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残された、テルモスの新品の中蓋。

夫との新婚当初、自分のことを「登山家」とは言わない、あくまでも、「登山やっている人」と。

そういう、奥ゆかしい人には、私は、どういう奥さんであればいいのか、考える暇もなく、ただ働いていた。

ねじ込み式の、水筒(テルモス)がいいという要望に応え、山道具やさんで、ねじ込み式のステンレス製のものを。胴体には持ちやすいように、紐を貼り付けて。それも、愛用していたが、コップとなる外蓋が山で、風に吹き飛ばされ、使い物にならなくなった。

ある日、軽いというチタン製のテルモスを見つける。

私だけに、蓋に少し傷があろうとすぐ買い求める。

夫は、しばらく使っていた。「蓋の傷が気になる」と言い出す。

で、時間をかけて、そのメーカーに問い合わせて、蓋を。スペア付きだから、2個送られてきた。無償であった。

蓋を取り替えて、ずっと、使い続けてくれた。

最後は、ワンプッシュで、蓋が開くものを密かに買っていたようだ。


2010年、9月雪崩で。

手元に残ったものは、未使用のチタン製のねじ込み蓋のスペア、新品。

最初のステンレス製の水筒は、今は、ポットがわり。中蓋は、プラスティックだから、経年劣化でゆるゆる。だが、コーヒーを飲む分には、温かい。


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