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【100均ガジェット分解】(45)ダイソーの「ソーラーセンサーライト」

※本記事は月刊I/O 2022年12月号に掲載された記事をベースに、内容を追記・修正をして再構成したものです。

ソーラーパネルを搭載して、人の動きを感知して点灯する「ソーラーセンサーライト」が、ダイソーで500円(税別)で売っていました。今回はこれを分解してみます。

パッケージと本体の外観

「ソーラーセンサーライト」は昼間は太陽光で充電し、周囲が暗くて人の動きを感知したら自動でLEDが約20秒間点灯します。
上面にソーラーパネル、前面に人感センサーとLEDライトが付いています。

店頭展示の様子

パッケージ

パッケージの側面の記載によると、「センサー反応角度:120°」「センサー反応距離:3m」です。裏面の「使用上の注意」は日本語・英語・ポルトガル語で記載されています。

パッケージ裏面の表示(抜粋)

同梱の取扱説明書の記載は取付方法と使用方法が中心でいわゆる製品仕様(内蔵バッテリー容量・使用可能温度範囲等)の記載はありません。

取扱説明書の記載(抜粋)

本体の外観

本体上面にはソーラーパネル、正面には電源スイッチ・人感センサー・LEDパネルが配置されています。本製品のパッケージには「IPX3(JIS C 0920 防雨型)」対応との記載があり、写真ではわかりにくいのですが、ソーラーパネルとLEDパネルは全面が透明な樹脂でモールドされています。

本体の外観

ちなみに電源スイッチはラッチタイプのプッシュ - プッシュスイッチですが、スイッチの状態表示が全くないため、スイッチON/OFFの状態が外観からは分かりません。スイッチOFF状態では内蔵電池への充電もできないので注意が必要です。

本体の分解

本体は背面にある4か所のビスを外せば開封できます。内部には制御基板と単三サイズのニッケル水素電池があります。ソーラーパネル・LEDパネルのリード線を引き出している箇所は防水のためにケースと樹脂接着剤で覆うように固められています。

開封した本体

内部の構成部品

ソーラーパネル

ソーラーパネルは37mm x 8mmサイズのセルが4個直列に接続されています。1セル当たりの電圧は定格負荷で約0.5Vですので、このパネルは約2Vの電圧を取り出せる仕様です。

ソーラーパネル(セル面)

裏面にはパネルの外形サイズ(82mm x 44mm)を含む型番と思われる「XC 82X44-2R3」の表示があります。

ソーラーパネル(裏面)

LEDパネル

LEDパネルには2.8mm x 3.5mmのCOB(Chip On Board)タイプのLEDが8個実装されています。

LEDパネル(LED面)

裏面を確認すると配線パターン基板がわかります。基板はガラスコンポジット(CEM-3)、8個のLEDは並列に接続されています。

LEDパネル(裏面)

制御基板

制御基板はガラスコンポジット(CEM-3)の片面基板です。パターン面の半導体部品はコントローラIC、電源IC、MOS FET、ダイオードです。電源スイッチ、人感センサー、インダクタは基板の穴からリードを挿入してパターン面でハンダ付けされています。

制御基板

ニッケル水素電池

内蔵されている充電池は単3乾電池(AA)サイズのニッケル水素電池(Ni-MH)です。充電容量は300mAh、100円ショップ等で単体で販売されているもの(1000~1300mAh)と比べてかなり小さい容量です。表面にはリサイクルマークと注意文(英語)の表示のみで、製造者名等の表示はありません。

ニッケル水素電池

回路図

基板パターンから回路図を作成しました。

回路図

ソーラーセルに光があたるとコントローラIC(U1)はニッケル水素電池に充電を行います。
周囲の明るさはソーラーセルの出力電圧で判断、ソーラーセルからの電圧が下がるとコントローラICはニッケル水素電池からの入力を昇圧して約2.6Vを出力します。この電圧を電圧レギュレータ(U3)で2.5Vに安定化して人感センサー(PIR)に供給します。

人感センサー(PIR)は人や動物から放出される遠赤外線の変化を検知するとOUT端子がHレベルになりN-Channel MOS FET(Q1)がONになりLEDが点灯します。

回路図の各電圧は本機で実測した値です。ニッケル水素電池の電圧が0.9V未満になるとLEDが点灯しなくなりました。

主要部品の仕様

次に本製品の主要部品について調べていきます。

人感センサー: PIR NS312

人感センサー

「人感センサー(Passive Infrared Ray))は森霸传感科技股份有限公司(SENBA SENSING TEC, https://www.nysenba.com/)の「NS312」、データシートは以下より入手できます。

http://dfsimg1.hqewimg.com/group1/M00/1A/C8/wKhk72CaRBWATArjAAqioWxM4Gw313.pdf

電源電圧は2.2~3.7V、動作電流は9.5uA(typ.)です。

コントローラIC: BooCB (詳細不明)

コントローラIC

「コントローラIC」はマーキングで検索をしたのですが詳細は分かりませんでした。周辺の回路構成からニッケル水素電池(1セル=1.2V)専用の充電・昇圧ICだと判断しました。

電圧レギュレータ: XC6206

電源IC

「65T5」のマーキングの部品はトレックス・セミコンダクター株式会社(TOREX SEMICONDUCTOR LTD., https://www.torexsemi.com/)のLDO(Low Drop Out)電圧レギュレータ「XC6206」、データシートは以下から入手できます。

https://www.torexsemi.com/file/xc6206/XC6206.pdf

マーキングの「65T」は出力2.5Vを示しています。ドロップアウト電圧は30mA出力時で100mV(Typ.)です。

N-Channel MOS FET: Si2302DS

N-Channel MOS FET

「A2SHB」のマーキングの部品はVishay Intertechnology, Inc.(https://www.vishay.com/)のN-Channel MOS FET「Si2302DS」、データシートは以下から入手できます。

https://www.vishay.com/docs/70628/70628.pdf

耐圧(Vds)=20V、ON抵抗=0.085Ω(Typ.@Vgs=2.5V)です。

ショットキーバリアダイオード: 1N5819

ショットキーバリアダイオード

「S4」のマーキングのダイオードはDiodes Incorporated(https://www.diodes.com/)のショットキーバリアダイオード「1N5819」、データシートは以下から入手できます。

https://www.diodes.com/assets/Datasheets/ds30217.pdf

耐圧(Vr)=40V、順方向電圧(Vf)=0.320V(Max@If=0.1A)です。

まとめ

回路全体としては「よい意味での普通の設計」なので、電源スイッチの状態が外観からは分からないのが製品仕様として残念なポイントです。

コントローラICはソーラーパネルからニッケル水素電池の充電制御と昇圧して後段の回路用電源を生成する専用ICのようで、このようなニッチな用途のICが存在するのは中国のエコシステムらしいと感じます。

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