コミュニケーションで大事なことはIKKOさんに学んだ
画像はいつかにスタジオの前で見かけたNEKKO(ネッコー)さんです。
ぼくがサイデラ・マスタリングに入社したての頃のスタジオマネージャーは元々スタイリストをやっていたという女性でした。仮にAKKO(アッコー)さんとします。AKKOさんに教わった"美容家"IKKO(イッコー)さん流のコミュニケーション術は、いまでもぼくの中にリトルIKKOとして生きています。10年ほど前に伝聞した内容なので事実と異なる部分があるかもですがその時はごめんなさ〜〜い!!!☝️≡☝️
IKKOさんは美容学校を卒業したのち、美容室で住み込みアシスタントとしてキャリアをスタートしたそうです。美容室のアシスタントの仕事といえばシャンプーなのは今も昔も同じで。で、IKKOさんはある時から、シャンプーをするときのあの決まり文句を使わなくなったそうなのです。
「かゆいところありませんかー?」「お湯加減いかがですかー?」
そう言えば、この質問にまともに答えたことなどない。なんならぼくはいつも(ぼくのことは地蔵だと思って好きに洗っておくんなまし)と心の中でささやきながら、そんな楽でもない姿勢なので少し喉の締まった声で「大丈夫でふ」と答えるしかできないでいる。そうなんですよ、この質問にうまく答えるのは意外と心のハードルが高く、お互いほぼ「作業」になってしまっていることは少なくないと思うのです。
IKKOさんはそんなとき、「もう少し力入れた方が気持ち良いですか?」とか「お湯の温度少し上げますか?」とか、そういう伺い方をしたそうなのです。その人が気持ち良いと思うストライクゾーンに近づくために答えやすい選択を示す。そう聞いてもらえたらたしかにぼくも地蔵せずに済むのかもしれない。
マスタリング・エンジニア的には「かゆいところないですか」に相当するNGワードは「(この仕上がり)どうですか?」だと思うのです。ドヤ顔で聞くのは尚更で。ここの言葉選びによって(特に初めてセッションする)相手に言葉をしぼり出させないで引き出してあげることができます。「ボーカルは柔らかめに仕上げてますが、もっと固めに抜けてくる方が好みですか?」「低音しっかり持ち上げてますが、ベースの膨らみはもっとタイトな感じに戻しますか?」
もちろんこういうコミュニケーションの必要のない、阿吽の呼吸、つーかーの仲モードで進められるセッションもあります。ありますが、自分だけそういうモードに勝手に入っても嫌だし、基本的に音のコミュニケーションはそう簡単でないものだと考えているので、ぼくのスタンスとしては丁寧に言葉をIKKOしていきたいと考えている次第です。IKKOしていきたい(2回言った)。どんだけセッションを重ねても、相手がいかほどの音を求めているのかは、目には見えないまぼろしなのです。
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