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年収1億円、投資家、50歳つづき

東カレデートで出会った「年収1億円、投資家、50歳」と、六本木の看板のない寿司屋で初めてのデート。2件目に誘われてBARに行く、その続きのお話。


すぐそこだからと連れて行かれたBARは、寿司屋から徒歩1分の半地下にあった。絶対私ひとりでは辿り着かない店。

狭く照明のない入口に、ベルベット調の赤い絨毯が敷かれ、歩くとふわっとする階段をピンヒールでおりる。彼がドアを開け、後ろから店内へ足を踏み入れる。店内は薄暗く、メタル調のブラックと、鏡やガラスに反射したシルバーのライトでぎついた感じを醸し出していた。カウンターの中にいるバーテンとおぼわしき男性の背後に、ウイスキーのボトルがライトに照らされずらりとこちらを向いている。
「Aさん、来てくれたんですね。先日はありがとございました」店内に負けないくらいのぎらぎらした脂汗が額に覗くオールバックの店員が、大袈裟に腰を低くめてAさんに挨拶をする。笑顔が嘘っぽくて怖かった。

細長いカウンター前を通り、奥のソファ席へと誘われる。お客は私たちの他に1組。なんて曲か忘れたけれど、クラシックか何かがかかっていた。

Aさんは響と山崎の数十年前のウイスキーをオーダーした。
「日本のウイスキーって高級になったの知ってた?」からはじまるウイスキーについてのうんちく。男の人のどや顔でのうんちくって嫌いじゃない。小学2年生が精いっぱい大人ぶって、ママに「みてみて」「きいてきいて」って言っているようで、かわいい。それでも、こんな美味しいお酒を、お金を気にせず飲める人生、やっぱり憧れる。

ーそろそろ終電だ。魔法の時間はあっという間。

Aさんは、最近西麻布にワインBARをオープンしたそうで、今からそこに向かうらしい。
「僕は西麻布までタクシー乗るから六本木駅で降ろすね」とのことで、
駅から徒歩10分もないだろう店からタクシーに乗るそうで、魔法はまだとけていないよう。

タクシーの車内で、Aさんはにこにことして私に言う。
「○○ちゃん、かわいいね。彼女にしちゃおうかな」

魔法の延長の呪文がかかった。カノジョニシチャオウカナ。そう。私に選択権はないようです。

「え、私でいいんですか?」

「やったぁ。僕の彼女ね。○○ちゃんは僕の彼女」

彼は浮かれて私の手を握る。50歳でも少年のような笑顔で私を見ている。

「また連絡するね」そうAさんは言った。

私はタクシーを降り、余韻に浸る暇もなく、地下鉄のエスカレーターを駆け降りる。キラキラとした六本木の明かりが遠のき、地下鉄の灰色に包まれた。お酒の匂いの充満した終電近くの地下鉄。みんなどこか服やメイクが乱れている。東京の魔法が少しずつとけていった。


ってな感じで、庶民の私が、東カレデートで出会った「アッパー層」とやらを覗いて来たお話でした。いやー田舎で子育て中の今から思い返すとすごいよね!ROPPONGIってだけでもうすごいよね。女子って、こうやって身分不相応な遊びができるのが、「女子の特権」だと思う。
しかし今思うと、なんでお金持ちになる方法をもっと聞かなかったのだ!と悔やまれる。

一応、Aさんとはその後も3回くらいデートして、美味しいお店に連れて行ってもらったけれど、本当に会話の接点がなくて困った。彼も一生懸命歩み寄ろうとしてくれていたけれど、溝は埋まらなかったなあ。

Aさんのことを、ネットで調べたことがって、「Aさんの会社は詐欺だ」的な記事を見つけた。投資会社をやっているから、お客さんの利益を出せなかったのだろう。一度倒産したみたいだけど、今は上々の様子。すごいよね。50歳まで未婚で、今はお母様と暮らしているそう。家の写真を見せてもらったけれど、家具が金ぴかだった。お金儲けも上手で、家族も大切にしているAさん。



決定的に残念だったことがある

「ホテルのポイントカードを出した」ことである。


やばくない?!

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