見出し画像

【100均ガジェット分解】(49)有線イヤホンをワイヤレス化する「Bluetoothオーディオレシーバー」

※本記事は月刊I/O 2023年4月号に掲載された記事をベースに、内容を追記・修正をして再構成したものです。

有線イヤホンをワイヤレス化する「Bluetoothオーディオレシーバー」をダイソーで見つけました。早速分解してみます。


パッケージと製品の外観

パッケージの表示

「Bluetoothオーディオレシーバー」は有線イヤホンのコーナーに並んでいました。
型番は”E-21”、 今までのダイソーではあまり見かけたことがない、男性のイラストが描かれたパッケージです。

パッケージの外観

製造元は「株式会社E Core (http://e-core2006.co.jp/)」です。

パッケージ側面の製造元表示

パッケージ裏面の仕様によると表示された表示(日本語のみ)によると、通信方式は「Bluetooth Ver5.1」、バッテリー容量は「110mAh」で連続再生時間は「約6時間」です。
ペアリングする端末は8台まで登録可能となっています。

パッケージ裏面の製品仕様

2台の端末に同時接続できる「マルチポイント」にも対応していて、同梱の取扱説明書に接続方法の記載があります。

マルチポイント接続方法(取説より抜粋)

同梱物と本体の外観

パッケージの内容は「本体」と「取扱説明書(日本語)」のみで、充電用ケーブルは付属していません。表面はスエード調で安っぽい感じはありません。
本体正面にある操作ボタンは3個、中央横にLEDとマイク兼用の穴が空いています。

本体正面

本体背面にはクリップがついていて、「技適マーク」とモデル名・製造者が印刷されています。リチウムイオン電池のリサイクルマーク表示もきちんとあります。

本体背面

動作確認のためにスマートフォンとペアリングをして音楽を再生しましたが、きちんと「ステレオ再生」ができました。密閉型のヘッドホンを接続して確認したのですが、ノイズもなく音質も素直で実使用でも問題なさそうです。

本体の分解と内部構成

本体の開封

コントローラ部のケースはツメによって固定されているので、金属製のピックを隙間に差し込んでこじ開けます。内部はメイン基板とLiPoバッテリーで構成されています。LiPoバッテリーはリード線でメイン基板に直接ハンダ付けされています。

開封した本体

LiPoバッテリー

LiPoバッテリーは保護回路内蔵の501030サイズ(D5.0mm x H10mm x W30mm)、容量は製品使用どおりの”3.7V 110mAh”です。

LiPoバッテリー

メインボード

メインボードはガラスエポキシ(FR-4)の両面基板です。
表面に実装されているのはメインプロセッサと降圧コンバータIC、それらの周辺部品(水晶発振子、セラミックコンデンサ、抵抗、インダクタ)、3個のプッシュスイッチ、コンデンサマイク、状態表示LED(RED/BLUE)です。
プッシュスイッチはBTオーディオでよく見かける薄膜プレスタイプではなくボタンタイプ、Bluetoothのアンテナはミアンダ型の基板パターンになっています。

メインボード(表面)

裏面には充電用のマイクロUSBコネクタと、3.5mmのスイッチ付きオーディオジャックが実装されています。基板表面には基板の型番「YET_BT001-56A-Y1」と基板の製造日(20220801)がシルクで表示されています。
LiPoバッテリー接続用ランド(B+/B-)とテスト用ランド(G/B+/P/M)も裏面にあります。

メインボード(裏面)

回路図と動作の概要

基板パターンからメインボードの回路図を作成しました。部品番号は基板のシルクにはありませんでしたので筆者が割り当てました。

回路図

メインプロセッサ(U1)にはUSBの電源(VBUS)とLiPoバッテリが直接接続され、LiPoバッテリーの充電制御もメインプロセッサが行っています。
メインプロセッサの周辺部品はコンデンサと24MHzの水晶発振子のみ、コンデンサは内蔵のPMU(Power Management Unit)で生成した電源(VDDIO,BT_AVDD,DACVDD)のフィルタ用で、各電源端子とGND間に接続されています。

DVDD(CPUコア用電源)は、外付けの降圧コンバータIC(U2)によるスイッチング電源回路で生成され、EN端子をメインプロセッサから制御しています。

キー入力(3個)はそれぞれ個別に入力端子に接続、機器の状態表示のRED/BLUEのLEDは1個の出力端子で排他制御しています。

オーディオジャックの各信号ラインには基板のGNDとの間にノイズ対策のコンデンサが入っており、オーディオジャックのG端子はDACR/DACL端子と共通の中間電圧(VCOMO)に接続されています。これにより電源ON/OFF時のポップノイズの発生を防いでいます。

コンデンサマイクのバイアス電圧はメインプロセッサのPC7ピンから供給され、マイクで拾った信号はC14経由でMIC入力(PC6)に接続されています。

プリント基板はGNDパターンや各電源の引き回しも問題なく、実際の動作時のノイズ対策を考慮した保険パターン(R4〜8の0Ω抵抗)が準備されていたりと、きちんと設計されている印象を受けました。

主要部品の仕様

メインプロセッサ AC6956A

メインプロセッサ

メインプロセッサはローエンドBluetooth機器の定番のメーカーである中国の珠海市杰理科技股份有限公司(http://www.zh-jieli.com/)製の、Bluetooth Audio用プロセッサ「AC6956A」です。
データシートは中国の方案公司(デザインハウス)の深圳市科普豪电子科技有限公司(https://www.kepuhaodianzikeji.com/)のサイトから入手することができます。

https://www.kepuhaodianzikeji.com/newsinfo/4451316.html

パッケージは32pin QFN、最大240MHz動作の32bit CPU(FPU内蔵)+Audio DSPを内蔵したSoC(System On Chip)です。

CPUとDSPの仕様(データシートより抜粋)

CPUコア用電源は省電力のために外部入力、それ以外の電源は内蔵PMUで生成しています。PMUはLiPoバッテリーの充放電制御もサポートしています。

PMU特性(データシートより抜粋)
バッテリー制御仕様(データシートより抜粋)

降圧コンバータIC JW5250A

降圧コンバータIC

CPUコア用電源を生成する降圧コンバータICは杰华特微电子股份有限公司(https://www.joulwatt.com/)の「JW5250A」です。製品概要は以下から入手できます。

https://www.joulwatt.com/Upload/file/202104/20210413162118_4232.pdf

スイッチング周波数1.5MHzで最大出力1A、最高効率92%と高効率の電源回路が構成できます。

JW5250Aの製品概要(製品ホームページより)

Bluetooth接続情報の確認

今回もAndroid版の「Bluetooth Scanner」というアプリを使用しました。
本製品は「EC002」という名前で検出されます。プロファイルは「ヘッドセット」でコーデックはヘッドセットで一般的な「SBC(SubBand Codec)」、プロトコルは「Classic(BR/EDR)」で接続されています。ベンダーは「不明」となっていました。

Bluetooth接続情報

まとめ

本製品で採用しているSoCであるAC6956Aは2021年5月号で分解したイヤホン一体型の「Bluetoothヘッドセット」と同じものですが、両方の分解結果を比較すると、製品設計の完成度は本製品のほうが高いことがわかりました。
本体にマイクを内蔵しているの、お気に入りの有線イヤホンを使ってのWeb会議という使い方もできそうです。

本製品の製造元である「株式会社E Core (http://e-core2006.co.jp/)」は東京都昭島市に本社があり、中国に生産拠点を持っていて電気小物を中心にしたディスカウントストア向商品の製造販売とメーカー向けOEM製品製造を行っている会社です。
パッケージのBluetooth SIG(標準化団体)のライセンス取得の記載や本体のLiPoバッテリーのリサイクルマーク表示、といったきめ細かい対応が他の輸入代理店とは少し違うという印象を受けました。

よろしければサポートお願いします。分解のためのガジェット購入に使わせていただきます!