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【100均ガジェット分解】(1)ダイソーの「108円LED電球」

※本記事は月刊I/Oに掲載された記事にページの都合で省略した部分を追加したものです。

はじめに

新年早々近所のダイソーに行ったところ108円のLED電球(40W)が登場していました。まあ、108円なら壊れても惜しくはないので早速購入して分解してみました。

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箱にある定格その他の表示

まずは従来324円で販売されていたLED電球と比較。
ルーメン値は324円品と同じ。光らせた感じも「少しだけ暗いかな?」程度で大きな差はなし。寿命は108円品の方が15000時間、324円品の方は40000時間、と短くなっています。

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外観の比較

以下の写真で左側が324円品、右側が108円品。
108円品の方が外形が大きく、電球部分のプラスチックが少し安っぽい。

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本体にはきちんとPSEマークが付いています。これまでのダイソー同様さすがの対応です。

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外装の分解

電球部分のプラスチック部と放熱部の間が放熱用も兼ねたシリコン系の接着剤でキッチリ固定されているので、プラスチック部分の根元にカッターを入れて切り離します。

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内部のプリント基板の表面に実装されている部品は以下です。(回路図は後述)
- 7個のLED
- AC電源の全波整流用のブリッジダイオード(後述)
- LED駆動用の定電流ドライバIC(後述)
- いくつかのコンデンサと抵抗

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プリント基板を引っ張り出してみた写真を以下に示します。
プリント基板は放熱を考えてきちんとアルミ基板が使われています。

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電球の下の放熱部もきちんとアルミダイキャストになっています。

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電球としての配光を妨害しないように、ACからの全波整流用コンデンサ(ブロック電解コンデンサ)は裏面より挿し込み式のコネクタで実装しています。電球ソケットからのACラインも裏面からコネクタに挿し込むようになっています。ACライン用のコネクタは周囲が樹脂で囲まれた絶縁タイプのモノを使用しています。

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使用されている主な部品

ブロック電解コンデンサ

全波整流用のブロック整流コンデンサは12uF/200Vであり、AC100V専用(日本向け)の設計となっています。

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短絡保護用抵抗

電球ソケットからの黒リード(電圧側)には直列に熱収縮チューブに覆われた抵抗が挿入されていました。

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熱収縮チューブを外して抵抗値を確認。カラーコードは黄紫銀金、実測も0.47Ωでした。短絡保護も兼ねていると思われます。

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ブリッジダイオード

AC電源からの全波整流の為のブリッジダイオードです。
表面に「FGK LB08K」のマーキングがありますが、検索した限りでは該当するものは見つかりませんでした。
型番的には800V 1Aで「 SMD bridge rectifier diode 」あたりのパッケージ違い(薄型)の互換チップだと思われます。

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LED駆動用定電流ドライバIC

上記のブリッジダイオードで生成された2次側のDC電圧(約141V)に直列に接続された7個のLEDに流れる電流を一定にして輝度を安定させるための定電流ドライバICです。表面に「9003A H8090」のマーキングがありますが、こちらも検索した限りでは該当するものは見つかりませんでした。
色々とWeb上の情報を探した結果、以下の分解記事

Goodbye! よらしむべし、知らしむべからず

で調べられていたとおり、「Bright Power Semiconductor Co.」社のBP5131Sと(細かいスペックは別として)機能的にはほぼ同じものだと思われます。DrainとCS端子の配置が逆だったり、電流設定用の外部抵抗RcsがBP5131Sは120Ω、本機は15Ω(30Ωの2個並列)と大きく違うので、中国の激安ガジェットの部品によくある、同一機能の廉価版として別会社より供給されている部品だと思われます。(そして、こういう部品メーカがあっという間にメジャーになっていくのもよくある話)


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BP5131SのデータシートからのLEDの電流は以下の式で求められます。

  Iled = Vref/Rcs

108円品の定格消費電力は4.5Wですので、AC100Vを全波整流したDC値を実効値になっている(110V)と想定して計算するとLEDに流れる電流は約40mAとなります。
BP5131SのSPECでは Vref = 600mV(typ.), 基板に実装されている Rcs = 15Ω より Iled = 40mA ですので、実効値で考えるとそれなりな値だと思われます。

LED

LEDはサイズ実測でSMD 2835 、AC100V系での使用なので VF = 9V の このへんの互換チップ だと思われます。
最大定格電力1.0Wですので約35%での使用となっていると思われます。(分解してしまったので実測はしていません)
LEDでの電圧降下が 9V x 7 = 63V なのでLED駆動用定電流ドライバIC のD-CS間の電圧は実効値で想定して 110 - 63 = 47V, 消費電力は 47V x 40mA = 1.88W となり、放熱をきちんとしても定格ギリギリか少し超えたところで使っている様に思われます。
この辺は、別途どこかのタイミングで実測して更新していこうと思います。

回路図

ザックリと回路図を起こしたのが以下。ACラインからLEDを光らせるという機能としては最低限の構成です。

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最後に

基板のパターンを見る限りは1次-2次間のパターンの絶縁距離もそれなりに確保(実測で2mm以上)しており、LEDが接続されているパターンも可能な限り面積を広くとって基板~筐体への放熱も配慮されています。回路構成も電流駆動であったり、保護用の抵抗がACラインに挿入されていたりと、しっかりと当たり前の設計がされています。
それにしても、数年前までの激安中国ガジェットと比べるとツッコミどころもほとんどなく、この価格帯の製品でも設計レベルがきちんと上がっている事は素晴らしいです。高品質云々という次元での戦いはとっくに超えて日本はもう勝てない世界に行ってしまった感があります。

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