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お刺身舐めクワガタ


昨年の夏、クワガタが刺身を食べるシーンを目撃した事がある。

ベランダに置いた漬物樽の中に砂を入れ、そこでヒョウタンゴミムシを飼育していたのだが、ある日その中にコクワガタの雄が入り込んでいた。

普段は金網と鉢底ネットを組み合わせた蓋をしているが、隙間から侵入したようだ。

侵入したコクワガタ


その侵入は何日か前に行われたのだろう。
コクワガタはあまりにも飢えていたようで、ヒョウタンゴミムシの餌として消費期限の切れた刺身を投入したところ、ヒョウタンゴミムシと遜色のないスピードで真っ先に刺身に駆け寄り、ブラシ状の口で舐め始めた。

刺身を舐めるコクワガタ

ヒョウタンゴミムシ自体がクワガタに似ている事もあって、共に並んで刺身にありつく姿は一瞬だけクワガタのペアにも見えてしまう。

クワガタによく似たヒョウタンゴミムシ


コクワガタが刺身を食べたこの観察例は、恐らく数日続いた飢餓状態故に水分を求めて起きたもので、そこそこイレギュラーな状態だろう。

しかし、樹液や果実等から得られるエネルギーやタンパク質(をさらに分解したアミノ酸)は少ないと思われるので、上記のように魚(動物遺体)を食べるクワガタが野外において100%見られないとは言い切れない。

海岸付近の森林に住むクワガタが砂浜に打ち上げられた魚の死体から水分(及び栄養)を得ようとするシーンは、この世のどこかに存在していてもおかしくはないと思う。
以下のようなシーサイドの宿泊施設にて、海面の真上にあるベランダに夜中、何匹ものコクワガタが飛来していたのを見た事があるので、その際に「意外と海岸にもクワガタがいる」という情報を知った。
そして一体何匹のコクワガタが海面に落下したのだろうか。

夜間にコクワガタが飛来していた海上のベランダ


元々、クワガタのメスは繁殖期に他の昆虫や同種を襲って食べる例がいくつも目撃されているし、生肉や蛹粉を用いたピットフォールトラップでもクワガタ(主にメス)が入る事もある。体内の卵が育つのに必要な動物性タンパク質を補給するためだとも言われている。
夏場に雨がほとんど降らず樹液が分泌されないような年は、クワガタのオスが消極的ながらも動物の死体から水分と栄養を得ている場面というものが見られるかもしれない。


ちなみに、近年は高タンパクゼリーが100円ショップ等でも一般的に売られるようになったが、そうでない時期に発行された古めの飼育本には「オオクワガタのメスにはカブトムシの蛹を与えよう」といった旨の記述さえあった。
現在は高タンパクゼリーで事足りたり、ミルワームで代用される例も多い。


当時はそれを読んで「カブトムシを与えるのは勿体無い」だとか「かわいそう」といった幼い贔屓感情を抱いていたが、まさか20年以上後にカブトムシ幼虫を希少種アオヘリアオゴミムシの餌として与えなければならない場面が発生した際にもその感情を引き摺る事になるとは思わなかった。



おまけ

ヒョウタンゴミムシ飼育容器の蓋を開けて掃除をしていた際、動物の死骸の匂いを感じたアカボシゴマダラ(特定外来生物)が飛来した。

家の前の路上で轢かれていた昆虫等を次々に投入しているため、それを日常的に啜っている蝶を誘引する事もある。

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