最初の一ヶ月が終わったら ~ 緒戦で勝つ

最初の一ヶ月間、違和感をメモしながら、ひたすら組織文化の学習に努めて来ました。「それは違うだろう。」と思うようなことにも、にっこりと笑顔で受け流し「順応同化の精神」を大いに発揮してきたあなたも赴任後一ヶ月が経ちました。この時点から、いよいよ行動開始です。あなたが責任者の場合、赴任後一ヶ月経って何も変化や行動が組織に起こらなかったら、早速「だめ上司」の烙印が押されてしまうでしょう。かといって、一ヶ月で会社全体が掌握出来る訳ではありません。最初に感じた違和感を、同化するか修正するかに仕分けして、修正するもののうち、すでにその概要が掌握出来、かつ短期に実行可能で、眼に見える効果の大きいものを選りすぐって実行するのです。ここで重要なことは、

緒戦で勝つ

ことです。
あなた自身の登場感が重要なのです。
マイケル・ワトキンスは著書「The First 90 Days」(日本語版 村井章子訳)の中で、緒戦への取り組み方を次のようにアドバイスしています。

「理想的なのは、あまり予算をかけずに手っ取り早く処理でき、しかもわかりやすい成果を上げられる問題である。」

「緒戦で取り組む問題は、多くても二つか三つまで。」

「すぐに着手できる有望分野でパイロット・プロジェクトを立ち上げる。早い時期にプロジェクトを成功させられれば、職場の士気は一気に高まるだろう。」

「改革の旗手を育てる。進取の気性に富み、あなたの計画に手を貸してくれるような意欲的な部下をみつける。管理職でも平社員でも構わない。彼らを責任ある地位に昇格させ、高い目標を目指す社員に報いる姿勢を明確にする。」

「パイロット・プロジェクトを意識・行動改革にも活用する。」

私の経験では、組織責任者であれば、情報部門内部のQCD管理に関する管理方法で何らかの斬新で効果的な手法を導入する、プロセス革新に関するクイックヒット的短期プロジェクトを立ち上げる、ということを一ヶ月終了時点からスタートすることを推奨します。この二つの取り組みは、赴任後三ヶ月目に打ち出す中期計画の骨格を意識しつつ、求められる人材の質的転換点を睨みながら、潜在能力を持った最適人材を大胆にリーダーとして抜擢します。実現に向けては自らが陣頭指揮を取り、強烈なパッションを放ちながら全員を鼓舞し、ひたすら勝利に向かって駆け抜けて行くのです。そこでの成功は、あなたにとっては絶対的に必要なものであり、失敗のリスクのあるテーマは絶対に選んではいけません。ここで失敗すれば、あなたは責任者としては不適格であることを内外に広く印象付ける結果となってしまいます。
またテーマリーダーに抜擢されたメンバーは、あなたのもうすぐ打ち出す改革プランを補佐する重要なメンバーですから、成功体験(勝負に勝つ感覚)を共に味わうことで深い絆を深め、そのメンバーの行動規範こそが、新たなリーダーであるあなたが求める行動規範であることを他のメンバーに強烈に知らしめる必要があります。その最も有効な手段が、彼らを間髪置かずに昇格させることです。場合によっては、それまでの既存の価値観で選ばれた昇格候補を差し置いて、飛び級的な昇格をさせることも効果的でしょう。
トレーニーや顧問で赴任したメンバーには責任者と異なり人事権はありませんし、特にトレーニーの場合は経験という面でもまだまだ不足しているかもしれませんが、「登場感」が必要であることには変わりありません。自分の日本での経験や担当領域に関連する部分で、現地メンバーの困りごとがないか、自分の経験領域以外のことであっても日本に持つ人的ネットワークを駆使して、現地の困り事と、日本の持つ豊富なソリューションとの間で縁結びができないか、バンドヒットでも振り逃げでも何でもいいいから、まず自分も塁に出るにはどうしたらよいかを考えてください。

緒戦をどう演出するか。マーケティングプロデューサーとしての才能が問われます。
それを実行に移すには、勇気が問われます。
成功には、あなたの全身から湧き出る飽くなき勝利への欲求が問われます。

絶対に勝ってください。

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