海を渡るサワガニ
少し前に『サワガニは陸路だけではなく海流分散によっても生息地を拡大させた可能性が高い』という研究報告が公開された。
詳細については上記プレスリリースを確認していただきたいが、要点としては以下のようにまとめられていた。
特に驚いたのは淡水性のカニであるサワガニに塩分耐性があったという点だが、そう言われてみると辻褄が合うような経験もある。
過去にヒョウタンゴミムシの繁殖を行った頃、追加の種親を採集するために海岸へ訪れた際に、淡水の染み出す岩場にてサワガニと遭遇した事がある。
そこは確かに淡水の流れる場所であったが、満潮になれば簡単に海水に飲み込まれてしまうような小さな岩場だった。
自分はその時に「川が増水して海に流されたサワガニが塩分でダメージを受けながら命からがら淡水の染み出す岩場に辿り着いた」「次の満潮時には死んでしまうかもしれない」と考えていたが、前述のプレスリリースによると海水と同様の塩分濃度である環境においても問題なく生存し、2週間の実験では高い生存率が示されたと記述がある。
また、海流分散ではなく陸路で分散したと考えられる集団においても高い塩分耐性が示され、サワガニという種全体にそうした潜在能力がある事が分かった。
となると、先程の海岸のサワガニも問題なくその場所を生息地として選んでいるのだろうか。
茨城県エリアにおいては八溝山地に生息するサワガニがオレンジや褐色である事が多いが、かつて香取海だった低地エリアの数箇所に生息するサワガニは体色が青白い集団であったというケースを何度かこの目で目撃した事がある。
距離としてはあまりにも大きく離れているというわけでもないが、不思議な事に体色が極端に異なる。
サワガニの体色が決定される要因に関しては様々な説があるため断言をする事はできないが、黒潮によって分散されたと見られる伊豆半島や房総半島の集団も青白い体色をしているため、旧香取海内陸エリアの青白い集団もそれらと同様の経路による拡散であるという可能性が考えられる。
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