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「魚の目は泪」はよかった。(向田邦子)

 やはり、私には向田邦子さんの随筆の方が庶民的で、あっているようだ。

岸惠子自伝も、それなりに面白かったが・・。

「魚の目は泪」P39

 子供の頃、目刺が嫌いだった。
 魚が嫌い、鰯が嫌いというのではない。魚の目を藁で突き通すことが恐ろしかった。・・・・

P43
 猿の肉を食べたことがある。・・・
 尻込みする母や祖母を叱り付けるようにして、父はすき焼きの支度をさせた。曲々しいほど真赤な美しい肉だった。恐る恐る口に入れたら、牛肉や豚肉より甘味が強く、やわらかでおいしいような気がした。
 ところが、噛んでいるうちに、何か口の中に残る。小皿に出したら、黒い小豆粒ぐらいのバラ弾丸であった。
「猿に弾丸が当ると、赤い顔からスーと血の気が引いて、見る見る白い色になる。それでも、猿はしっかりと指で枝につかまっている。遂に耐え切れなくなってバタンと下に落ちてくる。それからゆっくりと目をつぶるんだそうだ。相当年季の入った猟師でも猿を撃つのは嫌なもなんだといっていたよ」
・・・

私の父の話
 猟に出て、猿にでくわす。すると、猿は拝むようにして、どうか助けてくださいと言っているかのような格好をしたという。その姿を見て、父たちは、見逃してやったとか。ふ〜ん、そういうことなんだ。


子供ができることになって、猟銃も、免許も返納したとか。
いや、もし猟銃を持っていたのならば、癇癪持ちで、酔った勢いに任せて、殺されていたかもしれない。

 でも、逆もありうるかもしれない。ここで、癇癪をおこしたら、警察のお世話になるかもしれないと、己自身を制することができたのかも。

P48
 私の友人で、魚の目(この場合、サカナと読まず、ウオと読んで戴きたい)の出来易い人物がいる。・・・

 魚の目は小刀で用心しいしい掘り出すと、ポロリと取れる。真珠にしては小汚い、それこそ小鯵の目玉位のものですよ、ということであった。
 行く春や鳥啼きウオの目は泪
この人にとって、俳聖芭蕉のもののあわれは、わが足許なのである。


うおの目は、コロナ中、自分もいくつもこさえた。その度に先生に聞いては、薬は?「スピール膏」がよく効くと教えられて、薬局で買い求める。というのは、うおの目のサイズがあって、貼り付けるシールがそれぞれ違ってくるのだ。
 芯まで取るのに、何日もかかる。そのために薬のついたシールを風呂上がりに剥がしては、白くなってきて、また貼り直し、それを何日も続けていたら、ある日、ポコっと芯が取れた時は、嬉しかった。

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