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はじめての能楽体験記①

皆さんは能楽って鑑賞したことあるでしょうか?テレビや動画ですら見たことないという人がほとんどではないでしょうか。

私はふとしたことがきっかけで能楽を見てみようと思い立ち、先日鑑賞しましたのでその体験記をお届けします。

きっかけはボードゲーム

そもそもなぜ興味を持ったかというところですが、きっかけはボードゲームです。はい、なんのことかわからないと思います。

私には小学生の娘がいまして、たまにボードゲームを一緒にやっています。そこでボードゲームを買いに神保町のボードゲーム専門店「すごろくや」に行ったことがそもそものきっかけでした。

すごろくやは神田古書センタービルの7階にあり、ボードゲームを買った後エレベータで1階に降りました。エレベータを降りて正面を見るとなんとも歴史ありげな、神保町らしい独特な雰囲気を持った古書店が目に入りました。

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まず、店の正面のショーケースに能面が無造作に平置きされ、店の中にはいかにも古書といった感じの冊子が大量に積み上げられていました。興味本位でなんの店だろうと中に入ってみました。いくつか書棚を見ていくうちにここが能、狂言などの伝統芸能を中心とした古書店であり、平積みされていた冊子は、能の稽古台本である「謡本(うたいぼん)」ということもわかりました。

今まで全く知らなかった世界に驚くと同時に、少し興味が出てきました。そこで初心者コーナーともいえる、私にもわかりやすそうな書籍を置いているコーナーから本を1冊ピックアップして家で読んでみることにしました。それが能楽に触れた最初の一歩でした。

※帰宅後調べると立ち寄った書店は「高山本店」という能楽、古典芸能、歴史書を主に扱う老舗の(1875年創業!)書店とわかりました。

能の本、意外に面白い

その時購入した書籍はタイトルがズバリ「能の本」でした。この本は能を説明したり、せりふや謡の訳を書いているのではなく、1つの演目を短編小説のような現代語の物語として読み物仕立てに書いています。それと同時にイラストと漫画でわかりやすい描写を、さらには監修者がエッセイを添えて専門的な知識も添えてくれています。

これが非常に面白く、続編の「能の本2」も購入して読みました。

この本によって、能はストーリのある演劇であり、台詞とともに舞や謡が演じられるものということがわかりました。

能のわかりにくさ、とっつきにくさは、そもそも舞台ではなにをやっているのかわからないというところにありますが、その内容は実に現代にも通じる人間味のあるドラマであることがわかり、より興味がわいてきました。

能のストーリーの多くは次のようなものです。

・僧侶(あるいは山伏)がある土地を訪れたところ、謎の人物が現れて彼らにその土地ゆかりについての話をする
・その後、謎の人物は幽霊や妖怪などであることがわかり、僧侶に対してこの世で成仏できなかったいきさつ(無念さ、生前受けた仕打ちの不条理さ、嫉妬、未練など)を語る
・僧侶は慰め弔い、霊は成仏する

この本2冊を読み、おぼろげながらも能の実態がわかってくるにつれて、実際に見てみたいという意欲が少しづつわいてきました。

わかったつもりだったが…

一通り本を読みある程度の知識を得たつもりなったところで実際にyoutubeで能の本に載っている演目を見てみました。すると、なんとさっぱりわかりませんでした(笑)。演目みても全く台詞や謡の内容が理解できず、数分も続けて視聴が続きませんでした。

そこでどうしたもんかと、ネットで初心者向け情報などを検索してみると、いろんな団体や個人が、一般の人に能に親しんでもらえるよう情報を発信していることがわかりました。その多くに書いていたのは以下でした。

・あまり堅苦しくなる必要はない
・台詞は最初はわからないもの
・とはいえ基本的な背景や知識はあったほうが楽しめる
・実際の舞台に行くのがおすすめ

なるほど、ならば初心者向けの講演があれば実際に行ってみようと思い立ちました。ネットで探したところ、多くの能楽堂で初心者向け講演を行っていることがわかりました。正直こんなにたくさん能楽堂ってあるのかと驚きつつ、自分の行けそうなものを探りました。しかし開催の予定が記載されているものの、その多くがコロナ禍(2020/10月末時点)の影響で悉く延期あるいは中止になっていました。

しかし、そんな中でも開催予定のものを見つけ、そこから自分向けの講演を見つけることができました。それで行くことにしたのが、今回鑑賞した豊島区のとしま未来文化財団の主催する「第33回 としま能の会」でした。

としま能の会

としま能の会は日本の伝統芸能の普及を目的とした30年以上続く公演とのことです。今年はコロナということもあり、開催時期が12月に延期されていました。さらにコロナ禍の状況ということもあり、例年事前に行われる初心者向け解説講座がオンライン配信になっていました。

これがむしろ私にとってはラッキーだったと思います。時期がちょうど情報を目にした時から2か月後の12月開催になり(例年は5月らしいです)、オンラインにより初心者向け講座が配信され、講座受講の敷居が低く感じられたためです。オンライン配信は10月から公演日の12/18の前週まで毎週1回配信されることになっていました。週1回のオンライン講座で知識と関心を徐々に高めていって公演に向かう感じもとても楽しそうに思えました。

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能で西遊記?

そして興味を持ったもう一つの理由が演目でした。メイン演目は「大般若」という演目なのですが、これは三蔵法師が天竺へ向かう話をテーマにした演目との説明がありました。なお、題目の「大般若」というのは三蔵法師が求めた経典「大般若波羅蜜多経」に由来するとのことです。
(参考URL: https://www.dainenbutsuji.com/schedule/tendoku/) 

能は日本の古来の話のみを扱っているとばかり思っていて、中国が舞台の話が演目にあるというのはかなり意外に感じました。しかしながら、三蔵法師の物語は能に限らず昔から人気のある物語であり、能としても最初に演じられたのが1432年の記録があり古くから演じられてきた演目とのことです。

三蔵法師と言えば自分の世代ではドラマ「西遊記」がやはり思い出され、なじみのある話です。さらに最近の話では、自分の好きな歴史Podcast番組「コテンラジオ」でも三蔵法師・玄奘のテーマとして取り上げられたこともあり、この演目に非常に興味を持ちました。

能楽デビューへのカウントダウン

そうした経緯から12月18日のとしま能の会のチケットを購入することにしました。家族にも声を掛けましたが、「能?なんで?」とNoと言われました(爆)。残念ながら一人で行くことにしました。

そうして初の能楽鑑賞の日程が決まり、それまでの7週間、Youtubeでの初心者講座を受講しながらのカウントダウンが始まりました。

次回へ続く



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