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カワニナとカワモズク



こちらはカワニナとシジミの殻、その手前に漂うモズクのような藻類はカワモズクというらしい。
実際にモズクのようにして食べる文化も存在する。

シジミ殻、カワニナ、カワモズク

自分は完全初見の生物を発見した際に脳内のフォルダ内からそれらしい生物名を探したり、自分だったらこう名付けるだろうなと感じる和名を一度考えてみる事が多いが、ちょうどこの藻類に対しては『◯◯モズク』と名付けるだろうなと考えていた所だったため、後からその和名を知って驚いた。
このように外見から推測しやすく、非常に分かりやすい和名はよく印象に残るので忘れ難い。

ちなみに、生物の特徴から自力で考えた和名がドンピシャで当たった事はヒメウマノオバチのたった一例しかない。

ヒメウマノオバチ



カワモズクについて調べてみた所、他にもアオカワモズクやチャイロカワモズクなどの種類が存在する事を知ったが、それら3種は全て準絶滅危惧種となっていた。

どうやら湧水が発生しているような環境を好むようで、この場所はその典型例だった。
その後もいくつかのポイントでカワモズク類を発見したが、やはりカワニナやゲンジボタル、オニヤンマ幼虫が生息するような場所で共に見られる事が多い。
昨今、そのような環境はソーラーパネルの設置のために直接開発されてしまう、または近隣の山林が切り拓かれて湧水の水量が激減してしまうというケースが多発しており、ホタルやカワニナと共にカワモズク類もその煽りを受けている。


また、カワモズク類を初めて発見したポイントでは外来カワリヌマエビ属が多く見られた。
ペットショップ等で『ミナミヌマエビ』の名で販売されているエビで、実際はそれに近縁な中国由来の種類である事が多い。『シナヌマエビ』とも呼ばれる。
このポイントは関東地方であるため、ここにいる個体は少なくとも西日本に自然分布する本来のミナミヌマエビではないだろう。

赤いカワリヌマエビ属
青いカワリヌマエビ属

個体によって体色の差が激しい。
ペットショップで販売されているレッドチェリーシュリンプの原種であるという報告にも頷ける。
ただし、カワリヌマエビ属は環境や体調によって体色が大きく変わるため、今回の例は品種改良によるものではないだろう。

外来カワリヌマエビ属は今やあちこちで見られるようになり、県内の河川や水田、用水路等でも当たり前のように生息している。
カワモズク類を発見したポイントはそれらから離れた山林の中だが、どうやら遡上して定着したらしい。春夏秋冬どのタイミングで来ても観察できる。

カワモズク類にどんな影響があるのかは未知数だが、あまり良い影響は無さそうだ。個人的には歓迎できない。
しかし、その生息数の多さから同所に生息しているオニヤンマ幼虫の重要な餌資源となっている一面はある。
…とは言っても、それは在来のスジエビ類のニッチに影響を及ぼしているという事の裏返しでもあるため、やはり手放しには歓迎できない。

外来カワリヌマエビ属を捕食する
オニヤンマ幼虫
背後にはエビのアスタキサンチンを含む
赤い糞が見られる。


自宅周辺にも外来カワリヌマエビ属は定着しており、今や生息していない水域はほとんど存在しない。
自分が対策してもすでに無意味な段階ではあるが、飼育する際はどんな事故があっても絶対に逃がさない、逸出させない管理を心掛けたい。

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