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【100均ガジェット分解】(4)ダイソーの「Bluetoothリモートシャッター」

※本記事は月刊I/Oに掲載された記事にページの都合で省略した部分を追加したものです。

はじめに

ダイソーの「Bluetoothリモートシャッター」、発売当初は1個300円(税別)という事でSNSで話題になり品薄が続いていましたが、現在は在庫も復活し多くの店頭で見かけるようになりました。通信仕様は一世代前の「Bluetooth version 3.0」と表示されています。

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パッケージ外観

本体の分解

同梱物
パッケージの内容は「本体」と「取り扱い説明書」のみです。本体には2個のシャッターボタンがあり、それぞれがiOSとAndroidに対応しています。テスト用電池(CR2032)が挿入されているので購入してすぐに使う事が出来ます。裏面には「技適マーク」が印刷されており、取り扱い説明書も「日本語」で、きちんと“日本市場向け”の仕様となっています。

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本体のボタンと技適の表示

本体の構成
裏面の電池カバーを固定するビスを外します。本体は嵌め込み式で側面の隙間をカッター等でこじ開ける事で開封できます。内部はメインボードが1枚だけのシンプルな構造です。

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開封した本体

電子回路ブロックの確認

メインボード
「メインボード」は、「ガラス・エポキシ」(FR-4)の両面基板です。基板上に型番「ZPQ-1729-V2」と製造年月日の表示があります。表面にはスイッチ類とICが1個実装されています。Bluetoothのアンテナは「基板パターン」で構成されています。裏面にはボタン電池用の電極が実装されています。

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メインボード(表面)

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メインボード(裏面)

メインボードの搭載部品

次にメインボードに搭載されている主要部品をみていきます。

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メインボードのIC周辺の拡大図

メインプロセッサ ST17H26
中国の深センに本社のあるLENZE Technology(深圳市伦茨科技有限公司, http://www.lenzetech.com/)製のLow Power Bluetooth ICです。
最大48MHz動作(本機では12MHzで使用)のRISC 32bit MCUを搭載し、LDO内蔵・BLE4.2サポート・各種I/Oも充実しているかなり高機能なSoCです。Alibabaでは1個US$1.0で販売されています。
LENZE Technologyという会社は中国語のサイトによると、チップだけではなく設計までサポートするいわゆる「方案公司」(デザインハウス)です。ST17H26のデータシートもここから入手できます。
<ST17H26データシート>
http://bit.ly/2NB4jiC

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ST17H26の主な仕様

次にST17H26の周辺回路をみていきます。ピンアサインとピン仕様は次の通りです。

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ST17H26のピンアサイン

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ST17H26のピン仕様

「Androidボタン」はPin8, 「iOSボタン」はPin9、動作表示のLEDはPin3に接続されています。PWR端子(Pin7,Pin14)には平滑用のコンデンサが実装されています。水晶発振子(Pin12,Pin13)は12MHzです。
また、OTP(One Time Programmable)用の端子であるSWS(Pin4),VPP(Pin6)がランドに配線されています。これよりこの基板は汎用品として実装後に個別の仕様に合わせたプログラムを書きこんでいると推定できます。

Bluetooth通信の内容

スマートフォンでの確認
iPhoneとペアリングをしてiOSボタンを押すと画面の音量バーが上がります。カメラアプリは音量ボタンでシャッターを切れます。

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iOSボタンを押した時の画面

「LightBlue Explorer」(https://apple.co/2O7leu5)というアプリで使用しているBLEのサービスを確認すると”Battery Service”と”Human Interface Device”(以下HID)であることがわかります。

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「LightBlue Explorer」のサービス確認画面

Androidでも「nRF Connect」(http://bit.ly/2O5DnbA)というアプリで同様の確認ができます。

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「nRF Connect」のサービス確認画面

Windows PCでの確認
本機はHIDという事なので、Windows10(64bit)搭載のPCとペアリングをしてみたところ、Bluetoothキーボードとして認識されました。
プロパティを確認すると「Bluetooth 低エネルギー GATT対応HIDデバイス」となっています。本製品のパッケージでは「Bluetooth 3.0」となっていますが、実際は搭載するST17H26がサポートする「Bluetooth 4.2」の「Bluetooth Low Energy(BLE)」での動作となっています。

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Windows10のデバイスマネジャー画面

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Windows10のデバイスプロパティ画面

この状態で各ボタンを押した時のキー入力をスキャンしてみます。キー入力の取得には「Keymill」(http://kts.sakaiweb.com/keymill.html)というアプリを使用します。

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Keymillでのキー入力取得結果

「iOSボタン」は音量アップキーのみですが、「Androidボタン」では前後にEnterキーが送信されている事がわかります。
余談ですが、Enterキーが送信されているのでパワーポイントやPDFを使ったプレゼンモードで「Androidボタン」を押す事によってリモートでのページ送りができます。

まとめ

最小限の機能をコンパクトにまとめており、パターンレイアウトもきちんとしています。
プレゼンのページ送りにも使える事を考えると、300円(税別)はかなりお買い得感が高いと思います。おすすめです。


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