいけてしまうくらいの高さだったのに対しこちらはもう次元が違う。千葉は割と山に沿って住宅街が登るように段を作ってるイメージがあるのだけど(房総半島の話です)、こっちはもうそういう規模じゃないので山があるとことないとこで極端に分かれてる感じがして町は住みやすそうだなと思った。それくらい長いこととにかく住宅街や繁華街が高速越しでもわかるくらい続いていた。田園地帯と町が完全に切り離されて孤立していた帯広を思い出した。帯広はその構成からポケモンにおける田舎道の〇番道路を抜けた先にいきなり都会の〇〇シティとかが出てくる感覚とかなり近かったことを思い出した。こうやって高速で通り過ぎた町がどんな場所なのか、宿に着いてから色々調べて市の背景や施策や何に力を入れてるのか調べるのが楽しい。暮らしを想像するのが面白い。このあと山梨県北杜市に着弾したのだが宿まで時間があったので色々と回った。その過程の中で聖地になっているスーパーカブというアニメの聖地巡礼マップという名の無料とは思えないボリュームのパンフレットをもらうため市役所に寄る。さっきのことを思い出してこの市にもどんな背景があるのか知りたくて、そのマップ以外にも北杜市に関する色々無料の資料とかをもらってパラパラ読むのが面白かった。無職になったことで地元の市役所に色々手続きに足を運ぶことが多く、色んな課が色んな資料を用意しててそれを読むのが結構楽しかったことを思い出す。なにげなくやってきたこともちゃんと繋がってるなと実感する。北杜市は正直何もない。自分が住んでいる富津市より田舎だなと思ったし、まともなチェーン店はガストとバーミヤンしかない(とは言ったが、富津市もモールを除くとチェーンの飲食店はガストしかなかった)。モールもなく、市内に本屋も無かったが、逆に地方ならではのスーパーや薬局が多い。和菓子屋もカフェもいくつか見かけた。スーパーカブというアニメはとても低体温で、高校生の女の子がカブを手にし普段自転車と徒歩ではいけない範囲に足を延ばすことで徐々に生活が豊かになる等身大の喜びが、控えめに少しずつ伝わるすごく暖かい作品。すごく淡白な性格で描かれる主人公子熊がカブを見てニヤける姿がこちらも頬がほころぶ。通りを歩いてるだけでも作品の背景と住人の生活を確かに感じられてとても楽しかった。あと景色が良い。やっぱり常にデカい山々があるのが良い。標高が高すぎるため5月現在でまだ上の方に雪が残っているのも見える。しかしどこに行っても山々という"壁"があり、それゆえの閉鎖感も実際ある。だからこそ、足を手にしたスーパーカブの小熊の気持ちやあの感動が少しわかるような気がした。

聖地巡礼で回ったところです。どこも良い。また行きたい。市内でもいくつか山を跨いでいてトンネルが多い。ライトつけっぱなしで走ってくる車も多くてもうすぐトンネルがあるってのがすぐわかるのが面白い。せっかく県外にきたのでどんなナンバーの車が走ってるか気になって意識してみたら、最初に出てきた車のナンバーが"習志野"で全然千葉県内で見かけるやつだったのも笑った。今回は長野でライブがあるためそれの前入り&せっかくなんで探訪って感じだったのでわざわざ観光にくる町ではないのは間違いないが、個人的にはとても楽しく、来てよかった。旅行に苦手意識があった。観光もそこまで好きではなかったが、それは観光地自体にあまり惹かれていなかったのも大きい。実際は行く過程、通り道にある色んな町から想像を膨らませてその反復の中で考え事をするのが楽しい。観光地云々ではなく、そもそも一人旅が向いてるなと思った。

宿がやばくてすごかった。相場からはありえないくらい爆安だったので嬉々として予約したけど、到着してからまず営業してるんだかしてないんだかわからないくらい寂れた場所にあってびっくりした。ホテルって名前にはついてるけど完全に中学生の頃に宿泊学習で行った少年自然の家だった。今日泊まるのは俺一人だけって言われて結構怖かった。場所は清里っていう完全に辺境の地で、観光地なので近くに色々楽しいところはあるんだけど山岳地帯の標高1300メートルの場所に位置したエリアなので近くに住宅街が全くない。というかたぶん人は住んでない。駅も完全に観光地として作られたもので土産屋がたくさん並んでいるのみだ。コンビニは一応あるが12時で閉まるし、人里まで車で15分くらいかかるのでアルバイトの人も応募できる人限られそうで大変だろう。北杜市は先ほどのスーパーカブの舞台になった武川町というエリアから、この清里と、もう一つ観光地になっている小淵沢(クラムボンで有名なとこでもある)があり、清里と小淵沢は観光地として住む場所と完全に隔離して割り切っているように思う。それぞれの駅周辺を散歩していて思った。車なので駅に行く必要はないのだけど、でも駅を探訪するのって結構その土地がどんな場所なのかわかる気がして楽しい。もし次また車で旅に出ることがあっても絶対やりたい。宿の話に戻るが、こんだけ人里と断絶されてると何が起きても助けが呼べないだろうし普通に電波も悪いので心細さがやばい。宿はおじいちゃん一人が経営していてワンオペなので朝飯の時間も風呂の時間もおじいちゃんが全て用意するので全部事前報告しないといけない。あとなんかめちゃくちゃ話しかけてきて良い人でよかった。話が弾んで、結構楽しい。一番やばいなと思ったのは部屋に鍵がないこと。あとスリッパ式なのに靴のロッカー的なのもなくて、玄関に置きっぱなしにするか側面の棚に放り込んでくださいと言われたのもびっくりした。まぁ少年自然の家的なやつなので・・・。あと男子トイレは和式便所しかないけど、今日は俺一人だからうんちするときは女子トイレの洋式使っていいよって言われたのもちょっと笑った。ロビーの電気が明らかにパワー足りてなくて少し薄暗いのも怖い。替えてほしい。チェックアウトは10時のはずだけどお寺に役員の用事があるから早めに締めるので9時くらいには出てってほしいって言われたのもマイペースでおもろい。問題ないけど予約の時点で伝えてほしい。

色々不安でしたが、朝飯はおいしかったし爆安だし、おじいちゃんは良い人だし朝もたくさんお話ができて町のこと、暮らしのこと、疑問に思ってること聞けたのでOKとしましょう。北杜市の人はモールに行ったり、娯楽を求めるには隣の韮崎市というとこまで行くことがほとんどらしいが、その韮崎もモールの中身が半分スカスカだったりするらしく、結局1時間近くかけて甲府まで行くことが多いとのこと(ちなみに韮崎はNIRASAKIって表記で青看板がそこら中にあり見かけるたびにNARASAKIがよぎってDear Futureを聞いたりしていた)。ブックオフも甲府まで行かないとない。ブックオフも遠征すると必ずチェックするためどこにあるか、山梨来る前に調べたのだが今回は断念した。大変だなと思ったけどもう住んでる人にとっては当たり前で、でもよく考えたら、昨年自分が引っ越してきた地元の富津市もまともな大きいモールに行こうと思ったら木更津まで行くことが多い。自分は富津市の中でも木更津寄りに住んでるため30~40分でいけるが、南房総寄りの下の方の富津市に住んでる人達は結局1時間かかる。一言で市と言っても広いので、エリアを分けて想像するとなんとなく実感が沸く。翌日9時に出て、長野のイベントは2時からのため大分時間がある。泊ってた清里はペンションだったり、あと山に合わせて作った見晴らしのいい展望台や施設が多くて観光地としてはかなり楽しい。小淵沢もデカすぎる道の駅やリゾナーレっていうイタリアの街並みを再現したプチモールがあって面白い。イラストの構図に使えそうな写真をいっぱい撮った。あと色んなとこに博物館や美術館が多かった。でも正直景色のフェチとしてはいかにも観光地っぽい作られたとこではなく、最初のスーパーカブの舞台の寂れた地元の駅やそれに連なる住宅街、そして団地とかが一番グッとくるものがある。そういうのが見たい。別に地元でもいいんですけどね。自分が描く絵の元になってるのもそういう場所ばっかだし、そこを描きたいなって思うから、それもあって今まで旅行という行為や観光に食わず嫌いてきなとこがあったのかもしれない。高速から見える街の背景やルーツが気になるし、そこを調べるのが一番楽しかったこともあんま無関係じゃない気がしてくる。自分を省みることができたのも今回の旅の収穫だったと思う。気づくことが多い。

長野。OGRE YOU ASSHOLEが主催したDELAY2024っていうライブイベントが原村で行われ行ってきた。原村についてはマジの山岳地帯の渦中にある壮絶な田舎みたいなイメージがあってそれはOGRE YOU ASSHOLEのインタビューで度々語られている。あの音楽性のルーツとして確実にその場所が影響を与えてるのが文中からもよくわかるけど、そこに行けるってのも大きい。宿のおじいちゃんが言ってたけどペンション流行ったときにたくさんの人がそこにペンション立てまくってたらしくて昔は200近くあったとか。その自然公園もペンションが立ち並ぶ一介のゾーンの中心にドンとある感じでつくばロックフェス行ったときのことを思い出した。ビル街もないガチの野音。車で通った道は完全に山道で人が住む場所とすら思えなかった。でも自然公園に原村のパンフレットがあったのでもらって読む。農園がたくさんあり、そんなに大きくないけど普通に住宅街もあるみたいで、原村と言えばD.A.N.やBlack Boboiや鬼の右腕など数々のオウガとの対バンで共演していた小林うてなさんも出身地で、そもそもそこが縁だったというか(音楽性が近いのも面白い)、小林うてなさんが赤ちゃんの頃から出戸さんたちは知っていたらしく地域のコミュニティを感じさせる。せっかくだからどんな町並みで育ったのか見たくなって(先日までのスーパーカブにまつわる住宅街探訪が楽しかったのも大きい)、行く前に寄ろうかと思ったけどロケ的にほとんどのお客さんは車で来るし混むだろうなと考えると今回は断念した。方向も逆だし。資産的に余裕があればもう一泊して原村の街並みと、そのまま隣の茅野市、諏訪湖と長野側を観光してもよかったかもなとちょっと後悔した。後日グーグルマップのストリートビューで少し住宅街を散歩したら家がギュッと狭いとこに並んでいて、道幅がほぼ一車線じゃんというくらい狭くてこの感じすごく地元の富津市っぽくて親近感が湧いた。山梨も同じくらい田舎だったけど道幅が広く整備されてたのが印象的でそこはまるで違ったのもあり、ちょっと懐かしくもあった。会場、駐車場争奪戦になるだろうなと思ったので近隣に宿泊したアドバンテージを生かして開場2時間近く前に駐車。大分時間が余ったが、会場になった八ヶ岳自然文化園は遊歩道が多く、散歩できる場所がかなり多いんでライブ始まるまでずっと散歩していた。ライブはオウガの他にジム・オルークと坂本慎太郎で、駐車場でジム・オルークが爆音でアンビエント~エレクトロニカをリハで流していてこの時点でかなり異世界。遊歩道が結構会場から切り離されている上にとても広く、完全に山沿いの林に無理矢理道を作った感じでここ歩きならジム・オルーク聞きたかったなと思った。

遊歩道。他にもデカい公園とかドッグランとかグラウンドとか遊び場が割とあってベンチや机も多く過ごしやすい。ほとんどのお客さんはそのエリアで時間をつぶしていて、遊歩道はこんなに広いし、既にたくさんの人が来てるのが信じられないくらい誰もいない。快適だった。

整理番号良かったので序盤に入場したのでこれでしたがあっという間にいっぱいに。1200人キャパだったらしい。子連れが多いのが印象深くてジム・オルークで一番前陣取ってる小学生の女の子二人組がいてびっくりした。音うるさいと思うので少し心配だった。ライブもすごくて散歩しすぎて足疲れてたので後ろの方で芝生に座って見たんだけど完全に流体のアンビエント~エレクトロニカを行き来する異次元で途中硬質なOvalとも言いたくなるヘヴィなIDM化する場所があって圧巻だった。坂本慎太郎はファンの熱気がすごい。自分も初めて見れた感慨深さがある。オウガの三部作以降のセルフプロデュース期、ハンドルを放す前に以降の作品は坂本慎太郎のソロ作品らと並べて語られることが多く、実際自分も近しいものだと思っていたけど、ライブのアプローチがそれぞれ全く違うためあくまで録音物としての形態の印象というだけで根っこから違うものがあるなと痛感。そもそも自分はオウガがポスト空洞ですみたいな語られ方をするのも色々違和感を覚えていた。ソロに関しても、ライブを見てから音源を聞き返すことで新しい発見がとにかく多く、坂本慎太郎、ずっと「歌」を大切にしてるアーティストなんだなというのがライブで伝わった。言葉の強さもある。ソウルのイメージがより強くなった。メロウすぎずカッチリとタイトに決め過ぎないライトなソウルという感じ。リズムも音源の淡白な印象は乾いた録音と相まっていたのも大きかったけど、だとしても、そぎ落とされていたとしてもこれは「ミニマル」ではないなと思った。オウガはミニマルですよね。明らかに。坂本慎太郎に関しては盛り上がりどころっぽいとこでもずっとクールにフレーズを弾き続けている。ミニマルっていうよりはクールという方がしっくりくる。この、熱を上げすぎない、平静を維持しながらもじわじわと熱を帯びていくライブの感覚がたまらない。ちゃんとフロアは暖まる。坂本慎太郎はギターソロを弾くシーンが多くそれも印象的だった。ゆらゆら帝国とはアプローチの仕方がまるで違うが、それでもやっぱりギターヒーローとしてステージに立つパフォーマンスが死ぬほどかっこいいなと飲み込まれるものがあった。ホーンのソロパートも割とありとてもかっこいい。なんだかんだやっぱり熱い。オウガは相変わらず圧巻で今回また集大成的な側面もあった。朝、盛りすぎていて最高。本当に見る度に違う曲になってる。イントロに知らないギターフレーズが追加されていた。音源通りの3~4分が終わったあと、ライブでは本番と言えるアウトロ(これで10分近くある)で反復のパターンをいくつか繰り返したあと、一回音を引いて"静パート"を作ってからもう一回盛り上げるシーンがあるのだけど、この静パートの部分がかなり変わっていた。ドラムやベースの規則的なリズムの反復を一回やめて、前後不覚になるようランダムに音を配置したような、ふわふわとしたちょっと不安になるようなアレンジに。そっからいつも通り統一されたリフでいきなりリズムを同期して展開するという感じでかなりかっこいい。最初から最後まで曲の真ん中にある一本筋を一回ここで解体する感じで、クラブミュージックっぽくはなくなった。あとギターリフは同じフレーズのまま途中音色を変えるシーンがあったり、ベースのパターンもかなり変わっていて一回溜めを作るみたいなシーンが増えて全体的に動きが多くなったように思う。アウトロもベースが大暴れして見えないルールの馬淵さんのギターソロのベース版と言いたくなるくらい、とにかく弾きまくるシーンあって、清水さんかなりフィーチャーされていた気がする。素敵な予感という超絶不穏な曲やってる横の林で子供達がチャンバラしてるのも面白かった。危ないからやめた方がいいと思う。あと個人的に今のモードでやるムダがないって素晴らしいがかなり好きだ。前回(昨年12月)見たときもそうだったが、イントロのギターリフが完全に無形になっていて、それ以降も同じくアンビエントみたいに音色漂わせるだけという感じになっていて、スカスカのリズム隊二人のグルーヴが映える形に。結果的に間奏におけるミニマルなギターソロに少し抒情的な雰囲気が加わった気がして、アプローチは同じながら構成を変えることでソロのカタルシスが増したような気がする。あと待ち時間~家の外がもう完全に新しいアンセムとして完成されていて、朝やフラッグをライブでアレンジし続けることで積み重なったものが完璧に出力されてるような気がした。タイトで、カッチリとしたファンキーなギターがとにかくぶち上がる。演奏は平静を保っているのに、展開の妙で聞いてるこちらはぶち上がらざるを得ないというのが良い。最後は見えないルールへ。いつも通りヤバいっす。何も言うことが無いくらい最高のアンセム。あっという間の70分だった。特別なロケだし主宰イベントだし久々にロープ聞けるかな~とか思っていたけどそれは全然なかった。あとアンコールでバランスやったの泣いた。山梨や長野の山岳地帯をドライブしていてこの大自然はバランスとかピンホールとかが本当にぴったりだなとか考えていた矢先、ラストのラストが地元で演奏するというのがにくい。全く想像してなかったので、マジで良かったです。地元だしなんかもっと長くやるかなとかもう一回アンコールあるかなとか長いMCあるかなとか思ったんですが、普通に全然無かったです。それもオウガっぽいですね(ちゃっかり新アルバムが完成したのでもう少しで出ますという驚きの情報も)。

そのまま4時間運転して帰って寝ました。死ぬほど疲れた。離れるの恋しいくらい楽しかったし濃い2日間だったけど帰りは景色も見えないしあっという間でした。これを書くのも疲れたので終わります。ありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?