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好きにならずにいたかった、あなたを知らずにいたかった-indigo la Endの切なくも美しい失恋ソング3選

川谷絵音の曲の虜になったのは、2016年1月に世間を騒がせた報道がきっかけだった。
テレビのニュースで連日BGMとして流れている、ゲスの私以外私じゃないのとかロマンスがありあまる、おしゃれだなあと思って聴いてみたらどハマり。
絵音さんはバンドを掛け持ちしていて今となっては5つとか6つに増えたけれど、indigo la Endが当時もう一つのバンドとして活動していたものだった。それが一番好きな川谷バンドになった。
もう一つのなんて書き方をしたらゲスがメインでindigoがサブみたいな感じになるけど、メインはこれとは絞りきれず彼の活動は全てに違った良さがある。indigoが彼のバンドで1番歴が長い。このバンドは2010年結成で今年で13年。ゲスは2012年結成で11年。どっちももう長いことやってるんだなあ。
indigoは別れは切なくて痛い、でも美しくもあるという価値観の歌詞を書く。そして絵音さんの天才的な言葉遊びのセンスが素晴らしい。
深い歌詞の曲を3つ選びました。

夏夜のマジック

ワンマン、夏フェスでは必ずやるindigoファンの中では定番の曲。
バンドメンバー本人が出てこないMVはあまり見ないのだけど、桜井ユキとみなとみらいの街並みがindigoに似合いすぎてお気に入り。再生回数もこのバンドの動画で一番だ。

記憶に蓋をするのはもったいないよ
時間が流れて少しはきれいな言葉になって
夏になると思い出す別れの歌も
今なら僕を救う気がする

5年前、大学1年の終わりに経験した恋人との別れは散々だった。半年にも満たない交際期間の末に浮気をされた。
私に内緒で女と二人で遊びに行って、告白されたのでその人と付き合いたいと言われた。水面下で行動されて自分は捨てられて、向こうが幸せになる最悪パターンだった。頭を殴られたような衝撃だった。1年近く恨んで過ごす羽目になった。
当時は早く忘れて楽になりたいと思ってた。だけど3ヶ月たっても半年たっても呪ってやりたいという思いは無くならず、毎日泣いていた。もう忘れちゃいなよとアドバイスを受けたこともあったけど、その一言でバンと切り替われたら苦労してない。毎日終わった相手を憎しみ続ける自分はおかしいのかと自分が嫌いになって、悪循環だった。だけど気が済むまで憎んでもいいと思える日が来た。

忘れられないならそれでいいじゃない。
忘れられないうちは、時間の流れに身を任せておけばいい。いつか失恋を受け入れられたら、次の出会いを探しに行きな。

絵音さんに耳元でささやかれるように、こんな風に教えられた気がしてならなかった。この歌だけが、引きずっている自分を肯定してくれた。
長くなるのでここでは省略するけど、フラレただけでは気がすまないとある人と知り合ったのをきっかけに元彼氏をこらしめてやることもできた。付き合っていた4ヶ月間の3倍の時間を要したけど、そこで全てがスッキリできたのだ。

サビの歌詞に「今なら君のことがわかるような気がする」とあるけど、付き合っている最中は盲目的になって「君のことが分かる」のは難しい。フラレた側は関係が切れてもしばらく好きだから、余計に分からないものなんだけど。そうして時間が経ってから別れは必然だったと分かる時が来る。悔しいけど、そういうものだよね。いずれこうなる運命だったと受け入れられるまで苦みもがき、悩み尽くして、自分なりの答えを見つけるまでが恋の終わりなのだ。

蒼糸

元恋人と別れた年の6月に配信されたシングル。
その時点では別れて3ヶ月しか経ってないので絶賛苦しみ期です。2018年1番聴いた失恋ソングになった。
起承転結って四字熟語あるじゃないですか。
3文字目半の部首の糸が、吉に結びついて起承転結が完成して、1つのストーリーが終わるって意味を込めてこのタイトルにしたんだとか。天才ですね、川谷絵音。

大なり小なり誰もが間違う
経験とともに恋が下手になる
一番下手になった時こそ
本当に誰か好きになる

最初はこの歌詞の意味が分からなかった。いやいや、経験を重ねるごとに好きにならせる方法が分かって惹きつけるようになるものでしょ?絵音さんも恋多き男だし。(おい)
だけど今の恋人と付き合ってわかった。本当に下手になってる。前の恋人の時は付き合う前の時間で駆け引きのようなものをしていて、交際にこぎ着けた。その後どうなったかは別として。次はこうしたら距離を縮められるだろうと計画を立てた上で2人で会うようなことをしていた。相手の好きなものをリサーチして、盛り上がりそうな話題を振って。好かれるために相手に合わせていた。 

だけど現在の恋人は駆け引きが全くできなかった。もうそのまま思ったことをストレートに伝えるだけだった。社会人になった私は地元札幌にずっと住み続けると決めていた。だから転居が必要な転勤になってもついていくことはできない、同じようにずっと札幌にいられることが恋人に求める条件であると。ここを確かめて交際は始まった。いろいろな経験をして自分はこんな人間であると自覚し、譲れないものがわかったからこそ、ど直球勝負になったのだろう。ちなみに元恋人は今は札幌にいない可能性がある。
付き合う前にこんな話ができたのはマッチングアプリで知り合ったから。大学をもうすぐ卒業するって頃に登録した。自然に出会って好かれる能力がもう自分には無いと悟ったからだ。別れてから3年、大学を卒業するまでの間何もなかった。自分にとっては目的がはっきりしている場で相手探しをした方がスムーズだ。
前の相手は表面的な部分しか見れていなかったからこそ、取り繕って上手く行ったのかも。そしてその分短命だった。

夜の恋は

これは完全に最初に書いた2016年の報道のお相手に向けて作られた曲だ。

2021年にアルバム夜行秘密が出て、本人がこう言ってるので間違いない。

まだ報道が過熱していた中このことがネットニュースに載ったのだが、ツッコミを入れている絵音さん。メンタル強いですね。

ただ、1つの曲にするのは本人の葛藤もあり世の中的にも5年の歳月がかかった。そりゃそうだよね。本当に好きだったって何回も言ってたし、藍色好きさでも「君が好きだってこと以外はこの際どうだっていい」って歌詞にしてた。それが許されない恋だったなんて。
浮気されたのにどうして加害者である彼に同情してるのかと思った方に向けて説明したいのだけど、私は川谷絵音の音楽性に惹かれたので人間性はこの際どうでもいい。犯罪さえしなければ。
元彼氏は人間性を見ていたので裏切られた時の憎しみは深い。惹かれた部分の違いです。
弾き語りで歌ってたAメロ〜サビも辛いんだけど、1番首を縦に振ったのはサポートのみおとえつこが4回繰り返して歌う最後の部分だった。

好きにならずにいたかった
あなたを知らずにいたかった

一度付き合ったら生き別れか死に別れ。死ぬまで一緒にいられないなら、結ばれたくなかった。
前の恋人と仲が良かった時は一生二人でいるものだと心の底から思っていた。それを途中でぽっと出の女に乗り換えられるなんて。
1年間恨んで過ごす時間が待っているなら、愛し合う4ヶ月なんていらなかった。
出会いたくなかった。
あなたを知らない人生を送りたかった。
取った女と私、せめて出会う順番が逆だったら良かったのに。そうしたら傷つくこともなかった。それは絵音さんにも言えることだ。

2021年3月6日。コロナ禍になってから初のindigo全国ツアー。1年3ヶ月ぶりに行ったライブで夜の恋はを聴いて、もう忘れたはずの過去を思い出して涙が溢れた。
その日は元恋人と別れてちょうど3年の日だった。


余談だが、大学1年の後期の課題で文献を使って引用する形式で書くレポートがあった。自分の好きなテーマを選んで良いとのことだったので、真っ先に思ったのがバンドについて書きたい!だった。持っていたいくつかの音楽雑誌にindigoのインタビューが載っていたので、彼らのことを書こうと決めた。
そうして出来たのが、「indigo la Endの楽曲の歌詞の制作方法とは」だった。
書いていて特にいいなと思った絵音さんの言葉が、
「聴き手に余白を与えるのが好きなので。いろんな見方があるよっていう。こう思う人もいるだろうし逆に思う人もいるだろうし、いろんな考え方がおもしろいなという感じで歌詞を書いてるので。」
こういう押し付けがましくない考え方には救われた。
聴く人によって意味が変わってもいいし、
ラブソングであってもラブソングじゃなく捉える人がいてもいい。
これまで私が抱いてきた曲の感想も、本来の意味と違ったっていいのか。てか本来の意味なんて無いのか。
レポートを回し読みして感想をもらう時間で、「indigo la Endを聴いてみたくなった」と書いてもらえたのが嬉しかった。

このレポートを絵音さん本人にリプライしてアピールしたなー。懐かしい。
てかこれを送った日付を見て驚いたのだけど、2018年3月2日は例の元彼氏に他に好きな人ができたと別れ話をされた日だったのだ。
この日は本当にこの世の終わりだった。生きた心地のしない感覚がした。2018年1番の衝撃を受けた日にこんな明るいリプライをしていた自分を最近まで全く覚えていなかった。ネットにあげる言葉と、心の底で思ってることは違うものなんだね。


もしまたindigoについてレポートが書けるなら、次は夜行秘密に絞って書きたい。
私が失恋してからも、立ち直ってからも、
沢山の名曲を生み出してくれたindigo la End。
飾らないバンドだけど、そこが好き。
これからもホールやフェスで、切ないけど綺麗な歌を聴けるのを生きがいにしていきたい。

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