運動と父の思い出

私は5歳の子どもがいる主婦なのだが、朝起きられないしぼんやりしているしすぐに疲れるしで、お勤めをあきらめて5ヶ月になる。

週一で3年通ったベリーダンスも、妊娠出産子育ての過程で足が遠のき、全く運動しない体の気持ち悪さを少しでも解消したくて、家でひとりラジオ体操を始めた。

YouTubeから前奏にのせ、男性NHKアナウンサーに「よい姿勢をお取りください」と言われると、それだけで背筋がピンとなる。

5分程度だと思うけど、かなりすっきりする。

子供の頃には分からなかったけど、考えられた体操だなと感じる。

体を伸ばしながら時々思い出すのは、小学生の頃のこと。夏休みに近所の子どもたちが集まって一緒にラジオ体操をしていたのだが、親も交代で行かなくてはならない。我が家は母が早起き嫌いのため、父がついてきていたのだが、この父の振る舞いが小学生の私にはキツかった。

だいたい小学生が集まって、まじめに体操なんかするわけもなく、ちゃんとすることへの照れ隠しで、適当に手足をぶらぶらさせて曲が終わるのを待っている。

私の父はバレーボールやマラソンを嗜む、いわゆるスポーツマンだった。マラソン大会に出るのが趣味で、東京マラソンにも3度ほど出場している。

「お前ら、おかしいやろ。体操はこうや、こうやるんや」

と言いながら皆の前に立ち、体育教師のように模範演技をしてみせる。本人が大真面目にやればやるほど、小学生の笑いを誘うので、ほんとやめてくれよ…といつも思っていた。おまけに小さい弟がついてきて父の隣で嬉々として短い手足をふって一緒に体操するわけ。やりたくもない体操をやらされているヒマな小学生にとっては、爆笑コントでしかなかった。

近所の友達がくすくす笑う理由に気づかず

「なんやともこ、ちゃんとやらんか。」

友達に合わせて適当にやり過ごしていた私を叱りながらこれが手本だとばかりに上体を反らしたり回したりする父。ミニチュアのように隣で真似る弟。

子どもから見れば客観性のない大人ほど面白い。私は父の本気ラジオ体操でさんざんからかわれた。

そもそも父という人は「天然系KY」で、周りの目を気にしないタイプ。

もう少し学年が上がった頃、年に一度の地区対抗ハンドボール大会があり、放課後地区ごとに練習をしていた。

友達に肩を叩かれて振り向いたら

「見て!ともちゃんのお父さん、夕陽に向かって走っとうで!」

「ほんまや!夕陽に向かって走っとう!」

小学生たちが練習する横を、またもや小さい弟を連れてジョギングをしている父。  父はだいたい毎日走りに行っていたので、私としては珍しくもなかったが、父の向かう先には、山に顔をしずめようとする夕陽。1日の最後に思い切り光を放つ、赤い夕陽に向かって走る父は、光の色に染まっていた。


…という、天然で本気の親に恥ずかしい思いをさせられた記憶。


他にもあるので、また書くかも。

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