金融機関不祥事考察①

さて、第一弾の金融機関不祥事はこちら!!!


令和3年1月7日に公表された不祥事件です。

某県信用組合の男性副長が顧客から預かった本人確認書類を無断で利用。

普通預金新規口座開設及び消費者ローンやカードローンを繰り返し実行し、下記横領資金を搾取したことが昨年12月に発覚したとの事でした。


・事故見込金額(累計) 約 2億6,218万円(お客様数31先)

(うち被害見込額)   約 8,484万円(お客様数30先)

【搾取金の資金使途】

自己遊興費(ギャンブル、飲食費)

不正実行融資の返済金


という事でした。


【実行金額及び返済金額の考察】

該当金融機関の商品一覧を検索してみました。

極度額1,000万円のフリーローンがあるじゃないですか・・・

記載にはカードローンの実行もありました。

カードローンの中に毎月返済型と随時返済型のカードローンがありました。

自分なら毎月返済金負担を減らそうと思えば随時返済型を選択します。

31先との事で1人頭平均 約 8,400万円 で実行していたものと思われます。


カードローン 2件契約

属性によって50万円と50万円の契約か100万円と100万円の契約かになるともいます。

1人頭上記の金額との事で属性情報の良い顧客を選択したと思われますので

後者として考えます。


残り約640万円のフリーローン実行。

これで1人頭約840万円の実行が完成します。


返済金

毎月返済型カードローン 100万円 返済金 毎月   約2万円

随時返済型カードローン 100万円  年2回利息のみ 約10万円※1

消費者ローン      640万円 返済金 毎月 約10万8千円※2

1人頭毎月返済額 約12万8千円

   年2回   約10万円

年間支払総額 約163万6千円 となってきます。

※1 金利10%として

※2 金利10% 10年返済として


勿論平成23年から継続しての記載がありました。

その為完済している消費者ローンやカードローンもあると思われるので

その限りではないと思われますが単純計算でこのようになります。

単純に30先で毎月の返済金額を計算してみると約400万円

毎月実行しないと追いつかない。そんな背景が見て取れます。


また、被害見込額が8,400万円との記載であった為最初の方に実行していたものが遊興費でありどんどん返済金として実行していたものだと思われます。



【事務面】

融資実行にあたり基本的な融資の流れとして。

仮審査申込書をお客様に記入いただく

書類等を揃えて保証会社の審査を行う。

可決回答であれば本審査申込書記入いただく。(否決なら結果をお客様に報告し謝絶する)

店内の稟議書を記入し提出

稟議承認後契約書記入し実行に至る。


私はフリーローンの実行に関して急ぎの場合は

午前中に仮申し込みをもらい お昼前に至急扱いで仮審査

夕方に回答。回答後支店から連絡を貰う様に手配して

そのまま本申込書当日に記入。

稟議書を当日中に仕上げ翌朝支店長に審査いただく。

契約書を2日目に記入いただき早ければ2日目には実行。


そんな流れも可能でした。


基本的には3~5日あれば実行できます。


今回の不祥事に関して管理体制の甘さがみられる所は下記の項目と思われます。


1、普通預金を開設している

2、本人確認書類以外の書類の顧客からの徴求

3、在席確認等の一連の審査の流れ

4、融資の顧客返却書類について

5、高額な融資金額



1、無断で利用し普通預金を開設しているという事はまず普通預金の申込書に関しては代筆と思われます。それが、事故者本人の代筆なのか。他に協力者が支店内外もしくは家族に存在しそれらの代筆なのかが問われてくると思われます。

また、普通預金の開設を行い融資実行。実行金をATMで出金や振込をしている場合はキャッシュカードを発行しているものと思われます。

キャッシュカードは原則開設者の住所に送付するものと思いますが副長

との立場を利用し送付停止にしていたと想像できます。

2、融資審査の際金額が大きかった場合源泉徴収票や確定申告書等収入が確認できる書類を徴求する必要があります。

本人確認書類を無断で利用し無断で口座開設という事は元々何もする気が無かった所からの本件ですから、どのようにして源泉徴収票や確定申告書を手に入れたかの検討が付きません。

そこで、源泉徴収票等を偽造していた可能性も出てくるのです。

公文書偽造 犯罪ですね。

記憶に新しいかはどうか分かりませんが世間を賑わせたスルガ銀行事件。

これも源泉徴収書類や口座の残高を偽造したものでしたよね。

商工中金もありました。このような行為が横行していた可能性もあるという事です。


3、在席確認等については担当者の知り合いで営業訪問先と済ませていた。

  上記2で述べた源泉徴収があるから問題ない。との事で済ませていた可能性があり、管理体制の甘さが見て取れます。


4、融資実行後契約書の写し、申込書の写し、返済予定表はお客様に返却します。その返却書類を隠し処分していた可能性もあります。

また、実行後の毎月返済の通知等金融機関によっては発行される所もあると思われますが該当金融機関はどうだったのでしょうか?

家族に隠して借りたとの事で発行していない等の嘘をついていた可能性もあります。

そういった書類を送付しない様に出来る事が本件の発覚が遅れたものとも思われます。

5、該当金融機関は信用組合との事で融資金が○○万円以上なら組合員にならないといけないという規定がある可能性もあります。

組合員になった場合毎年会報も郵送されると思いますし配当金の計算表等も送付されます。このような書類についても送付をしない様にしていた可能性もあります。



【おわりに】

まず、最初の不正に関して約10年前 私が金融業界に入る少し前であり事故者29歳時となります。

多分39歳で副長という事は29歳で係長には上がっていると思われます。

係長になり、ノルマが与えられ消費者ローンのノルマに追われていた。

時代が時代ですのでイケイケどんどんで実行していた時代。

何としてでも数字を取らないといけないとの事で手を染めたんだろうな

と考えられます。

それをやっていく内返済金に回すようになり・・・・自転車操業の悪循環となっていたのだろうと思われます。



該当金融機関の管理体制の甘さが露呈し内部監査体制も甘くなぁなぁで終わっていたものであり今後の改善が求められ監督官庁からは業務改善命令が下るのではないかと推測します。


なお、事故者は昨年12月に発覚し翌日に死亡しているとの事ですが、ニュースに死亡事故のニュースが無かった為自殺で処理されていると思われます。


今回の被害額に関して該当金融機関が弁済し事故者死亡により刑事告訴しない方針との事で丸被りと見られ

令和2年度の当期純利益が約1億3千万円・・・・返済分もあると思われますが、事故累計金額の方が大幅に上回ります。。。。

これは、今期厳しい決算になりそうですね。



今後も金融機関不祥事について考察していこうと思います。


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