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令和、いろは歌について考える

どうもご無沙汰してます。間が空いてしまったので、言い訳としてなんか強めの記事書かなきゃ、なんて思います。建前として年末スペシャル記事です。

という訳で今回は、日本語の言葉遊びの最高峰の一つ、いろは歌について書いていくことにします。


いろは歌とは

いろは歌(いろはうた)とは、仮名を重複させず使って作られた47字の誦文ずもん。七五調の韻文で、作者は不明だが10世紀末から11世紀半ばの間に成立したとされる。(wikipediaより引用)

まあ難しい説明はともかく、これですよこれ。聞いたことありますよね。

色は匂へど 散りぬるを
我が世誰ぞ 常ならむ
有為の奥山 今日越えて
浅き夢見し 酔ひもせず

「あいうえお」から「わゐ ゑを」までの47字を1回ずつ使って詠まれたこの歌ですね。

世界の言葉遊びで言うと、「パングラム(アルファベットの場合、その26字を全て使った文章)」という言葉遊びの中の「完全パングラム(アルファベット26字を1回ずつ使った文章)」と呼ぶこともできます。

いろは歌には「とかなくてしす」とかのいわくもありますが、今回はその辺りは置いといて、色んないろは歌、について書いていこうと思います。

ちなみに「いろは「唄」」だと鏡音リンの曲のタイトルの方が検索に引っかかるので、「いろは歌」にしましょう。


様々ないろは歌 明治

「いろは歌って、この一作しかないんでしょ?」なんて思ってる人もいるようです。いえいえ、そんなことはありません。

例えば、鳥啼く歌と呼ばれるもの。
明治36年にとある新聞で募集されたものの優秀作で、坂本百次郎という人物の作品。この時の募集は「ん」を加えた48字でのものだったようです。

鳥啼く聲す 夢覚ませ  とりなくこゑす ゆめさませ
見よ明け渡る 東を   みよあけわたる ひんかしを
空色映えて 沖つ辺に  そらいろはえて おきつへに
帆船群れゐぬ 靄の中  ほふねむれゐぬ もやのうち

48字なら七五調で字余りなく詠めるので理に敵ってますね。作品は一万作以上も寄せられたということで、たくさんの作品が生まれるということはいろは歌の可能性はまだまだ大いにあると言えます。


様々ないろは歌 昭和

僕の手元に1984年発行の「笑学強加書 ことばあそびばらえてぃ」という本があります。

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著者の笑鬼会本院冗皇氏、少年時代はラジオ投稿、高校卒業後は噺家の道を経て、言語遊戯の会「笑鬼会」を結成した人物です。
この本には様々な言葉遊びが載っていますが、その中に「新伊呂波歌」という項目も掲載されています。こちらも「ん」を含めた48字。その中で、一番自然でうまくてすごいと思ったものを引用します。タイトル「反核いろは歌」。

住む世燃え揺れ 父母は去り
居たる乙女や つきぬ声
民族あげて 広島に
平和の鐘を 打ち鳴らせ

本自体はタイトルからわかるようにけっこうおちゃらけた内容なんですが、このコーナーは普通に「おおっ」てなります。

さて他にもいろは歌を作った人はたくさんいるはずですが、差し当たり、自宅にあった本から拝借、紹介させていただきました。


様々ないろは歌 平成

近年だと、バカリズムさんがライブの中で新しいいろは歌を作っていました。

このDVDに収録の、「言葉に関する案」にて。バカリズムさんは、「濁点が入るのはおかしい」という切り口で、濁点のないいろは歌を披露します。濁点なしのままの48字。七五調にはこだわることなく進んでいきます。

さすがにここで勝手に紹介するわけにはいかないので、レンタルでもあるところにはあるので観てみて下さい。
と思って調べてたら、アマプラでも330円でレンタルできる模様。これは手軽な時代。


また、いろは歌とは少々異なるのかもしれないですが、元ラーメンズの小林賢太郎さんも「アナグラムの穴」という作品の中で披露しています。ネタバレだったらごめんなさい。
これに関しては、内容ももちろん良いですが、さすが、演出というかやり方が素晴らしいです。

「ゐ」「ゑ」は除いた46字で、性質上、濁点も使ってないですね。


様々ないろは歌 令和

いろは歌を作っている人はまだまだいますが、最後に紹介する令和のいろは歌作者、それは、僕です

僕の流派は、「ゐ」と「ゑ」は今は使ってないんだからいらないだろ、でも濁点はもちろん、促音拗音すら認めてほしいよ派です。46字。

いくつか作っていますが、今読み返したら意味不明なものもあったので比較的意味の通りやすいものを2作。

昨日 やらなかったこと
忘れ 歩む日
ふけて 寝る目には
面白さを見ぬ
前より 細く 地平線
イケメンになるからね
眉太さ揃え
立って背伸びへ
おしゃれ 放り込み
あわよくば 気持ちを盗む

どうですか、一見普通の文章っぽいでしょ?疑ってます?時間があれば「あ」から「ん」まで探して見てください。3分以内に見つけたらIQ120!順に探してると、「立って」でタ行3つも消費してんな、とかの発見もあります。
いやあ、普通っぽいのに実はいろは歌、っていうのがいいですよね。どうだ!すごいだろ!

と、浅き自分の作品見て酔ひもしてますが、


今回は年末スペシャル記事です。


まだまだここで終わりではありません。


もっとすごいの作っときました


いろは歌の更に先へ、「いろはに歌」

いろは歌の進化版を作るとしたらどんな名前か。「いろは」の先、と言えば、「いろはにほへと」なのだから、当然「いろはに歌」でしょう。

「に」、そうです、です。「あ」から「ん」までの46字を、全て2回ずつ使って作った92字の文章、それが「いろはに歌」です。

今、日本語の歴史が動くかもしれない。いろはに歌、ここに公開です。


冬の路面
音させぬ氷
ふやけて光る汗

強い本音を込めた誓い
外へ招き
朝日晴れて

闇雲に迷え
うつむきを抜けろ

私のゆく道は
もし進むなら
それなりに笑えるほうへ



わかってる、途中かっこいいこと言ってそうでよくわからない表現をしてるのはわかってる。でも、この一見ただの微妙な詩が、実は「あ」から「ん」までが等しく2回ずつ使われている。そう思うと、不思議な魔法のようなものに見えてきませんか?そう、あなたは今、けっこう凄いものを見てるんです。


と、いうわけで色んないろは歌を見てきました。結局、日本語楽しい!という感想を持っていただければ幸いです。そういえば、ここnoteでも毎日たくさんの言葉が生み出されています。言葉は色んな感情を動かし、色んな結果を生じます。常ならむ。無常。言葉には凄い力がある、そんなことを改めて思うのでした。


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